蛭田瑞穂 13年6月8日放送
©Jeff Dean
フランク・ロイド・ライト③
1936年、フランク・ロイド・ライトが69歳で設計した
ジョンソン・ワックス本社ビル。
最大の特徴が「グレート・ワークルーム」
と呼ばれるオフィス空間。
床から伸びた柱が天井で蓮の葉のように開き、
建物を支えている。
この柱が林立する様はオフィスというより、
宗教建築のような雰囲気さえ漂わせる。
ライトは語る。
働く人々の人生をより意義深くする
建物をつくることで、
社会の様相を変えることも可能なのです。
蛭田瑞穂 13年6月8日放送
Figuura
フランク・ロイド・ライト④
建築家フランク・ロイド・ライトの代表作、
ニューヨーク・グッゲンハイム美術館。
この美術館はライトが76歳で設計した。
最大の特徴は「かたつむりの殻」
と形容される螺旋状の構造。
見学者はまずエレベーターで最上階に上がり、
そこから螺旋状の通路に展示された作品を
鑑賞しながら階下へ降りていく。
現在ではニューヨークの観光名所にもなっている
グッゲンハイム美術館だが、
ライト自身は完成された建物を見ていない。
斬新すぎる設計ゆえに、
建設前から論争を巻き起こし、
着工されたのは設計から16年後の1959年。
ライトの死から半年後のことだった。
蛭田瑞穂 13年6月8日放送
James Steakley
フランク・ロイド・ライト⑤
1937年、70歳のフランク・ロイド・ライトは
「ユーソニアン住宅」というコンセプトを提唱した。
ユーソニアン住宅とは、
安価で良質な住宅を大量に建造するために、
プレファブ工法などを取り入れた工業住宅。
ユーソニアン住宅の第一号がウィスコンシン州に
現存するジェイコブズ邸。
その建物には、住宅の工業化と建造物としての美、
ふたつの相反する要素が見事に同居している。
蛭田瑞穂 13年6月8日放送
randylane
フランク・ロイド・ライト⑥
1956年、89歳のフランク・ロイド・ライトは
ハロルド・プライスという実業家に依頼され、
地上19階、高さ57メートルのオフィスビルを設計した。
「プライス・タワー」と呼ばれるこのビルは
ライトが人生で初めて設計した高層ビル。
89歳でなお人生初に挑戦するフランク・ロイド・ライト。
その姿勢に敬服せずにはいられない。
蛭田瑞穂 13年6月8日放送
tfitch
フランク・ロイド・ライト⑦
1957年、フランク・ロイド・ライトが90歳で設計した
カリフォルニア州マリン郡の合同庁舎。
円形のドームを中心に、
2つのウイングが南北に伸びる建物は
上空から見ると巨大なブーメランのようにも見える。
この不思議な形は、起伏のある土地を地ならしせず、
自然のままの地形を活かすことで生まれた。
生涯に渡って、建築と自然との調和を唱えた
フランク・ロイド・ライト。
彼の遺作になったマリン郡庁舎にも、
その精神はたしかに体現されている。
大友美有紀 13年6月2日放送
「ターシャ・テューダー」自給自足の暮らし
絵本作家、挿絵画家、ターシャ・テューダー。
アメリカ・バーモント州の山奥、広大な森で
自給自足の静かで優雅な暮らしを送っていた。
ペットに囲まれ、家畜の世話をし、野菜を育て、
ハーブを摘み、美しい花の香りを楽しみ、冬には薪を割る。
これが、わたしの夢だったんですもの。
大変な仕事に見えるかもしれないけれど、
私には喜びよ。
世界中の憧れだったその生き方。
2008年、6月、帰らぬ人となった。
大友美有紀 13年6月2日放送
「ターシャ・テューダー」初めての絵本
ターシャ・テューダーは、幼い頃、
母からもらった絵本を見て、
挿絵画家になろうと決めた。
美術学校で絵を学んだが、
誰も彼女を励ましたり、
褒めたりしてくれなかった。
自分の才能に自信が持てなかった。
それでも描き続けた。
そして、23歳のとき、初めての絵本が出版される。
美術は教わってできるようなものではないわ。
自分でたくさん描いて、自分の目でたくさん見ることよ。
その絵本「パンプキン・ムーンシャイン」は、
数々の出版社に断られた作品だった。
けれども、70年近く経った今でも出版され、
愛されている。
大友美有紀 13年6月2日放送
plearbear
「ターシャ・テューダー」アンティーク
絵本作家ターシャ・テューダーは、
アンティークのドレスを身に着け、
食器など、100年以上も前のものを、
ふだんの暮らしで使っていた。
アンティークの品々は、眺めたり、使ったりするとき、
謎に満ちた神秘的な過去との、
精神的・身体的なつながりを感じることができるという。
日本は、アメリカに比べて、
多くの伝統や習慣を持つ国だと思います。
たとえ、アンティークの日常品や
ドレスを持っていなくても、
そうした伝統そのものが、
暮らしの中で実際に使われる、
アンティークのひとつの形なのです。
それは、つかの間、時間を遡って旅をするようなもの。
過去を思う気持ち、それが、今を生きる力になる。
大友美有紀 13年6月2日放送
「ターシャ・テューダー」暮らしに喜びを
絵本作家ターシャは動物にも、植物にも、
料理にも、毎日手間と時間をかける。
できることならば、どんなことでも、
料理づくりでも、庭づくりでも、
心からの喜びと熱意を持って行うことが
大切だと思います。
たとえ、仕事や義務がひどく退屈で
つまらないときがあるとしても、です。
暮らしに喜びを見いだそうとすれば、
きっと暮らしはより良いものになる。
大友美有紀 13年6月2日放送
kai smart
「ターシャ・テューダー」今のこの世の中での幸福
絵本作家ターシャ・テューダーは自給自足の暮らしを送っていたが、
「求めるもの」が全くない極端な人生を歩んだわけではない。
美しいアンティーク、ドレス、本、植物、動物。
大きな家と納屋、離れ家。
求めるもののために一生懸命仕事をした。
現代的な暮らしやその複雑さに
ちょっと打ちのめされたり立ちすくんだりすると
私たちは素朴さを求め、昔の時代を求めたりします。
でも、そうした時代は、
文明の発達した今日の世界ではほとんど忘れられた
大きな困難や恐ろしいことに満ちあふれていたのです。
昔ではなく、今のこの世の中での最高を追求し、
心に思い描く幸福を求めて、努力すべきだという。