澁江俊一

奥村広乃 16年6月12日放送

160612-07

ナンシー関とカラオケ

世界初の消しゴム版画家、ナンシー関。
今日は彼女の命日である。

 カラオケとは人格なんだね。
 と、ナンシーは言う。

カラオケは上手い下手よりも、
なにを歌うかが気になる。
その選曲によって、
人となりも
その集団の中のポジションも
なんとなくわかってしまうから。

周りの人にそんなに観察されるなら、
カラオケは娯楽じゃない、怖いものだと
彼女は笑って語った。

マイナーコードの
圧倒的に暗い曲を好んで歌ったというナンシー。
彼女の歌はとても上手だったという。

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礒部建多 16年6月12日放送

160612-08
Fabio Sola Penna
ナンシー関の成功

世界初の消しゴム版画家、ナンシー関。
今日は彼女の命日である。

この世界で成功するためには、
 平凡な幸せを望んじゃいけない。

そう語るナンシーは、人生を仕事に捧げた。

膨大な量の連載を抱えながら、
1日15時間以上も寝ずにテレビ鑑賞。
過度なストレスと、不規則な生活。
39歳でこの世を去った。

死後14年経過しても、
命を削りながら生み出した作品たちは、
多くの人々に愛されつづけている。

ナンシーにとって、これは
思い描いていた
一つの成功なのかもしれない。

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澁江俊一 16年5月8日放送

160508-01

言えなかった反対

今日は、
第二次世界大戦で命を失った全ての人に
追悼を捧げる日。

妖怪漫画の巨匠、水木しげる。
一兵士として過酷な戦争を経験し
戦場の人間たちの様子を
リアルな漫画に描いた。
水木にはどんなインタビューでも
絶対に口にしないと決めていた言葉があった。

それが「戦争反対」。

目の前で命を落とす戦友たちと
同じ目線に立ち続けた水木には、
「反対」という一言にすべてを込めてしまうことに、
どこか違和感があったのかもしれない。

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田中真輝 16年5月8日放送

160508-02
Well Oiled Machines
正義のパン

今日は、
第二次世界大戦で命を失った
全ての人に追悼を捧げる日。

本当の正義とは何か。
24歳で中国に出征したやなせたかしが
たどり着いた答えが、
アンパンマンだった。

本当の正義とは、献身と愛だ。
目の前で餓死しそうな人に
一片のパンを差し出すことだ。
たとえ自分がお腹が空いて
死にそうになっていても。

アンパンマンマーチの歌詞にも
やなせの信念は溢れている。

 そうだ うれしいんだ 生きる喜び
 たとえ 胸のキズがいたんでも

国歌のように地球の歌があるなら、
それはアンパンマンマーチであるべきだ。

そう思いませんか?

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澁江俊一 16年5月8日放送

160508-03

考え続けること

今日は、
第二次世界大戦で命を失った
全ての人に追悼を捧げる日。

大西巨人の小説「神聖喜劇」。
400字の原稿用紙にして、
およそ5000枚にもなる大長編だ。

主人公の青年、東堂太郎は
超人的な記憶力を持ち、
軍隊で起こる様々な出来事について
徹底的に考え続ける。

軍隊規則の条文まで
一言一句暗記している東堂は、
上官たちにも臆せず
自らの考えをぶつけていく。

上の命令が絶対で
記憶など求められない
軍隊という理不尽と、
忘れないこと、考え抜くことで
徹底的に戦う東堂。

決して読みやすくはないこの小説が
今また若者たちの間で
読まれ始めているらしい。

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田中真輝 16年5月8日放送

160508-04

うつろな足音

今日は、
第二次世界大戦で命を失った
全ての人に追悼を捧げる日。

二つの世界大戦の、ちょうど間を
生きた文豪、芥川龍之介は戦争について
こう述べている。

我々に武器をとらしめるものは、
いつも敵に対する恐怖である。
しかも、しばしば実在しない架空の敵に
対する恐怖である。

関東大震災のあと、芥川龍之介は
戦争が忍び寄るうつろな足音を確かに聞いていた。

今を生きる私たちが注意深く耳をすます時、
聞こえるのはどんな音だろうか。

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澁江俊一 16年5月8日放送

160508-05

反省なき暴走

今日は、
第二次世界大戦で命を失った
全ての人に追悼を捧げる日。

作家の半藤一利は、
日本陸軍の暴走の始まりとなった戦いを取材し
「ノモンハンの夏」を書いた。

ノモンハンという、
資源も何もない平原をめぐり
一握りの高級参謀の独善で、
8000を超える日本兵士が命を落とした。
陸軍将校たちはその戦いを反省することもなく、
太平洋戦争で同じ過ちを繰り返した。

本のあとがきで半藤はこう語る。

 怒りが鉛筆の先にこもるのを如何ともしがたかった。
 勇戦力闘して死んだ人びとが
 浮かばれないと思えてならなかった。

半藤が取材し、
記した言葉の一つひとつが
名もなき兵士たちへの鎮魂歌なのだ。

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田中真輝 16年5月8日放送

160508-06

喜劇俳優の怒り

今日は、
第二次世界大戦で命を失った
全ての人に追悼を捧げる日。

戦争についての最も力強いスピーチの一つは
ある映画のラストシーンで行われた。

その映画とはチャップリンの「独裁者」。
無言のパフォーマンスで有名な稀代の喜劇俳優は
そのラストシーンで6分間もの間、見る者に
熱く訴え続けた。

貧困と争いに満ちた世界の中にあっても、
決して絶望してはいけない。
人間には、人生を自由に美しいものに、
素晴らしい冒険にする力があるのだ、と。

その表情は真剣さというよりは、むしろ
怒りと悲しみに満ちているように見える。

喜劇と無言、という持ち味を捨ててまで
チャップリンが伝えたかった6分間のメッセージを
ぜひ一度、ご覧ください。

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澁江俊一 16年5月8日放送

160508-07

同じ人間として

今日は、
第二次世界大戦で命を失った
全ての人に追悼を捧げる日。

終わった戦争を、どう語るべきか。
それを考えさせられる映画がある。
クリント・イーストウッド監督「硫黄島からの手紙」。

当初は日本の監督を起用する予定だったが、
最後は自らメガホンを取った。
その理由をイーストウッドはこう語る。

 資料を集めるうちに
 日本軍兵士もアメリカ軍兵士と
 変わらない事が、わかったのです。

アメリカ側から描いた「父親たちの星条旗」と
ひとつの戦いを2つの映画にすることで
日米どちらも英雄にせず、悪人にもせず
同じ人間として描き抜いた傑作である。

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田中真輝 16年5月8日放送

160508-08

深い河

今日は、
第二次世界大戦で命を失った
全ての人に追悼を捧げる日。

人はなぜ争うのか。

宇多田ヒカルのDEEP RIVERという曲には
こんな歌詞がある。

剣と剣がぶつかり合う音を
知るために託された剣じゃないの
そんな矛盾で誰を守れるの

主義や主張は、ぶつけあうために
あるものではないはず。
しかし、それは往々にしてぶつかりあう
という矛盾を孕んでいる。

人が争い合うことの根元が
その歌詞に表現されている。

深い河は、人を隔てるものなのか。
それとも、主義の違いを包み込むものなのか。

あなたはどう思いますか?

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