佐藤理人 13年6月9日放送
Paul McAlpine
ロックの日①「イギー」
パンクのゴッドファーザー
ことイギー・ポップは、
パンクのイメージとは程遠い男だ。
高校時代は優等生で大学にも進学。
音楽を始めるにあたっては、
どうすれば他のバンドと差別化できるか
を徹底的に研究した。
ロックンローラーである前に、
彼は優秀なマーケッターだった。
彼が結成したバンドは
Stooges(愚か者たち)
という。
本当に賢い者だけが、
愚か者のフリをできる。
今日は6月9日、ロックの日。
佐藤理人 13年6月9日放送
ロックの日②「レノン」
僕らはキリストより人気がある。
ジョン・レノンのこの発言は大いに物議を醸した。
レコードは焼かれ、ラジオ局は
ビートルズの曲をかけるのをやめた。
コンサートでは演奏中に爆竹が鳴らされ、
何度も「殺す」と脅された。
この発言には、実は続きがある。
ロックンロールとキリスト教と
どちらが先に廃れるかはわからない。
キリストの弟子たちが
キリスト教を墜落させてしまった。
彼が本当に言いたかったのは、
それが残るかは、始めた人より、
受け継いだ人にかかっているということ。
ビートルズが解散してから約40年。
彼らの弟子は今日も世界中で
ロックンロールを布教し続けている。
今日は6月9日、ロックの日。
佐藤理人 13年6月9日放送
ロックの日③「スプリングスティーン」
アルバムの発売を延ばすべきか否か。
ブルース・スプリングスティーンは迷っていた。
いよいよ彼の時代が来る。
そんな声も聞こえる中で発表する3枚目は勝負の一枚。
失敗は許されない。
曲はすべてできている。
しかし頭の中で鳴っている音にどうしてもならない。
なんといっても目標はビートルズの「Let it be」なのだ。
半端なことで妥協するわけにはいかなかった。
高まる周囲の期待と自らの完璧主義の間で
スプリングスティーンは揺れた。
そして遂に覚悟を決める。
発売日は一時だが、レコードは永遠だ。
発売日どころかツアーまで延期し、
自分の欲しい音を徹底的に追求する、
この姿勢こそ正にロック。
完成したアルバム「Born to run」は
「ローリング・ストーン誌が選ぶベストアルバム500」
において18位を記録する。
自らの予言通り、彼は見事永遠を手に入れた。
今日は6月9日、ロックの日。
佐藤理人 13年6月9日放送
ロックの日④「キース」
ロックンロールは
上等のワインみたいなもんさ
年を食うほど味が良くなっていくんだ
ローリング・ストーンズのギタリスト、
キース・リチャーズは言った。
スキャンダラスな言動が
話題になることも多い彼ら。
しかしその根底にあるのは、
デビューから半世紀以上経つ今でも、
ラベルより中身で勝負し続ける自信と勇気。
彼らのロックは、
これからもっと美味しくなるだろう。
今日は6月9日、ロックの日。
佐藤理人 13年6月9日放送
Il Fatto Quotidiano
ロックの日⑤「タウンゼント」
ギターをステージに叩きつけて破壊する。
ロックコンサートでよく見る
あのパフォーマンスはこの男の発明だ。
The Whoのピート・タウンゼント。
彼が最初にギターを壊したきっかけ。
それは思い通りの音が出せずにムカついて、
ステージの床に叩きつけたこと。
彼にとって破壊は、
音楽と自分の間にある溝を埋める行為
だった。
しかし彼が壊すのはギターだけではなかった。
ドラム、アンプ、衣装、その他ステージ上のありとあらゆる物、
さらにホテルの部屋にまで及んだ。そのためツアーを終えると、
収支がマイナスになることも珍しくなかった。
彼曰く、
何で酔っぱらうとホテルの部屋をぶっ壊しちまうのか
自分でもわからないけど、正直言って、
悪いことをしたとはこれっぽっちも思わない。
さすが「ギター破壊数」のギネス記録を持つ男は言うことが違う。
今日は6月9日、ロックの日。
佐藤理人 13年6月9日放送
ロックの日⑥「ヘンドリックス」
60年代末、
アメリカで生きる黒人に神は不在だった。
ベトナム戦争や人種差別に、
宗教は何もしてくれなかった。
少なくとも、
ジミ・ヘンドリックスにはそう見えた。
俺にとっては音楽が宗教なんだ。
来世でも音楽が待っててくれるさ。
彼は自らの音楽を
エレクトリックチャーチ
と呼び、内なる神を探した。
27歳の若さでこの世を去ったジミ。
彼はいまギターの神様として、
多くのギタリストに
ロックンロールを伝道し続けている。
今日は6月9日、ロックの日。
佐藤理人 13年6月9日放送
nikoretro
ロックの日⑦「フレディ」
僕が死んでも
誰が気にする?
インタビューでそう語った10日後、
フレディ・マーキュリーはエイズを公表。
その翌日、この世を去った。
世界に先駆けて人気に火がついたここ日本で、
度々クイーンブームが起きていることを知ったら、
天国の彼は喜んでくれるだろうか。
今日は6月9日、ロックの日。
佐藤理人 13年6月9日放送
ロックの日⑧「ライドン」
破れた服に安全ピンをつけ
髪の毛を逆立てても
パンクになれるわけじゃない。
パンクバンドの代名詞、
セックスピストルズのジョン・ライドン。
英国王室から大物ロックバンドまで、
あらゆる権威に彼は唾を吐き散らした。
神(God)なんて逆から綴れば
ただの犬(Dog)じゃねえか。
神でさえその攻撃の手を
逃れることはできなかった。
しかし空に向かって唾を吐けば、
その唾は自分に降り注ぐ。
ライドンはイギリス中の保守派を敵にまわした。
暴漢に左手を刺されギターが弾けなくなり、
やがてイギリスに住むことさえできなくなった。
人生を賭けた反骨精神。
それこそがパンクスピリット。
今日は6月9日、ロックの日。
蛭田瑞穂 13年6月8日放送
フランク・ロイド・ライト①
サイモン&ガーファンクルの作品に
“So Long, Frank Lloyd Wright”
「フランク・ロイド・ライトに捧げる歌」という曲がある。
ライトの死から10年後の1969年にリリースされた。
ふたりは歌う。
多くの建築家があらわれては消えていったけど
あなたは自分の信念を貫いた
僕は曲づくりに行き詰まったとき
立ち止まってあなたのことを思い出してみるんだ
ポップ・ミュージックにも歌われた建築家のアイコン、
フランク・ロイド・ライト。
ライトは今から146年前の今日、6月8日に生まれた。
蛭田瑞穂 13年6月8日放送
フランク・ロイド・ライト②
20代でデビューし、天才建築家として
脚光を浴びながらも、
私生活での度重なるスキャンダルにより
名声が地に落ちた晩年のフランク・ロイド・ライト。
ところが1937年、70歳のライトは
建築界を驚かす作品を発表する。
エドガー・カウフマン邸、
通称「落水荘」と呼ばれる住宅である。
渓流と建物が一体となり、
周囲の環境と見事に調和する「落水荘」は
ライトが提唱する“有機的な建築”を具現化していた。
20世紀最高の住宅とも讃えられるこの作品によって
フランク・ロイド・ライトは70歳にして
建築界のチャンピオンに返り咲いた。