澁江俊一

松岡康 19年10月20日放送



かみのけ座

10月20日(はつか)、今日は頭髪の日。

小学生のころ、星図版で「かみのけ座」があることに気づき
不気味に感じた人も多いのではないだろうか。

かみのけ座は、ペレニケという紀元前8世紀ごろの
エジプトの王妃のかみのけを星座の名前にしたもの。

ペレニケは、戦場へ赴く夫の戦勝を祈願し、
その見返りとして髪の毛を神殿に捧げることを誓った。

ペレニケの祈りが通じ、王は生還。

髪を切ってしまった妻を見た王は悲しみ、
同時にその心遣いに感動しました。

ペレニケが神殿に捧げた髪の毛が、
星座になったという。

「かみのけ座」。
不気味な名前だが、そこには純粋な愛の物語があった。

topへ

奥村広乃 19年10月20日放送


jason61107
千尋

10月20日(はつか)、今日は頭髪の日。

名前に使われることも多い「千尋(ちひろ)」。
この「尋(ひろ)」は、長さの単位だ。

両手を左右いっぱいに伸ばした時の、
指先から指先までの長さが「尋(ひろ)」。
個人差はあるが、5尺から6尺。
おおよそ、1.5から1.8メートルである。

その尋の千倍の長さが、千尋。
長い髪が美しさの証と言われた時代。
「千尋、千尋」と唱えながら髪をとかし、
長く美しい髪になることを祈ったこともあったのだとか。

千尋は、1.8キロメートル。
そんなに長く髪が伸びたら、ラプンツェルもびっくりである。

topへ

礒部建多 19年10月20日放送



洗髪休暇

10月20日(はつか)、今日は頭髪の日。

日本の歴史上、
最も有名な剣豪と言っても過言ではない、宮本武蔵。

人生のほとんどを放浪武士として過ごし、
13歳から29歳までに、60数回の決闘を行い、無敗だったいう伝説も残る。

映画やドラマに登場する武蔵は
ボサボサの長髪を、後ろで結わえているものが多い。

一説によると、
一年のうちでも余程の事がない限り、
髪を切るどころか、洗髪をする事もなかったという。

現代ほど、身なりを綺麗にする文化がなかったとはいえ
武蔵は別格だったようだ。

伝説の剣豪。
その強さの秘訣は、
身なりを整える時間も惜しまず、
剣技を磨いていた事にあったのかもしれない。

topへ

澁江俊一 19年9月22日放送



神話のたどった道

世界の神話には
大きく2つの流れがある。
そんな学説がある。

その2つとは
ローラシア型神話と
ゴンドワナ型神話。

アフリカで生まれた人類が
地球上に広がるまでのルートの違いが、
神話に2つの流れを生んだという。

神話とは
文字のない時代に
私たちのはるかな祖先が
この世界と自分たちとの間にある
無限の問いの答えを考え続けて生まれた
未来へのメッセージ。

何万年も昔。
命の危険を冒してまで
まだ見ぬ土地へと移動しながら
神話を編み出した私たちの祖先がいた。
そこに想いを馳せるだけで、
時空を超えた旅が始まる。

topへ

澁江俊一 19年9月22日放送



ローラシア型神話

世界の神話には
大きく2つの流れがある。
そんな学説がある。

北半球に伝わるローラシア型神話と
南半球に伝わるゴンドワナ型神話。

アフリカで生まれた人類が
地球上に広がるまでのルートの違いが、
2つの流れを生んだという。

ローラシア型神話では
神が無からこの世界をつくったとされる。
ドラゴンを倒し、世界が秩序化され、
王が生まれるなど、ストーリー性があり、
幾度となくゲームや映画の題材にもなってきた。

