澁江俊一

澁江俊一 16年9月11日放送

160911-01

割れ窓理論

割れ窓理論という言葉がある。

9.11のテロで
迅速かつ冷静に指揮をとり、
ニューヨーク市民に高く評価された
ジュリアーニ市長。

彼は就任当初、
街じゅうの割れた窓をなくすことで
最悪だったニューヨークの治安を向上させた。

窓が割れている街は、
犯罪が生まれやすい空気を生む。

テロもきっと同じだ。
人々の心の中に割れた窓がある限り、
憎しみ、争いたくなる空気が生まれる。

今こそ、曇りなき窓から、
世界を見直してみよう。

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澁江俊一 16年9月11日放送

160911-02
Adrian Cabrero (Mustagrapho)
考えさせる形

9.11後のアメリカのシンボルとして
グラウンドゼロにそびえ立つ
ワンワールドトレードセンター。

そのかたわらに
ニューヨーク市民から
長く愛され続けるオブジェがある。

イサム・ノグチ作、レッドキューブ。

倒れそうで、倒れない。
鮮やかに赤い巨大な正方形が
その角一点で立っている。
その正方形を貫く
大きな丸い穴。

赤いキューブは
シンプルだからこそ
答えがない問いそのもの。

9.11から15年。
そのオブジェは世界に何を
問いかけているのか?

考え続けよう。
私たちにできるのは、それだけだから。

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澁江俊一 16年9月11日放送

160911-03

スポーツにしかできないこと

2001年、9月11日。
2本の高層ビルが崩壊し、
アメリカのすべての日常が止まった。

1週間後の9月17日
メジャーリーグは再開され、
ニューヨークメッツの選手たちは
テロに立ち向かった勇気に敬意を表して
ニューヨーク警察と消防局の
帽子をかぶってプレーした。

ニューヨークヤンキースも
この年、シーズンを通して
神がかったような大躍進を見せた。

この年、新人王とMVPを獲得した
イチローはこう語っている。

野球どころではない、
という気持ちは当然皆が持っている。
その反面、僕達にできることも
野球しかないということです

阪神淡路大震災の年に
日本一になったオリックス。
東日本大震災の年に
ワールドカップを制したなでしこジャパン。

人知を超えた悲劇と向き会う時、
スポーツは大きな回復力をくれるのだ。

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田中真輝 16年9月11日放送

160911-04
Joao Carlos Medau
悼む人

今日、9月11日は、
アメリカ同時多発テロ事件が
発生した日。

この事件をきっかけにして紡がれた物語がある。
作家、天童荒太による「悼む人」。

911以降、世界中に広がる怒りの連鎖への
無力感の中で生まれたのが、
死者を悼んで旅する男の物語だった。

「なぜ、私たちは、すべての死者を平等に
追悼することができないのか」

その問いかけを胸に、天童は実際に、
各地で亡くなった人を悼む旅に出る。
そして、実に7年という歳月の果てに、
天童は「悼む人」を上梓する。
そこに描かれているのは、怒りに包まれる
世界への、天童からの静かだが、
力強いメッセージだ。

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澁江俊一 16年9月11日放送

160911-05
Diliff
残された言葉たち

「ものすごくうるさくて、
ありえないほど近い」

9.11後のニューヨークで
悲劇から立ち直ろうとする人々を描いた
珠玉の映画。

9.11のテロに巻き込まれ
突然父親を失った少年が
父の遺品から、
小さな鍵とBlackと書かれた封筒を見つける。

少年はニューヨーク中のBlackさんを訪ねて
鍵の秘密を聞いて回る。

監督は名匠スティーブン・ダルドリー。
彼は撮影前、出演者たちに
アメリカでは放送されていない
9.11の遺族たちの
ドキュメンタリー映像を見せた。

「心配しないで、わたしは大丈夫」

「みんなを愛しているよ」

悲劇のさなか、
家族を励まし、悲しませないために
残された言葉たち。

その優しさが
何度も見直したくなる名演技を支えている。

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田中真輝 16年9月11日放送

160911-06
InSapphoWeTrust
宛先のない手紙

今日、9月11日は、
アメリカ同時多発テロ事件が発生した日。

マンハッタン島の
南に位置するスタテンアイランドに、
事件で命を落とした島の住人、
275名の犠牲者を
追悼するモニュメントがあることをご存知だろうか。

彼らの多くは救助に向かった消防士たちだった。
設計したのは日本人建築家、曽野雅之氏。
ワールドトレードセンターに向かって
翼を広げるように立つ、そのモニュメントの名前は
「ポストカード」。

