澁江俊一

奥村広乃 13年6月16日放送



医学の父

食べ物で治せない病気は、医者でも治せない

2500年以上前のギリシアで、こう唱えた人物がいた。
後に医学の父とよばれる、ヒポクラテスである。

400種以上の薬草の知識をもち、
脱臼や骨折を治す器具を考案し、
ペストの流行を抑えるなど功績は数えきれない。

彼にはこんな逸話がある。
マケドニアの王さまが不思議な病にかかり、診察を頼まれた。
王さまの脈をはかると、普通の男性よりも極端に少ない。
顔も青白く、やつれている。
しかし、ある女性がそばを通る時だけ脈が正常に戻る。
名医ヒポクラテスはこんな診断をくだす。
「これは、恋という病です。
この病気を治すことができるのは、愛だけです。」

健康は、食べる物に左右される。
心のありかたにも影響される。
医学がどれだけ進歩しても、
人間そのものは2500年前と
あまりかわっていないのかもしれない。

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奥村広乃 13年5月12日放送



キレイな母親が増えてます

映画『スノーホワイト』で、
白雪姫に毒りんごを食べさせる
王妃を演じたシャーリーズ・セロン。

スクリーンで圧倒的なオーラを放つ彼女は、
女性の美しさは、幸せな人生から生まれるものだと語る。

養子をむかえ母になった、
シャーリーズは今年で37歳。
彼女の美しさは衰えることを知らない。

日本でも、年齢を重ねても美しい女性が増えた。
アラサー女子、アラフォー女子、美魔女という言葉も飛び出し、
自分磨きに妥協しない女性が注目をあつめる。
美しさという武器を手に入れ、
母親たちはどこまで逞しくなっていくのだろうか。

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澁江俊一 13年5月12日放送


Alan Light
名女優が演じた母

ハリウッドが誇る
演技派女優メリル・ストリープ。

アカデミーの常連である彼女が
初めて助演女優賞を獲得した作品は
1979年の「クレイマー、クレイマー」だった。

メリルが演じたのは
女としての生き甲斐と
母としての愛に揺れ
かつての夫と裁判で争う妻。

仕事ひとすじだった夫が
会社をクビになっても
懸命に息子を愛したことに胸を打たれ、
妻は息子を連れ戻す直前に、気持ちを変える。

その演技は
今、働くお母さんたちにも
ぜひ見てほしい
映画史に残るラストシーンだ。

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澁江俊一 13年5月12日放送


Gage Skidmore
新しい母親像

まだ幼い子どもを
突然誘拐された母親。
やっと再会できた時に
その子がまったくの別人だったら。

その気持ちを思い描くことすら難しい役を
クリント・イーストウッド監督の映画
「チェンジリング」で演じ切った女優
アンジェリーナー・ジョリー。

彼女の演技に
強い引力があったのは、
当時彼女が本当の母親だったから。

映画が公開された2008年
彼女にはカンボジア人、エチオピア人、ベトナム人という
それぞれ国籍の違う3人の養子と、
ブラッド・ピットとの間に生まれた
3人の実の子どもがいた。
そんなパワフルな母親、どこをさがしても、なかなかいない。

彼女はこれから、
世界中のママたちに勇気をくれる
強くてやさしい母親を、
どう演じてみせてくれるだろうか?

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澁江俊一 13年5月12日放送



美人の条件

世界で最も美しい女性ランキングがあれば
間違いなくトップクラスに入る
オードリー・ヘプバーン。

日本のアニメで美女の中の美女と言えば
銀河鉄道999のメーテル。

その2人には、実は共通点がある。
演じている声優が同じ
池田昌子(いけだまさこ)なのだ。

その淑やかで艶のある声で美女だけでなく、
やさしい母親を演じることも多い。
なんとウルトラの母を演じたこともある。

数年前、一度は断ったが、たっての頼みで
70歳を超えてもヘプバーンを演じ直してみせた。
みんな、彼女の声じゃなくちゃ、ダメなのだ。

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松岡康 13年5月12日放送


FlySi
ロボットは母親を愛せるか

巨匠スタンリー・キューブリックが構想を練り、
彼の死後スティーブン・スピルバーグによって
映像化された映画「A.I.」。

主人公は、人間の母親を愛するように
プログラムされた少年のロボット、デイビッドだ。
彼は製造されてすぐに、モニカという女性のもとに送られる。
彼女には不治の病を持つ息子がいたが、
冷凍睡眠で眠り続けていた。

