澁江俊一

澁江俊一 17年1月15日放送

170115-03

日本代表を導くカラス

今年、2017年は、酉年。

ワタリガラスという鳥がいる。

世界各地の神話で、
人類を導く役割を担っていたワタリガラス。

日本にも、同じような神話がある。
それが八咫烏の神話だ。
神武天皇が熊野の国から
大和国へ向かうのを導いたのが八咫烏なのだ。

八咫は大きなという意味の言葉で
つまりオオガラスということ。
そしてワタリガラスは、
日本ではオオガラスとも呼ばれている。

今では日本サッカー協会の
シンボルマークとして知られるこのカラス。
日本サッカーとの歴史は古く、昭和6年。
漢文学者、内野台嶺(うちのたいれい)の
発案でつくられた。

ボールをゴールに導いてほしい
という願いが込められている。

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澁江俊一 17年1月15日放送

170115-04
Augustus Binu
恐怖に魅せられた男

今年、2017年は、酉年。

アルフレッド・ヒッチコック監督の映画、
「鳥」は、大量の鳥たちに訳もなく襲われ続ける
人々の姿が描かれるサスペンスムービーの傑作。
その不条理さ、得体の知れない怖さに、
ヒッチコックの真骨頂を見ることができる。

ではなぜ、鳥なのか。
ヒッチコックはあるインタビューでこう答えている。
「恐怖を取り除く唯一の方法は、
 それを映画にしてしまうことだ」
ヒッチコックは、鳥に得体の知れない恐ろしさを感じ、
また一方で、その恐怖に魅せられていたに違いない。

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澁江俊一 17年1月15日放送

170115-05
KenWalker
写真家を導いたワタリガラス

2017年は、酉年。

ワタリガラスという鳥がいる。

世界各地の神話で、
人類を導く役割を担っていたワタリガラス。

アラスカに住むインディアンには
とりわけワタリガラスの神話が多い。
モンゴロイドである彼らは
かつてこのワタリガラスに導かれて
ベーリング海を越え、
北方アジアから新大陸アメリカへとやってきたのだ。

その神話を追い続けたのが
写真家の星野道夫。
彼はその謎をたどるように
アラスカからシベリアに渡り
ワタリガラスの神話を集める旅をしていた。
その途中、ヒグマに襲われ、命を落とした。

星野道夫はもういない。
けれど今でも、
星野が残したたくさんの写真と言葉は、
ワタリガラスのように
私たちを彼が探していた場所へと、導こうとしている。

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澁江俊一 17年1月15日放送

170115-06

天才絵師のトリック

今年、2017年は、酉年。

江戸時代に活躍した天才絵師、伊藤若冲。
彼は鶏をこよなく愛し、動植物をモチーフにした
作品集「動植綵絵(どうしょくさいえ)」シリーズ
全30点のうち、実に8点が鶏を描いたものである。

中でも「群鶏図」は圧巻。
13羽の鶏が絵の中でひしめきあい、あたかも
動き回っているような錯覚すら覚える。

実は、この錯覚を引き起こすために、若冲は
様々な仕掛けを意図的に施している。
せわしなく動き回る鶏たちを眺めながら、
次はどんな仕掛けで驚かせてやろうか、と
ほくそ笑む若冲の姿が眼に浮かぶようだ。

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澁江俊一 17年1月15日放送

170115-07

国鳥になったワタリガラス

今年、2017年は、酉年。

ワタリガラスという鳥がいる。

世界各地の神話で、
人類を導く役割を担っていたワタリガラス。

このワタリガラスを
国鳥に定めている国がある。
かつてGNH=国民総幸福量という提案で
世界が注目した国、ブータンだ。

幸せという
数値化できない指標を使い
経済ですべてを理解しようとする世界を、
別の場所へ導こうとしているブータン。

その国王の冠には今も、
ワタリガラスの彫刻が飾られている。

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澁江俊一 17年1月15日放送

170115-08

飛翔への憧れ

今年、2017年は、酉年。

レオナルド・ダ・ヴィンチが残した
膨大な手稿の中に、36ページからなる
「鳥の飛翔に関する手稿」というメモがある。
そこには、鳥が飛翔するための力学構造についての
考察が詳細にまとめられている。
この先見性と挑戦心に満ちた手稿の裏表紙に、
ダ・ヴィンチはこう記している。

「巨大な鳥は、偉大なチェチェロ山の頂きから初飛行を行い、
 全世界を驚嘆の声で満たし、すべての書物をその名声で
 満たすであろう。」

その予言は現実となり、わたしたちは、空へ、そして
さらなる宇宙へと飛び立とうとしている。
鳥たちへの憧れを胸に。

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奥村広乃 16年12月18日放送

161218-01

ジングルベルの噂1

もうすぐクリスマス。

この時期になると耳にする「ジングルベル」の歌。
元々はクリスマスソングではなかったという。

作詞作曲は、アメリカの牧師ジェームズ・ピアポント。
彼の教会でサンクスギビングのお祝いのために作ったのだとか。

元の歌詞には、クリスマスという言葉は無く、
ただただソリ遊びをする楽しさを歌っている。
女の子とそりを二人乗りして、ひっくり返ったり、
それを通りがかった紳士に笑われるシーンまである。

気持ちが華やぐメロディは、
時代も国境も季節さえも超えていくようだ。

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礒部建多 16年12月18日放送

161218-02

屋根の上で

キリストの生誕を祝うための祭日。
そんなクリスマスが、
今のように変化していった背景には、歌の影響がある。

ベンジャミン・ハンビーによってつくられた、
邦題”屋根の上で”は、
初めてサンタがクリスマスソングに登場した曲となった。

「サンタクロースは、
 たくさんのおもちゃを持って、
 煙突をおりてくる。」

サンタクロースのお茶目なキャラクターや、
楽しげな雰囲気は、この曲から広がっていった。

心踊るクリスマス。
それこそが、先人たちの想像力がつくりあげた、
最高のプレゼントなのかもしれない。

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奥村広乃 16年12月18日放送

161218-03
x-ray delta one
ジングルベルの噂2

1965年12月25日。
宇宙で初めて人類が演奏をした。
宇宙飛行士ウォルター・シラーの吹いたハーモニカだった。
曲名は、ジングルベル。

大きさ、わずか3.5cm。
重さ、たったの7.5グラム。
その小指より小さなハーモニカは
重量制限の厳しい宇宙飛行に
かろうじて積むことが出来た楽器であったという。

無線をつうじて、地上に届けられた
ジングルベルのメロディ。
当時の人々はどのような気持ちで聞いたのだろうか。

人類は宇宙へ飛び出しても、音楽をほしがる。
クリスマスソングを聞くと
無条件にワクワクしてしまうのは、
いつの時代でも、いかなる場所でも、
変わらないのだろう。

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奥村広乃 16年12月18日放送

161218-04

クリスマスソングと反戦歌

世界中で歌われるクリスマスソングには、
戦争の終わりを願う歌が多い。

ホワイト・クリスマスは
第二次世界大戦の最中につくられた。

スティービー・ワンダーのSomeday at Chirstmas
ジョン・レノンのHappy Xmas(War is over)
はともにベトナム戦争の真っ只中だった。

人類がサンタクロースに望む
最高の贈り物はきっと、
戦争のない世界だ。

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