藤本宗将 13年12月29日放送
鬼が笑った話 土光敏夫
経営者としての手腕を買われて行政改革に取り組み、
「行革の鬼」と呼ばれた土光敏夫。
人並外れた行動力と猛烈なまでの働きぶりで、
日本の再建に奔走した。
そんな土光が、晩年に笑いながらこんなことを語ったという。
「もし、来世に天国と地獄があるとすれば、
僕はためらいなく地獄行きを望むね。
極楽はたしかに楽しいだろうが、
そんなラクなところでのんびりするのは性に合わない。
やっぱり地獄の、それも地獄の釜焚きでもして、
その釜の底から日本の動きを監視していく――
あの世に行っても、多分、そんなところでしょう」
彼の目に、いまの日本はどんなふうに映っているのだろう。
鬼に笑われないような、来年にしなければ。
蛭田瑞穂 13年12月28日放送
ITHACA WONG
2013年今年の顔 シェリル・サンドバーグ
「フェイスブック」の最高執行責任者、
シェリル・サンドバーグには2つの顔がある。
ひとつは経営者としての顔。
グーグルとフェイスブックという2つのベンチャー企業で、
経営の腕をふるい、ともに世界的なIT企業へと成長させた。
もうひとつは女性としての顔。
2児の母でもあるシェリルは今年3月、
初の著書「LEAN IN」を出版した。
著書の中でシェリル・サンドバーグは
すべての女性に向かってこうメッセージする。
女性は勇気を持って一歩踏み出してください。
真の男女平等のために。
蛭田瑞穂 13年12月28日放送
TED Conference
2013年今年の顔 ジャレド・ダイアモンド
ジャレド・ダイアモンドの肩書きは
カルフォルニア大学ロサンゼルス校教授。
だが、世界的ベストセラー『銃・病原菌・鉄』の著者
といった方が通りがよいかもしれない
50年前に訪れたニューギニアで
人類の発展に関心を抱いたジャレド・ダイアモンドは、
以来、人類と文明の謎を探求しつづける。
今年、日本でも出版された『昨日までの世界』では、
戦争、子育て、高齢化など、現代のあらゆる問題について、
過去の伝統的社会に学ぶことで解決策を探った。
ジャレド・ダイアモンドの現在の関心は「選択的変革」。
危機に陥った時、何を残し、何を捨てるか。
それが、現代社会が抱える問題を解決する鍵になると言う。
蛭田瑞穂 13年12月28日放送
touchedmuch
2013年今年の顔 ベネディクト・カンバーバッチ
今、最も勢いのある俳優ベネディクト・カンバーバッチ。
1976年ロンドン生まれ。
両親はともに俳優という芸能一家に育った。
舞台を中心に活動していた彼がブレイクしたのは、
BBCが2010年に製作したドラマ「シャーロック」に出演し、
主人公シャーロック・ホームズを演じてから。
今年、イギリスの芸能サイトで
「世界で最もセクシーな俳優」の1位に選ばれたベネディクト。
しかし、彼はその人気に浮き足立つことはない。
謙遜ではなく自分ではそう思いません。
37年間鏡をみつめながら、まぁこんなもんだろうと
と思いながら僕は生きてきましたから。
蛭田瑞穂 13年12月28日放送
Lucie_Ottobruc
2013年今年の顔 マリオン・コティヤール
今年6月、映画のプロモーションのため来日した
フランス人女優マリオン・コティヤール。
彼女の名を世界的に知らしめたのが、
2007年に公開された『エディット・ピアフ~愛の讃歌~』。
この映画でフランスの国民的歌手の生涯を演じ、
アカデミー賞主演女優賞を獲得した。
オスカー受賞後も「俳優として満足する到達点はない」
と語り、撮影現場で監督のOKが出ても
自分が満足するまで何度も演技を重ねる。
演技力に加えて、その美貌も彼女の魅力。
彼女にとって美しさとは何か。
自分が生きている環境の中で
自分らしく生きる勇気を持っている人。
それが私の思う美しい人です。
