佐藤延夫 20年2月1日放送
snowflake
雪の結晶 成り立ち
冬。
空から舞い降りる小さな芸術品があります。
それは、雪の結晶。
花のような形をしたもの。
六角形の星形。扇型。
雪の結晶は、凍った雨粒からできるのではありません。
水蒸気が大気中で昇華凝結。
つまり、液体を経ることなく
一気に凍って固体になると、
あのような芸術的な姿になるのです。
週末。雪の結晶を探しに行きませんか。
佐藤延夫 20年2月1日放送
雪の結晶 成り立ち
雪の結晶は、
一般的に、1ミリから2ミリ。
肉眼でもなんとか確認できる大きさです。
17世紀、
フランス人の数学者デカルトは、
観察記録をまとめていました。
「6つの花弁を持つバラ」
「車輪の雪」
「半円の歯」
「放射状の線のある二重の星」
彼が描写した言葉にも、ロマンを感じます。
雪の結晶を探しに行きませんか。
佐藤延夫 20年2月1日放送
雪の結晶 観察
雪の結晶は、氷の芸術。
天気が雪になると、
何億、何兆もの結晶が舞い降りますが、
ひとつとして同じ形のものはありません。
早いときは、ほんの数秒で形が崩れ
溶け出してしまうので、
じっくり観察することも大変です。
でもそれが、結晶ウォッチングの醍醐味。
黒いコートを羽織って、
ポケットには虫眼鏡を入れて、
雪の彫刻を観察しに出かけませんか。
佐藤延夫 20年2月1日放送
雪の結晶 観察
17世紀。
イギリスの科学者ロバート・フックは、
顕微鏡で観察した雪の結晶をスケッチしました。
雪の結晶を、美しい切り絵にして残したのは、
フランシス・チッカリングです。
牧師の妻だった彼女は、
虫眼鏡と鋭い観察眼で、
雪の結晶だけを一冊の本にまとめています。
19世紀。
初めて雪の結晶を写真で残したのは、
ウィルソン・ベントレーです。
顕微鏡にカメラを取り付け、
46年間で5000枚以上の結晶を撮影。
その生涯をかけて残した作品は、
世界中に、雪の結晶の美しさを教えてくれました。
雪がつくる儚い芸術作品は、
人の心にも、優しく降り積もる。
佐藤延夫 20年2月1日放送
Zorac&Visar
雪の結晶 温度
樹氷は、
氷点下5度を下回るとき、
冷えた水蒸気や水滴が、
樹々に吹き付けられて凍結した状態のこと。
ダイヤモンドダストは、
空気中の水蒸気が凍り、霧のように舞う現象。
氷点下10度以下のときに発生します。
雪の結晶は、0度を下回ると
細長い棒の形に。
マイナス15度くらいになると、
美しい樹枝や扇型の結晶ができてくるそうです。
冬の芸術を探しに行きませんか。
熊埜御堂由香 20年1月26日放送
白のはなし 白衣の天使
白衣の天使と呼ばれたナイチンゲール。
当時、看護師の仕事は、病人の召使いで、
専門知識の必要がない女性の職業と捉えられていた。
裕福な家庭に生まれた彼女は、
両親の反対を押し切り、看護師の仕事に従事し、
1854年のクリミア戦争で活躍した。
その後、様々な医療現場の改革を提言し、看護学校を設立。
この職業の地位向上のために90歳まで力を尽くした。
ナイチンゲールが残した言葉がある。
女性よ、自立しなさい。
自分の足で立ちなさい。
白衣の天使は、潔白な強さで
たくさんの女性たちの背中に
勇気の羽を与えたのだ。
小野麻利江 20年1月26日放送
白のはなし 白いウサギにまつわる逸話
真っ白なウサギが出てくる夢が、
見た人に幸運をもたらす吉夢とされているように。
古今東西、「白い」ウサギが出てくる逸話は、
善きことの象徴であることが多い。
中世ヨーロッパの宗教画の中で
聖母マリアの足元に、ウサギが白い姿で描かれている場合、
ウサギが象徴する「色欲」に、
マリアの「純潔」が打ち勝つことを示している。
ブッダの教えに近いとされる「原始仏典」の中にも、
白ウサギとして生を受けたかつてのブッダが、
弱った聖者のために、みずから火の中に飛び込み
白ウサギの肉を食べさせた、という教えがある。
我が国で真っ先に思い浮かぶのは、「因幡の白兎」。
サメに体の皮を剥かれ、
真っ赤になって泣いているウサギに
真っ白な毛皮が戻る方法を教えた大国主命は、
美しい八上比売(やかみひめ)の心を射止めることができた。
新しい1年がはじまって、もうすぐ1ヶ月。
真っ白なウサギに出会った時のような素敵な予感に、
今年、あなたも出会えるといいですね。
茂木彩海 20年1月26日放送
白のはなし 純白の由来
「白」にも乳白色やオフホワイトなど様々な言葉があるが
「純白」というと、単に色を説明するだけではなく
「混じり気のない清らかなイメージ」を
伝える言葉としても使われている。
この「純白」という言葉の出典は、
意外にも古代中国の文献『荘子』まで遡る。
とある老人が井戸から水を汲み、畑にまいていたところに
たまたま通りがかった若者。
機械があればはかどりますよ、と声をかけると、老人はこう答えた。
仕掛けを使うものは必ずからくり事をする。
からくり事をする者は必ず何かをたくらむ。
たくらみが心の中にあると、純白な本来の心がなくなる。
純白な心がなければ、精神が安定しなくなる。
「純白」とは本来、「白色」を示す言葉ではなく、
「清らかな心」そのものを指す言葉として使われていた。
年が明けて、1月も下旬。
荘子の教えに従って、自分の中の純白を大切に、この1年を過ごしたい。
熊埜御堂由香 20年1月26日放送
PazGomez
白のはなし ポルボロン
スペインのアンダルシア地方の修道院で、
7世紀ごろ生まれた伝統菓子、ポルボロン。
口に入れた途端、粉雪のようにホロリととける食感から
塵や埃を意味する、Polvo (ポルボ)
という言葉から名付けられた。
小麦粉にたっぷりバターを混ぜ込んだクッキーで、
表面を白い粉雪のようなお砂糖が包み込む。
食べ終わるまでに「ポルボロン、ポルボロン、ポルボロン」
と3回唱えることができたら幸せになれると言われている。
白くてコロンとしたお菓子は、
数えきれない人々を幸せな気持ちにして、
今も世界中で愛され続けている。
若杉 茜 20年1月26日放送
白のはなし 白い雪
江戸中期に活躍した画家、伊藤若冲。
その展覧会に多くの人が押し寄せたことは記憶に新しい。
彼は、白い雪を愛した画家だった。
日本画で一般的に使われる、貝殻から作った1種の白の塗料のみを使い、
考えられないほどの様々な雪を表現した。
椿の上に厚く積もるこんもりとした雪、
葉の上の少し溶けかかった雪、
ひさしの影になった、少し硬く鈍い色の雪。
それらを、塗料の塗り重ねや、濃さ、
そしてある時には裏から塗り足すことにより繊細に表すのだ。
年が明け、寒さも深まる今日この頃。
雪景色に出会えた時は、若冲の繊細な雪に想いを馳せたい。