広辞苑と国民的女優
日本を代表する辞書、広辞苑。
その編纂者は新村出(しんむらいづる)。
明治9年の今日生まれた言語学者である。
広辞苑の生みの親といえば
どんな人物を想像するだろう?
いつも正しく、真面目で、謹厳実直な人物だろうか。
そのどれもがあてはまった出だが、
愛らしい一面もあった。
名女優、高峰秀子の大ファンで、
家中に彼女のポスターを貼っていたのだ。
広辞苑を知らなかったという秀子は、
出の印象をこう記している。
新村出という人は、
こりゃ余程の大人物なんだな、
ライオンが借りてきた猫みたいになっちゃったんだから。
ここで言うライオンとは
秀子を出に紹介した大作家、
谷崎潤一郎である。
秀子もまた、
かなりの大人物だった。