マリオン・コティヤールは凛と語る。
三島邦彦 13年12月22日放送
クリスマスに人々は 戦国のメリークリスマス
日本で初めてクリスマスが祝われたのは、室町時代の1552年。
それから14年後の1566年の日本で、クリスマスに小さな奇跡が起こった。
時は戦国。
近畿地方の覇権をめぐって
松永氏と三好氏が戦をしていた時のこと。
両軍の武士には、当時流行していたキリスト教の信者が多かった。
クリスマスイブ。
それぞれの軍のキリスト教徒たちの熱心な申し入れにより、
特別に一日限りの休戦が決まった。
彼らはこう語ったという。
自分たちは敵味方になっているが、デウスをあがめる心は同じである。
休戦を決めた彼らはともにクリスマスを祝おうと、
大急ぎで町の会合所の大広間を飾り付けた。
夜には司祭を迎えてクリスマスのミサを執り行い、
翌日の昼には各自が料理を持参して
キリストや神について語り合い、ともに聖歌を歌った。
そしてクリスマスの日が暮れるとともに
彼らは再び敵味方に分かれ、戦場へと戻って行った。
今から450年ほど前、まだキリスト教が禁止される前の日本で起きた、
戦国のメリークリスマス。
三島邦彦 13年12月22日放送
クリスマスに人々は トーマス・マン
『ヴェニスに死す』や『魔の山』で知られる
ノーベル賞作家、トーマス・マン。
ナチスドイツからの亡命で、
ドイツの家に残した日記や手紙、資料や家財道具をすべて失ったが、
彼の才能、家族、そしてクリスマスは奪われることはなかった。
1936年12月24日の日記、
家族と過ごしたクリスマスイブについて記したその中に、
トーマス・マンはこう書いてある。
私の人生と作品を仕上げるのに必要なものは、何ひとつ欠けていないのだ。
三島邦彦 13年12月22日放送
HAMACHI!
クリスマスに人々は 林真里子
クリスマスイブの夜、
作家の林真里子の家に、多くの女性たちが集うという。
一人一皿料理を持ち寄り、
酔いが回ればみんなで「きよしこの夜」を歌う。
異性と過ごすばかりがクリスマスではない。
若い時には考えもつかなかった、
大人の女性のクリスマス。
恋愛という束縛からの解放を、林真里子はこう語る。
自分で稼いで、一本のワインを気がねなく買うことが出来る。
そして気に入った仕事と気に入った女友だちを何人か持っていれば、
年をとっていくことも捨てたもんではない。
我ながら意外なほど、充実した日が待っている。
中村直史 13年12月22日放送
E01
クリスマスに人々は サンタ・クロース
クリスマスが、
ロマンチックでステキなものだとすれば、
それは、だれかが
クリスマスの裏方としてがんばっているからだ。
道端に立ってケーキを売る人。
街にイルミネーションの飾り付けをする人。
レストランでおいしいディナーをつくる人。
きわめつけは、あの人だ。
雪が舞い、北風吹きつける冬の夜空を
何十時間も飛びつづけ、
一軒一軒煙突から降りるという、
過酷極まりない仕事をするあの人。
しかも、毎年遅刻することなく、きっちり仕事をやりとげる。
サンタ・クロースさん。
あなたにこそ
メリークリスマス。
中村直史 13年12月22日放送
iyoupapa
クリスマスに人々は レイモンド・ブリッグス
サンタさんは
ニコニコしながら
プレゼントを配っている。
というのは偏見かもしれない。
絵本作家 レイモンド・ブリッグスが描いたのは
寒がりで
めんどくさがりで
かんしゃく持ちのサンタ・クロース。
12月24日の日、ベッドから憂鬱そうに起き上がった彼はつぶやく。
やれやれ、またクリスマスか!
悪態をつきながらも
仕事だからしょうがないと
世界中をかけめぐり、煙突の中でまっくろになり、プレゼントを配り
ヘトヘトになって自宅にたどりつく。
そして、ひとり傾けるワインにようやく少しだけ笑顔になる。
なんだか、私たちみたいじゃないか。