澁江俊一

澁江俊一 20年3月22日放送


RESPITE
水がつくる日本の心

今日は世界水の日。
水について
考えてみたくなる日。

日本の地形は急峻で、
雨が降ると川の水も勢いを増す。
一方ヨーロッパの川は
なだらかな平野部をゆっくりと流れていく。
 
この水の流れが
人間の精神にも影響を与えた。
水環境はそこに生きる人の心を形づくるのだ。

例えば水の少ない土地だと、人は自然に立ち向かう。
砂漠の宗教と言われるキリスト教。
その流れをくむ西洋文明は、科学で自然を支配しようとする。

しかし日本は雨も多く、豊富な水と豊かな森があった。
木の実やキノコ、山菜、魚、鳥や鹿…
森にも川にも豊かな恵みがあった。
だから自然に感謝し、支配しようとは思わなかった。

「行く川の流れは絶えずして、しかももとの水にあらず」
我々の心に深く宿る、この鴨長明の言葉こそが
水によってつくられた日本の精神を、
見事に言いあらわしている。

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澁江俊一 20年3月22日放送



水と芸術

今日は世界水の日。
水について
考えてみたくなる日。

芸術家にとって水は最高のモチーフだ。
北斎は海の波のしぶきを見事に描き
モネは水面に映る光の揺らめきを
キャンバスにとどめた。

中でも最も水に取り憑かれた芸術家は
レオナルド・ダ・ヴィンチだろう。

彼の残した膨大なノートには
水や水の流れに関するものが非常に多い。
水を徹底的に観察し洞察することで
人体の血液や空気の流れへとその興味を広げていった。

人類最高の天才が最も惹かれたのが、
この星のどこにでもある水だとは。
当たり前のものを、どう見るか。
その大切さをダヴィンチから学びたい。

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田中真輝 20年3月22日放送



硬い水、軟らかい水

今日は世界水の日。
水について
考えてみたくなる日。

カルシウムやマグネシウムなどの
金属イオン含有量が多い水を硬水。
少ない水を軟水、と呼ぶ。

日本の水は、ほとんどが軟水で、
その癖のなさ、まろやかさが
和食や茶道には欠かせない。
一方で、欧米の水は硬水が多く、
ミネラル分が肉の臭みを消し
軟らかくするため、肉などの
煮込み料理に向いているという。

その土地の料理は、その土地で
食べるのが一番おいしい。
それは、雰囲気だけではなく、
実はその土地の水によるところも
大きいのかもしれない。

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田中真輝 20年3月22日放送


osa_muu
水に浮く氷の謎

今日は世界水の日。
水について
考えてみたくなる日。

コップに入った冷たい水の表面に浮く、氷。
実は、液体である水の上に個体である
氷が浮く、という現象は自然界にある物質の中でも
極めて特殊なのだとか。

ほとんどの物質では、液体よりも個体の方が
密度が高く、体積当たりの重量も大きくなる。
例えば溶けた鉄に鉄球を入れると見る間に沈んでいく。

しかし水の場合は、個体になると、水分子を
作っている酸素原子と水素原子が結合し
隙間のある籠のような状態になるため、
液体の時よりも密度が低くなり、密度の高い
液体の水の上に浮くのだ。

他にも水には科学的に明らかになっていない
点が多数存在するという。
生命に欠かせない水。その神秘の力は
まだまだ謎に包まれているようだ。

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田中真輝 20年3月22日放送


NASA
火星の水

今日は世界水の日。
水について
考えてみたくなる日。

火星に水は存在するのか。
その答えはYES。

2018年に欧州宇宙機関の火星探査機、
マーズ・エクスプレスが、極冠の下に
幅20キロほどの湖があることを発見した。

ではその水の中に
生命は存在するのか。
その答えは…まだなんとも言えない。

しかし、とにもかくにも生命の源となる
水の存在は確認できた。
あとはその水を手に入れて顕微鏡で
覗いてみればいい。
ただしそのためには、厚さ1.5キロの氷を
掘削できるロボットを7500万キロ離れた
火星に送りこむ必要があるのだが。

