佐藤延夫(事務局)

佐藤延夫 13年8月3日放送


Fabrice ROSE
あの場所へ ラフカディオ・ハーン

ラフカディオ・ハーンが、まだ新聞記者だったころ。
37歳のとき、カリブ海に浮かぶマルティニーク島へ旅に出た。
コロンブスが「世界で最も美しい場所」と言った島だ。

ハーンは、この熱帯の島がとてもお気に召したようで
2年ほど住み着いて現地の人々と交流した。
東洋の島国、日本に渡ったのは、その翌年のことになる。

思えば、彼が生まれたのは、
地中海にあるギリシャ領の島、レフカダ島。
その男のDNAには、島の景色が刻まれていたのかもしれない。

のちにハーンの妻、小泉セツが、
彼の好きな場所をこのように記している。

 マルティニークと松江、美保の関、日御碕(ひのみさき)、焼津

この夏、大好きな景色を探しに行きませんか。

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佐藤延夫 13年8月3日放送



あの場所へ ジャン・コクトー

南仏、コート・ダジュール。

ピカソ、マティス、シャガールなど、
この地を愛した芸術家は多い。
ジャン・コクトーもその一人だった。
友人の資産家夫人に招待され、
初めて訪れたコート・ダジュールに彼は一目で魅了される。
そのせいで、イタリア国境に近いマントンという街には、
ジャン・コクトー美術館がふたつもあるそうだ。

 生き方の基準は、正しいか正しくないかではなく、
 美しいか否かである。

これは、コクトーが残した言葉。
もちろん、美しい風景にも囲まれていたほうがいい。

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佐藤延夫 13年8月3日放送


archer10 (Dennis)
あの場所へ ハンス・クリスチャン・アンデルセン

デンマークの首都コペンハーゲンは、
童話作家、アンデルセンの故郷だ。
港町ニューハウンには、
当時、彼の住んでいたアパートが残されている。

旅が好きだったアンデルセンは、生涯に28回も転居し、
30回の海外旅行と87回の国内旅行をしたという。
そんな彼の言葉。

 旅は私にとって、若返りの泉である。

アンチエイジングには、旅がいい。

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佐藤延夫 13年8月3日放送



あの場所へ ヘミングウェイ

キューバの首都、ハバナ。
そこから東へ10キロほどにある、
コヒマルという小さな漁村は、
小説「老人と海」の舞台になった場所だ。

実はヘミングウェイ自身、
釣り船が遭難しかけた際に助けられたのが、
コヒマルの近くだったという。
そして、そのときに出会った漁師を、
「老人と海」に登場する男のモデルにしている。

 釣れないときは、魚が考える時間を与えてくれたと思えばいい。

これは、ヘミングウェイの言葉だ。
晩年になると彼は、恩人の漁師を引き連れて、
コヒマルの沖で釣りを楽しんだそうだ。

何度訪れても、歓迎してくれる。
そんな場所が、心のふるさと。

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佐藤延夫 13年7月6日放送


The Gouger
俵万智さんの記念日1

歌人、俵万智さんの代表的な一首、サラダ記念日。
歌の中に登場する七月六日という日付には、
ちゃんと理由があるそうだ。

元旦やクリスマスなど、特別な日ではないこと。
初夏という季節が、サラダに合いそうなこと。
「サラダ」と「しちがつ」、サ行が並ぶ語感の気持ち良さ。
あとは七夕の前の日ということ。

それは、特別な日ではないけれど、ちょっとだけ特別な一日。

 「この味がいいね」と君が言ったから七月六日はサラダ記念日

今夜のメニューに、どうかサラダをお忘れなく。

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佐藤延夫 13年7月6日放送


Weird Beard
俵万智さんの記念日2

歌人、俵万智さんは、
神奈川県にある高校の先生だった。

「サラダ記念日」を出版してからの2年は、
歌人と教師、二足のわらじで
24時間営業の店のようにがんばってきたそうだ。

どちらも心のゆとりが必要な仕事。
お昼どきの喫茶店のように、閉館後の美術館のように、
緊張とくつろぎ、両方の時間が必要だと気がついた。
そんな彼女の心を表すような歌をみつけた。

 蛇行する川には蛇行の理由あり急げばいいってもんじゃないよと

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佐藤延夫 13年7月6日放送


Nam2@7676
俵万智さんの記念日3

学生時代、成績優秀だった俵万智さん。
しかし、高校2年のとき成績が、がくんと下がった。
その理由は、失恋。

本人の言葉を借りれば、
「悲しいときはじっくり悲しむ。寂しいときはじっくり寂しむ」
毎日悲しみに暮れて、日記ばかり書いていたそうだ。

そして、ふと自分の置かれた状況に気付く。
恋は、私と彼の間にあるのではなく、私一人の中にあるのだ。
そんな恋の結末は、もちろん歌になっている。

 恋という自己完結のものがたり君を小さな悪党にして

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佐藤延夫 13年7月6日放送


yurayura_naoko
俵万智さんの記念日4

歌人、俵万智さんは
学生時代、実家によく葉書を出したそうだ。

「お父さん、お母さん、太一くん、元気ですか?」

お決まりの書き出しで始まる葉書は、
3日に2枚のペースで投函された。
その内容は、ご本人曰く
とても他愛ないもので、
学校のこと、クラブ活動のこと、アルバイトのことなど
日常のありとあらゆるものを、思いつくままに書き連ねた。

授業の始まる前。喫茶店で誰かを待つ間。
まるで家族とおしゃべりをするかのように、
暇さえあればペンを走らせた。

何百枚と送った葉書は、
お母さんが大切に、箱に入れて保存していた。
そして久しぶりに見返した一枚から、この歌が生まれたという。

 「寒いね」と話しかければ「寒いね」と答える人のいるあたたかさ

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佐藤延夫 13年7月6日放送


Weird Beard
俵万智さんの記念日5

宮城県仙台市で暮らしていた歌人、俵万智さんは、
東日本大震災をきっかけに、この土地を離れた。

幼い一人息子の手を引き、石垣島へ。

一番大切なもののために、
ほかのあらゆるものを、かなぐり捨てる。
そこには並々ならぬ決意が必要だった。
多くの批判にもさらされた。

 子を連れて西へ西へと逃げてゆく愚かな母と言うならば言え

生き方が正直な人でないと、この歌は書けない。

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佐藤延夫 13年7月6日放送



俵万智さんの記念日6

歌人、俵万智さんの「サラダ記念日」が
出版されたのは、1987年のこと。

五・七・五・七・七
学生時代から書き溜めてきたという
愛のかたちや心の模様が、31文字の中で踊った。

あれから26年。
俵万智さんは、140文字のつぶやきも
毎日のように更新している。

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