澁江組・奥村広乃

奥村広乃 16年4月17日放送

160417-03
Kabacchi
伝わる名前

福島県、いわき市。
大久川(おおくがわ)の崖で発見された
スズキフタバリュウ。
自己資金ではじめられた化石発掘は、
すぐに資金が底をつくことになる。

当時、国立科学博物館に勤めていた長谷川善和(はせがわよしかず)。
彼は、資金難を克服すべくスズキフタバリュウのPRを開始した。
国内の専門誌や博物館のニュース。
できる限りの宣伝をおこなった。

その時大切にしたのは、
一般の人たちにまで広まること。
蛇頸竜(だけいりゅう)や、長頸竜(ちょうけいりゅう)という
専門用語を使わず、
多くの人にわかりやすい、
「クビナガリュウ」という名前を使った。

名前は、名付け親だけのものではない。
呼んでくれる人たちのことを考えてつける必要がある。
多くの人が読めること。
伝わりやすいこと。
それが出来てはじめて、
人々に親しまれ、愛され続けることが出来る。

いまや、恐竜や大型は虫類の研究で世界に知られる長谷川氏。
彼はすぐれたコピーライターでもあったといえよう。

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奥村広乃 16年4月17日放送

160417-08

偉業を支える人

48年前。
その発見は、日本中を熱狂させた。

福島県、いわき市。
のどかな田園風景のすぐそばで、
古代生物の化石が発見されたのだ。
それは後にスズキフタバリュウと名付けられる、
日本初のクビナガリュウの化石だった。

スズキフタバリュウの発掘は、
地元の人の熱意で支えられた。
中でも馬上(もうえ)石材の職人は
発掘の初期から関わっていた。
クビナガリュウの分類で重要な
頭の骨を掘り起こしたのは、彼らだったという。
現地の地層を見て、
的確にタガネを打ち込んでいく。
そのプロの技に、立ち会った研究者は息を飲んだ。

世界の偉業は、
名の知れない職人達の活躍無しには
成し遂げられない。

スイッチを押せば流れるこのラジオの音も、
数えきれないほど多くのプロ達によって
支えられているのだ。

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奥村広乃 16年2月28日放送

160228-02
Rubber Soul
バカヤローの天才

2月28日。
今日はバカヤローの日。

底抜けにバカヤローであろうとした
漫画『天才バカボン』の作者、赤塚不二夫。
彼はこんな言葉を残している。

「バカっていうのは自分がハダカになることだ。
 世の中の常識を無視して、
 純粋な自分だけのものの見方や生き方を
 押し通すことなんだよ。」

彼の描くギャグ漫画に登場するキャラクターが
笑いを誘いながらも、時にかっこ良く見えるのは、
ハダカになって「自分らしさ」を存分に
ぶつけてくるからかもしれない。

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奥村広乃 16年2月28日放送

160228-08
クワトロ@JZA80
元気になるバカヤロー

2月28日。
今日はバカヤローの日。

おそらくもっともバカヤロー!と
言われてみたい男といえば、アントニオ猪木。

彼は試合前のインタビューで
こう語ったことがある。

 「出る前に負けること考えるバカいるかよ」

負けようと思って挑むな。
プロレスだけではなく、すべての勝負に言えること。

人生には何度も勝負のタイミングが訪れる。
不安に思うこともあるだろう。

そんな時は、猪木の
バカヤロー!が元気をくれる。

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奥村広乃 15年12月20日放送

151220-07
Jith JR
十三の職業

伊丹十三。

彼の職業は、1つではない。

俳優、タレントとして活躍後、
映画監督として時代を築いた。
映画だけではなく、CMも、
ドキュメンタリー映像もつくった。

すぐれたエッセイストでありながら、
雑誌の編集長をつとめ、
商業デザイナーや、
イラストレーターでもあった。

そんな彼は名刺の肩書きに、
こんな1項目を増やしてもいいと考えていたという。

「強風下におけるマッチの正しい使い方評論家。」

独自の鋭い感性とこだわりを持つ、
彼らしい職業である。

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奥村広乃 15年12月20日放送

151220-08
kylehase
男女の関係

空気が凛と冷え、
イルミネーションで街が眩しく彩られるクリスマス。
恋人とすごす人も多いのではないだろうか。

伊丹十三は、エッセイ『女たちよ!』の中で
男女の関係についてこう記している。

「男と女の関係は、一種の放電現象であって、
 両極間の距離がゼロになった時には、
 放電現象も消滅する。」

誰だって、相手に飽きたくない。
好きな人をいつまでも好きでいたいと思っている。

だから相手に飽きてほしくないと思った時は、
少し身をひいてみる。

そんな小技が、
2人の関係を熱く、長く、保つコツかもしれない。

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奥村広乃 15年11月15日放送

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龍馬の恋

「この話はまずまず人に言えないですよ。少し訳がある。」

内緒話をうちあけるかのように始まったこの手紙は、
坂本龍馬が姉の乙女に送ったものだ。

そこには千葉定吉道場の娘・佐那のことが綴られていた。

剣術がうまいこと。
薙刀もかなりの腕であること。
美人であること。
琴や絵をたしなみ、気立てがとてもよいこと。

惚気である。
そして自分が惚れた女性を
姉にも気に入ってもらいたいことがひしひしと伝わって来る。

熱い思いで幕末の日本を動かした、坂本龍馬。
彼は恋する心も、人よりいっそう熱かった。

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奥村広乃 15年11月15日放送

151115-07

龍馬と釣り

旧暦の今日11月15日が
誕生日であり、命日とされている坂本龍馬。

いのち短し 恋せよ乙女と歌われる
「ゴンドラの唄」の作詞者・吉井勇は
龍馬の新婚旅行のお供をしたという父から
こんなエピソードを聞いた。

坂本さんは、
あまり釣りが上手ではないと見えて
いつも餌をとられてばかりいた。
だがピストルで鳥を撃つのは
滅法旨かった。

幕府を倒し、
日本を一新させようと奔走した龍馬。
そんな彼も大自然を生きる
魚にはかなわなかった。

なんだか親しみがわくエピソードだ。

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奥村広乃 15年10月04日放送

151004-08
torisan3500
はじまりとおわり

日本を代表する辞書、広辞苑。
その編纂者は新村出(しんむらいづる)。
明治9年の今日、10月4日生まれの言語学者である。

詩人であり作家の高見順は、ある時、こう語った。

戦前の辞書は「愛」から始まり
「女(をんな)」に終わった。
戦後の辞書は「愛」に始まり
「腕力」に終わる。

どうやら、これは高見の創作であるらしい。
辞書のはじまりは「愛」ではない。
終わりは「女」でも「腕力」でもない。

では、本当の始まりと終わりは?
ぜひ、お手元の広辞苑で確かめてみてほしい。

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奥村広乃 15年8月16日放送

150816-01
HAMACHI!
東京音頭

屋台の香り。
提灯の明かり。
太鼓の音と、歌声。
輪になって踊る人々。
 
日本の夏に、
盆踊りは欠かせない。
 
有名な盆踊り曲のひとつ、「東京音頭」。
作詞者の西條八十はこんな言葉を残している。
 
 人を動かすことに詩の価値がある。

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