大友美有紀 13年11月3日放送
「文具の日」岡本光司
11月3日、文化の日。
今日は文具の日でもある。
昭和62年、東京都文具事務用品商業組合が
中心となって製造、配送、販売の3団体が
協議して制定した。
文具は、文化と歴史の伝承を担っている。
その周知を任されたのは岡本光司。
上野の岡本紙文具店の、現在の会長だ。
明治5年創業。寺社に紙、筆、墨、硯を納めてきた。
伝承の現場を知りつくした人物だ。
大友美有紀 13年11月3日放送
diversita
「文具の日」モレスキン
11月3日は文化の日であり、
文具の日でもある。
世界的に有名なノート、モレスキン。
その原型は、フランスの小さな製本業者が作ったもの。
ピカソ、ゴッホ、ヘミングウェイ、
世界中の芸術家がパリを訪れ購入した。
でも、家族経営のその製本業者は倒産してしまった。
丸い角を持つ黒のシンプルな長方形、ノートを束ねるゴムバンド、
そして内側のマチ付きポケット。
伝統を継承し甦らせたのは、イタリアの出版社。
ブランドを旗揚げしたのはマリア・セレゴンディ。
ブランドには「物語」があることが重要です
そして、持っている「モノ」が、その人の個性を規定し、
情緒的な面を詰め込む存在になる。
モレスキンに、自分の物語を表現する。個性を詰め込む。
使う人それぞれの芸術が開花する文房具だ。
大友美有紀 13年11月3日放送
「文具の日」黒田善太郎
11月3日は文具の日でもある。
日本の大手文具メーカー、コクヨの創業者・黒田善太郎は、
明治38年、大阪に和式帳簿の表紙店を開業した。
帳簿の表紙の製造だけを問屋から請け負う仕事。
商人の顔ともいえる表紙だが、
価格は帳簿全体の5%でしかなかった。
人の役に立つことをしていれば、必ず受け入れられる。
黒田はその信念で仕事に打ち込んだ。
「黒田の表紙でなければダメだ」と
言われるまでになった。
そして、和式帳簿そのものの製造を始める。
その時にこだわったのが「正百枚(しょうひゃくまい)」。
中味の枚数が、正確に100枚であることだった。
なんと、当時は百枚綴りとしながら、
表紙・台紙を入れて百枚とする業者もあったのだ。
割高になる、けれどお客様のため正百枚を押し通した。
今でもコクヨの便せんには「正百枚」の表示がある。
大友美有紀 13年11月3日放送
Lukas Vermeer
「文具の日」モンブラン
11月3日、文化の日、文具の日でもある。
ハイクラスのゴールド万年筆を創る。
これは、モンブラン創業当時のキャッチフレーズ。
もともとの会社の名は、シンプルという言葉に由来した
「シンプロフィラーペン カンパニー」。
ペンとインク容器を一体化した
ニューデザインの筆記具であることを強調したのだ。
モンブランの名がついたのは、
経営者の親戚がカードゲームをしていた時に、
ペンの形がモンブラン峰と似ていると指摘したから。
最初から最高峰だったわけではない。
でも、結果として筆記具の最高峰となった。
大友美有紀 13年11月3日放送
marellinux
「文具の日」ファーバーカステル
11月3日、文具の日。
世界で初めて鉛筆を製造したのは、
ドイツのファーバーカステル社。
世界最古の製造業とも言われている。
8代にわたるファミリーカンパニーだ。
親指、人差し指、中指、3本の指の倍数だから
六角型がもっとも指にフィットしやすい、と考えたのは
4代目のローター・ファーバー。
鉛筆にA.W.FABERの刻印を入れたのもローバー。
世界初のブランド鉛筆を誕生させた。
6代目のアレクサンダー・ファーバーカステル伯爵は軍人でもあった。
それをイメージさせるため、ブランドカラーを深緑色に、
トレードマークは馬上で闘う騎士となった。
騎士が手にしているのは剣ではなく、鉛筆だ。
どんなライバル社にも打ち勝つ、価値の高い1本。
その思いが込められている。
その思いの通りに
ギュンター・グラス、ウラジミール・ナボコフ、
カール・ラガーフェルドも
ファーバーカステルの鉛筆を愛していた。
大友美有紀 13年11月3日放送
「文具の日」ALLEX
11月3日、文化の日で文具の日。
「ALLEX」という事務用ハサミがある。
イタリアのブランドのようだが、違う。
日本の代表的な刃物産地、岐阜県で昭和21年に創業した
林刃物のブランドである。
高度成長期、事務用ハサミは
鋳物、型に金属を流し込んでつくられた
安価なものが主流だった。
林刃物は、品質の保証ができて、
適切な価格で提供できるものをつくりたいと考えていた。
中小企業のチャレンジが生んだブランドだ。
ALLEX(エーエルエルイーエックス)。
ALL EXPAND(オールエクスパンド)
すべてにおいて発展していく、の意味を込めた造語だ。
大友美有紀 13年11月3日放送
malkovitch
「文具の日」ホッチキス
11月3日、文具の日。
英語圏でホッチキス、と言っても通じない。
ステープラー、と言わねばならない。
それは、なぜか。
明治36年、日本で最初に販売されたアメリカ製の製品の
ボディに大きく「ホッチキスNo.1」と刻印されていたからだ。
それは E.H.ホッチキス社製だった。
機関銃の発明者である
ベンジャミン・B・ホッチキスが
発明したという説がある。
マシンガンの弾送り機構にヒントを得て
針送り装置が考案されたという。
人名がモノの名前になる。
発明者の特権でもあるようだ。
大友美有紀 13年11月3日放送
bluiewe
「文具の日」フリクション
11月3日は文化の日で、文具の日。
世界で4億本売れているボールペンがある。
消せるボールペン、フリクションボールだ。
この商品化には、実に30年以上かかっている。
開発のきっかけはある研究者が、
外回りをしていた時だった。
紅葉は一晩で、緑から真っ赤に染まる。
その劇的な自然の色の変化をビーカーの中で
再現してみたい。
その思いが実現した「温度変化によって色が変わるインキ」は、
1975年には基本技術が完成していた。
当初は文房具には向かないと言われ、
玩具やグラスなどの雑貨に使われていた。
開発担当の千賀邦行には夢があった。
私たちの本業は筆記具メーカー。
いつか必ず「消せる筆記具」を開発する。
本業で成功したいと思っていました。
千賀の研究室は不夜城と言われていた。
そして2005年、消せるボールペンが誕生したのだ。
佐藤延夫 13年11月2日放送
節目のとき 前田智徳
広島カープの背番号1。
前田智徳が、今シーズンでユニフォームを脱いだ。
その昔、イチローは言った。
「本当の天才は、前田さんです」
天才という安易な言葉に異論を唱える者もいる。
そのくらいバットを振り、練習に打ち込んだ。
しかし前田の敵は、いつも怪我だった。
引退セレモニーのとき、彼はマイクの前で
大きく息を吐いた。
これで、やっと怪我から解放される。
そんな吐息のようにも見えた。
佐藤延夫 13年11月2日放送
EO Kenny
節目のとき 桧山進次郎
代打の神様、という言葉がある。
ひとりの神様が引退すると、
その役割は、次の選手に託される。
まるで名選手の持ち回りのように。
阪神タイガースの背番号24。
桧山進次郎は、代打の神様という役回りを終え
今シーズンでバットを置いた。
引退セレモニーでは、こんな言葉を残した。
「本当に僕は幸せものでした」
代打の神様は、ファンも自分も、幸せにできる。