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田中真輝 20年3月22日放送



太古の海の記憶

今日は世界水の日。
水について
考えてみたくなる日。

人間はその体の中に、
太古の海の記憶を宿している、という
話を聞いたことはないだろうか。

40億年前、単細胞生物として
海水中から栄養素を吸収していた
その名残が血液をはじめ体内の
様々なところに見られるのだという。

例えば空気中の振動は、耳の奥にある液体
によって波に変換され、脳に伝わる。
それをわたしたちは音として認識する。

わたしたちは今、この瞬間も、
波の音を聞いている、
と言えるのかもしれない。

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奥村広乃 20年2月15日放送


tamaki
発酵か腐敗か

もう半分しかないと考えるか。
まだ半分あると考えるか。
同じものを見ても、全ては捉え方次第。

発酵と腐敗。
この2つの現象はとてもよく似ている。
どちらもカビや菌の力で、
食品の匂いや見た目が変化する。

納豆は微妙なラインの発酵食品だ。
海外では腐っていると食べるのを拒む人もいる。

納豆が発酵食品として受け入れられている日本。
ポジティブな人が多かったのか。
もったいない精神が旺盛だったのか。
全ては捉え方次第なのだ。

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澁江俊一 20年2月15日放送



心にも発酵を

発酵という現象がある。
自然の中の微生物の力を借りて
パンやチーズ、ビール、日本酒や漬物、納豆など
おいしい食べものを生み出してくれる
人類の食文化に欠かせないもの。それが発酵。

腐敗と発酵は実は「同じ」現象。
人間にとって、いいか悪いか、
ただそれだけの違いだ。

それをヒントにして
人の心も発酵すると、考えてみてはどうだろう?

何もかも上手くいかないで
やる気が起きなくなった人がいたら…
「あいつは今、腐っている」
と言ってしまうのではなく、
「あいつは今、発酵しているんだよ」
と言って見守ってみる。

その後、月日が経てばきっと
いいことが起こるはず。
そんな気が、しないだろうか?

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澁江俊一 20年2月15日放送


Allagash Brewing
発酵の発見

発酵という現象がある。
自然の中の微生物の力を借りて
パンやチーズ、ビール、日本酒や漬物、納豆など
おいしい食べものを生み出してくれる
人類の食文化に欠かせないもの。それが発酵。

微生物はまた
食物にカビを生やさせたり、腐らせたりもする。
では腐敗と発酵とは何が違うのか。
正解は、「同じ」。
人間にとって、いいか悪いか、
ただそれだけの違いだ。

それだけ? いやいや。
人間にとっていいか悪いか、
その境界線を見分けてきた私たちの祖先の
観察力たるや、相当なものじゃないか。
顕微鏡もない時代に、目に見えない
微生物の働きをじっくり観察して
それを恐る恐る口にして
いいか悪いかを判断してくれたのだから。

今宵は祖先たちの努力に乾杯しよう!
ビールで乾杯? それともワイン? 日本酒?
つまみはチーズ? 塩から? キムチもいい?
うーん、発酵とはなんと楽しい食文化だろう。

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松岡康 20年2月15日放送


HAMACHI!
良い菌? 悪い菌?

日本の家庭に根付いた発酵食品といえば糠漬けだろう。
糠床の中にいる乳酸菌を中心とした微生物の働きによって、
美味しい糠漬けが出来上がる。

だがこの糠漬け、
そもそも何の菌で発酵しているのかよくわかっていない。

乳酸菌と並んでぬか漬け独特の風味をつくっている微生物として、
カンジダ種の酵母の働きが報告されている。

このカンジダ種の酵母は、時に感染症の原因になる。
しかし一方で、おいしい糠漬けが食べられるのは、
彼らの働きが欠かせないのだ。

菌の世界には、いいヤツ、悪いヤツなんていない。
どの菌にも役割があって、意外なところで意外な働きをしたりする。

私たち人間が糠床から学ぶことは多そうだ。

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