自らの危険を顧みず、崩落するビルへと
赴いた人々に想いを届けたいという願いが、
そこに込められている。

それは同時に、
世界中に向かって命の尊さと
戦争の虚しさを伝える、
宛先のない手紙に他ならない。

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田中真輝 16年9月11日放送

160911-07
Aude
タイムスリップエレベーター

今日、9月11日は、
アメリカ同時多発テロ事件が発生した日。

いま、その跡地には、デイビッド・チャイルズが設計した
ワンワールドトレードセンターが立っている。
彼は、この超高層ビルのエレベーターに、息を呑むような
仕掛けを施した。

エレベーターが上昇し始めた時、
窓の外に広がるのは1500年代、
マンハッタン島に入植が始まったころの光景。
そして、その風景はエレベーターが上昇していくにつれ、
高速で現代に近づいていく。
102階につくまでの47秒間でニューヨークが
発展していく歴史を目撃することができるのだ。

到着する寸前、一瞬だけ、
かつてのワールドトレードセンターが
映し出され、消える。

そして、エレベーターを降りたとき、
目の前に広がるのはいま現在のニューヨーク。
そこで、あなたは何を思うだろうか。

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田中真輝 16年9月11日放送

160911-08

神の視点

今日、9月11日は、
アメリカ同時多発テロ事件が
発生した日。

この事件を、神の視点で目撃した人物がいる。
宇宙飛行士、フランク・L・カルバートソン。
彼はその日、国際宇宙ステーションに滞在していた
唯一のアメリカ人だった。

その時撮られた写真には
ワールドトレードセンターから
東へと長くたなびく煙が写っている。
彼は上空からニューヨークのただならぬ様子を目撃し、
地上と交信することで、事件を知ったという。

宇宙から眺める地球に、国境はない。
暗黒の宇宙に浮かぶ、たったひとつの青い星。
なすすべもなく見下ろすその光景に
彼は何を思っただろう。
そして、神は何を思っただろうか。

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澁江俊一 16年8月28日放送

160828-01
ChristianSchd
話を聞く力

今日は童話作家
ミヒャエル・エンデの命日。

エンデが書いたヒロイン、モモ。

おれの人生は失敗で、なんの意味もない、
生きていようと死んでしまおうと、
どうってちがいはありゃしない。

そう考えている男でも
モモに話を聞いてもらううち
自分の間違いを知る。

おれという人間はひとりしかいない、
だからおれはおれなりに、
この世のなかでたいせつな者なんだ、と。

SNSのおかげで、
発信する人は世界中に増えた。
聞く人は、どうだろう。

モモは人々の話を聞きながら
じっと待っている。
聞いてくれる人がいる、
その喜びを知った相手が
本当の自分の声に気づくのを。

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奥村広乃 16年8月28日放送

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心と時間

今日は童話作家
ミヒャエル・エンデの命日。

彼はやさしい文章で、
多くの大切なことを教えてくれた。
代表作「モモ」の中にこんな一節がある。

「人間には時間を感じとるために
 心というものがある。
 そして、もしその心が時間を
 感じとらないようなときには、
 その時間はないもおなじだ。」

せわしなく時間が過ぎていくときは、
心が時間を感じる余裕が無いときなのだろう。

そんな時は、ゆっくりと息を吸って、吐く。
ゆっくりと吸って、吐く。

そんな深呼吸をしてみてはどうだろうか。
きっと
心が時間を感じる余裕を持つことだろう。

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