反抗し続ける哲学者
今日、4月27日は哲学の日。
戦後日本を代表する哲学者、鶴見俊輔。
彼の母、愛子はあまりに厳しい母だった。
大きな家に生まれた人間は必ず悪人になると信じ、
息子に成功や出世を目指すことをまったく望まず、
地道な仕事に就くことを心から願っていた。
そういう彼女の父は、明治日本の超大物、後藤新平なのだから
その複雑な心境は、想像するに余りある。
柱に縛りつけ、何度もひっぱたき、お前は悪人だ!となじる。
激しい折檻を繰り返す母に、幼い俊輔は徹底的に反抗する。
門限を破り、無理にたばこを吸い、
万引きをし、同級生をいじめ、何度も自殺未遂をはかる。
当然、友達はいない。学校に行かず読書にふけった。
中学も2度退学し、逃げるようにアメリカに渡った俊輔は
生まれ変わったように勉強し、ハーバード大学でトップの成績をおさめた。
戦後は常に弱者や少数者の側に立ち、権力に反抗する哲学者として活躍する。
まるで母が望んだ地道な人生を、すべて肯定するかのように。
鶴見俊輔は後に、母について、こう語っている。
私のあらゆる著作は、
おふくろが私にした仕打ちに対する答です。
母の暴力の奥深くにあるゆがんだ愛を、
鶴見は痛いほどわかっていたのだ。