川野康之 19年9月21日放送
ビル・カニンガムの生き方
ビル・カニンガム。フォトグラファー。
最初に手に入れたカメラは、
カメラマンの友人がくれた39ドルのハーフサイズカメラだった。
36枚撮りのフィルムなら72枚の写真が撮れる。
「ペンのように使え。メモを取るみたいに」
とその友人は言った。
その時以来片時も離れることなく、
カメラはビルの首にぶらさがっていた。
川野康之 19年9月21日放送
The Shared Experience
ビル・カニンガムの生き方
ビル・カニンガム。フォトグラファー。
つねに街に身を置いて、自分の目で街を見つめていた。
そして街が語りかけてくるのを待った。
通り過ぎる人の人生の一部をそのまま切り取って、
自分の目が見た真実だけを伝えようとした。
ビル・カニンガムは言う。
「重要なのは感想じゃない。見たものを伝えることだ」
野村隆文 19年9月15日放送
ResonantFelicity
未知なるメキシコ いろいろなタコス
メキシコの国民食といえば、
トルティーヤに様々な具を包んで食べる、タコス。
しかし実は、タコスはタコスだけにあらず。
タコという言葉には「円柱形のもの」という意味がある。
スポーツシューズのスパイクのことも、同じようにタコスと呼ぶそうだ。
こんなジョークもある。
「なぜメキシコ人はビリヤードができないのか?」
「タコを平らげてしまうからさ」
この「タコ」は、ビリヤードの玉を突くための細長い棒、
キューのことを意味している。
タコスもビリヤードも大好きな、メキシコらしいジョークを学べば、
あなたも立派なメキシカンに一歩近づけるかもしれない。
野村隆文 19年9月15日放送
Travis-S.
未知なるメキシコ サボテン健康法
明日9月16日は、メキシコの独立記念日。
メキシコといえば、荒野に広がるサボテン。
しかし、現代のメキシコ人にとっては、
街中のスーパーマーケットで出会うことのほうが多いかもしれない。
野菜売り場に大量に並んでいる、ウチワサボテン科の「ノパル」。
その名の通り、うちわのような平べったい形をしている、食用のサボテンだ。
寒暖差が激しく、乾燥も厳しい場所で育ったノパルは、実は栄養素が満点。
低カロリーな上に、食物繊維やミネラル、ビタミン類も多く含まれ、
国民食・タコスの付け合わせにノパルを置いている屋台も多い。
大腸がんによる死亡者数が世界一少ないと言われるメキシコの健康の秘訣は、
刺々しくも逞しい、メキシコの原風景のなかに隠されていたのだ。
野村隆文 19年9月15日放送
pasa47
未知なるメキシコ 三大地酒のあと2つ
メキシコのお酒といえば、テキーラ?
実はメキシコには、テキーラも合わせて三大地酒と呼ばれるお酒がある。
テキーラと同じリュウゼツランを原料に使う蒸留酒、メスカル。
実はテキーラも、一定の基準をクリアしたメスカルの一種である。
テキーラが工場で大量生産される一方、メスカルはすべて手作業でつくられる。
どんな原料を使うか、どんなふうに茎を蒸して潰していくか。
土壌や職人次第で、味にバラエティが出てくるところが、
クラフトなお酒に目がないアメリカの若者に大受け。
その人気は、ハリウッドスターが自分のメスカルブランドを立ち上げるほど。
さらに、テキーラやメスカルが生まれるもっと前、
古代文明の頃からメキシコで愛され続けているのが、プルケ。
日本のどぶろくに似た白濁した醸造酒で、
神に捧げる特別な飲み物として「神の酒」とも呼ばれる。
発酵速度がとても速いため、なんとメキシコ国内でしか楽しめないという。
今すぐ灼熱の太陽の下で、「サルー!」と乾杯してみたい。
野村隆文 19年9月15日放送
未知なるメキシコ 光の魔術師
メキシコで最も有名な建築家の一人、ルイス・バラガンは、
「光の魔術師」という異名を持つ。
ビビットカラーを取り入れた、カラフルなモダニズム建築。
