神送り
人類は遥か昔から
疫病と向き合ってきた。
医療が発達していなかった頃、
疫病は悪い神が流行らせるものだと思われていた。
そんな邪神を送り出す「神送り」の儀式を、
落語の題材にしたものがある。その名も「風邪の神送り」。
町の人々が風邪の神を、
鐘や太鼓で囃し立てながら隣の町まで送っていく。
終いには川や海へ流してしまう。
しかし、「お名残り惜しい」と言う奴が現れる。
誰かと思ったら町内の薬屋であったのだ。
その夜、川に流れた風邪の神は、漁師の網に引っかかる。
発見した漁師が一言、「夜網に付け込んだな」と言って、
「弱み」にかけるのがオチである。
目には見えない敵を、漫談にして笑い飛ばす。
疫病も、人間の知恵とユーモアには敵わない。