世界の創造の話は
わかりやすく、感情移入しやすい。
しかし時に、戦争や不平等の正当化にも
これらの神話が用いられた。

私たち現代人の多くは
今もローラシア型神話の世界を
生きている。

topへ

澁江俊一 19年9月22日放送



ゴンドワナ型神話

世界の神話には
大きく2つの流れがある。
そんな学説がある。

北半球に伝わる
ローラシア型神話と
南半球に伝わる
ゴンドワナ型神話。

アフリカで生まれた人類が
地球上に広がるまでのルートの違いが、
2つの流れを生んだという。

ローラシア型神話では
神が無からこの世界をつくったとされるが
ゴンドワナ型神話では世界は最初からあり
すべての自然にも生命があり
人間と動物は同等の存在だった。

何万年も自然を観察し続け
永遠の成長や自然の支配を求めず
人と自然のあるべき関係性を考え続けた。
人類の原点ともいうべき
ゴンドワナ型神話に、今こそ我々は
もう一度耳を傾けてみようじゃないか。

topへ

澁江俊一 19年9月22日放送



日本の神話の未来

世界の神話には
大きく2つの流れがある。
そんな学説がある。

アフリカで生まれた人類が
地球上に広がるまでのルートの違いが、
2つの流れを生んだという。

神が無から世界をつくったとされる
北半球のローラシア型神話と
世界や自然はもともとあり
人はそこで生かされているとする
南半球のゴンドワナ型神話。

日本の神話や民話には
その2つの神話の
どちらもが流れ込んでいるという。

もしかしたら
数万年後の未来の
新たな神話の流れは
日本から生まれているかもしれない。

topへ

田中真輝 19年9月22日放送



DNAに刻まれた物語

世界中には、様々な文化、民族に
個別の神話が数多存在する。
しかし不思議なことに、それら別々の神話に
多くの共通性が見られることをご存じだろうか。

例えば、イザナギが死んだイザナミを求めて冥界に
赴くが、イザナミがタブーを犯したために二人は
引き裂かれるという日本神話にあるエピソード。

これに酷似したエピソードが、ギリシャ神話や
ゲルマン神話、メラネシアの神話にも存在する。

一体、これはなぜなのか。

一説には、人類は文化や環境が違っていても
無意識の深いところを共有しているからだという。

神話のルーツは固有の民族や文化が生まれるよりも
はるか昔、ヒトが進化する長い時間の中で
その濃度を増していった記憶の残像に違いない。

神話とは人間のDNAに刻まれた物語なのだ。

topへ

田中真輝 19年9月22日放送



どこからきて、どこへいくのか。

神話はなぜ生まれたのか。
それは「我々はどこからきて、
どこへいくのか」
という問いへの答えを
求めたから、と言えるだろう。

例えば、アフリカのズールー族の神話では、
大きな葦から最初の人間、
ウンクルンクルが生まれ、万物を作った。
ウンクルンクルは新たに生み出した人間の元へ
カメレオンを使いに出し、
「人は決して死ぬことはない」と伝えよと命じた。
しかし、カメレオンはあまりに歩みが遅く、
しびれを切らしたウンクルンクルは新たな使者、
バッタに「人は死ぬ」というメッセージを託し、
後を追わせた。
結果、バッタはカメレオンを追い越し、
人は必ず死ぬ存在となった。

古代の人々は、神話に大いなる謎に対する
答えと慰めを見出していた。
非科学的なほら話、と笑うだろうか。
しかし、そうした神話をもたないわたしたちが
彼らより幸せかどうかは、疑わしい。

topへ

田中真輝 19年9月22日放送



現代の神話

神話は、その時代を生きる人々の行動規範として機能した。
その意味において、現代最も機能している神話は
「資本主義経済」かもしれない。

資本主義経済とは、
「今日よりも明日がより豊かになる」というある種の
楽観論を信じることによって成り立っている。
資本主義社会が生まれる前までは、誰もそんな楽観論を
信じてはいなかったのだ。

世界は、4頭のゾウに支えられた巨大な亀の上に存在している。
かつては信じられていたそんな神話を、今、信じる人はいないだろう。
しかし一方で、昔の人々からしてみれば「資本主義」もまた、
疑わしい神話に見えるに違いない。

現代人にとっても、その神話はやや
疑わしさを増しているかもしれないが。

topへ


login