メキシコの風土と生活を心から愛したバラガンは、
生涯を通して8つの色しか使わないと決めていたそうだ。
暮らしに根付く花、ブーゲンビリアのピンク。
大地の色である赤錆や黄土。
伝統的な染料、コチニールの赤。
死者の日に飾られるマリーゴールドの花の黄色。
青空や海を象徴する青。
教会の壁を思わせる白。
メキシコの桜とも言われる、ハカランダの薄紫。
強い日差しと暖かな空気にぴったりと溶け込むバラガンの建築は、
もちろん、メキシコに行かないと見られない。
野村隆文 19年9月15日放送
Hase-don
未知なるメキシコ メキシコの映画(1)
『ゼロ・グラビティ』、『バードマン』、そして『シェイプ・オブ・ウォーター』。
ここ数年、アカデミー賞を席感してきたこれらの映画の監督が、
全員メキシコ出身だということをご存知だろうか。
キュアロン、イニャリトゥ、そしてデル・トロ。
彼らが青春時代を過ごした80-90年代のメキシコは、
厳しい政治的規制の真っ只中。
それでも自らの信じる表現をつくるために、
ハリウッドを目指し、移民としてアメリカに渡った。
アカデミー作品賞を受賞したとき、デル・トロはスピーチでこう語った。
「芸術や映画が偉大なのは、砂の上に書かれた境界線を消してくれるから」。
映画の力は、国境を軽やかに越えていったのだ。
野村隆文 19年9月15日放送
ProtoplasmaKid
未知なるメキシコ メキシコの映画(2)
2018年のヴェネツィア国際映画祭で最高賞、
そしてアカデミー賞で3部門を受賞した映画『ROMA/ローマ』。
実はローマとはイタリアの都市ではなく、メキシコの街の名前のこと。
監督であるアルフォンソ・キュアロンが子供時代を過ごした
ローマ地区が舞台の作品である。
主人公は、白人中流家庭に住み込みで働く家政婦。
1970年代から今なお続くメキシコの格差社会が、
映画を通じて見えてくる。
2019年の今。そのローマ地区には、
レコードショップやクラフトビールバーが立ち並び、
若者を中心とした流行の発信地になろうとしている。
最先端のカルチャーと、背負ってきた歴史が入り交じるローマは、
いまのリアルなメキシコを感じられる場所なのかもしれない。
野村隆文 19年9月15日放送
Photo by Cristian Newman on Unsplash
未知なるメキシコ メキシコ人と死
昨年公開されたアニメーション映画『リメンバー・ミー』は、
メキシコのお盆とも言われる「死者の日」を題材にした作品。
オレンジ色のマリーゴールドに包まれた美しい情景のなかで、
死者と生者の交流を描いている。
実はメキシコには、「死」の呼び方が100近くもある。
さらには「死ぬ」という意味を表す慣用句も、とても豊富だという。
「歯をむき出す」「髪をほどく」という、骸骨をイメージさせる表現から、
「地面にキスをする」「骨と遊ぶ」という、ユーモアを感じさせる言い方も多い。
死はいつやってくるか分からない。
ならば、死を恐れるのではなく、今を楽しもうではないか。
メキシコの人たちは生死に誠実で、だからこそ陽気なのだ。
野村隆文 19年9月15日放送
Éole
未知なるメキシコ もっと自由な街へ
メキシコの首都、メキシコシティ。
自由を求め続け、
拡大しつづけてきたこの大都市は、
今なお自由に貪欲だ。
美術館が、パリと同じぐらいある。
街中に、電動キックボードやシェアサイクルが溢れている。
スケートとかファッションとか、若者のカルチャーが盛り上がっている。
世界の大都市から、アーティストやクリエーターが次々に移住してきている。
活気と喧騒は裏返し。
人が集まれば、もちろん衝突も起きる。
でも、そこからしか、多様で自由な新しい都市は生まれてこない。
メキシコシティは、今までで一番、
今この瞬間が自由な街。
明日9月16日は、メキシコの独立記念日。