純粋にモニカを愛するデイビッド。
モニカも同様に彼を愛した。
ところがある日、冷凍睡眠をしていた息子が
奇跡的にめざめ、デイビッドは捨てられてしまう。

人間じゃないから、モニカから愛されない。
そう考えたデイビッドは、人間になる方法をさがして旅にでる。
結局、そんな方法は見つからなかった。

ある日、自分と同じタイプのロボットが
大量生産されている場面に出くわしたデイビッドは絶望し、
「ママ、ごめんなさい...」と言って、海に身を投げる。

ロボットでありながら
人間以上に純粋で真っすぐな
母への愛がそこにはあった。

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松岡康 13年5月12日放送



母の心配

ヒッピー文化全盛の1973年。
15歳の少年ウィリアムは
ローリングストーン誌のライターに抜擢され、
人気バンドのツアーに同行する。

キャメロン・クロウ監督が
自らの少年時代をモデルした青春映画
「あの頃ペニー・レインと」。

厳格な母は、
毎日2回電話することを約束に、
ウィリアムを送りだすが、
テストの心配。単位の心配。進路の心配。
電話するたび小言を言う母に
うんざりしたウィリアムは、次第に連絡をしなくなる。

久しぶりにつながった電話。
涙を流すほど心配した母が
ウィリアムに伝えたのは、たった一言。
「ドラッグだけは、やっちゃダメ」

母が心配できることなんて
いつの時代も同じもの。

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礒部建多 13年5月12日放送


Sinsong
母の秘密

どんな幸せな家庭にも
秘密はきっとある。

パルム•ドール最高賞
マイク•リー監督の「秘密と嘘」。
ブレンダ•ブレッシン扮する、
母のシンシアもまた、秘密を抱えていた。

一緒に住む娘、ロクサンヌとは別に
生まれてすぐ、養子にだしてしまった黒人の娘、ホーテンスの存在。
偶然の再会から、2人は母娘としての絆を取り戻していく。

真実をロクサンヌに打ち明け、三人での生活を願うシンシア。
しかし、周りがそれを止める。
彼女は泣き崩れ、肩を震わせながらこう言う。

「いつになったら打ち明けられるの」

それは脚本のない、即興の台詞だからこそ表現出来た
これ以上ないほど生々しく、切ない母の愛。

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奥村広乃 13年5月12日放送



おおかみと母親

理想のお母さんを描く。

「おおかみこどもの雨と雪」の製作発表で
細田守監督は、そう語った。

彼が映画の中で描いた理想の母親は、
どんな辛い状況にあっても、
涙をぬぐい、笑顔をたやさない女性だった。
そして、夫と子どもたちが大好きだった。

これまで日本のアニメで、
母親が主人公になったものはほとんどない。

母親の映画を作ろうと思ったキッカケは、
友人夫婦に子どもが誕生し、
子どもたちを可愛がっている顔がたまらなく素敵で、
すばらしかったからだという。

子育ては、人生における
最大のエンタテインメント。

それが、映画というエンタテインメントで届けたかった
細田監督のメッセージなのだ。

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澁江俊一 13年4月20日放送



啄木の上京

どうせ貧乏するなら、
北海道まで来て貧乏しているよりは
東京で貧乏した方がいい。
東京だ。東京だ。

そう日記に記し、
月給が25円ほどの時代に
千三百円以上の借金をしていた石川啄木。
三度目の上京中、彼は一晩で八百五十五首もの短歌を書く。
それはやがて歌集「一握の砂」となる。

たくさんの人に迷惑をかけ
その素朴な歌とはかけ離れた
わずか26年の人生を破滅的に駆け抜けた。

 東京を夢見つづけた啄木はまた
 東京の美しい風景も多く歌っている。

 春の雪
 銀座の裏の三階の煉瓦造に
 やはらかに降る

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