澁江組・田中真輝

田中真輝 18年11月11日放送

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Photo by Josh Wilburne
漆黒の誘惑

秋と言えば食欲の秋。

食欲をそそる香り、と聞いてあなたが
思い浮かべるのは、どんな香りだろう。

焼き鳥屋や、焼きトウモロコシの屋台から
流れてくる、香ばしい匂い。
あの焦げたしょうゆの香りを思い浮かべた人も
多いのではないだろうか。

実はしょうゆの香りは非常に複雑。
ウイスキーやコーヒー、バナナやリンゴ、
バラなどの香り成分がなんと300種類も
含まれているらしい。

複雑で豊かな香りが立ち上る漆黒のスパイス。
今日も、その香りの誘惑に負けた人々が、
嬉しそうにのれんをくぐっていく。

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田中真輝 18年11月11日放送

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食欲色の季節

秋と言えば食欲の秋。

食欲と色との間に密接な関係があることを
ご存じだろうか。

赤や黄、橙などの暖色は人間の食欲を
促進する「食欲色」と呼ばれている。
また、赤の補色である緑も、差し色として
使うことで、強すぎる赤を抑えつつ、
お互いを引き立てることができる。

また、白や黒も日本人にとっては食欲を
そそる色。そう、それは白米と海苔の色。
一方、外国の人にとって、黒は食欲を損なう色。
カリフォルニアロールが海苔を内側に
巻き込んでいるのは、それが理由なのだ。

秋といえば紅葉。まさに食欲色に色づく季節。
食欲の秋と言われる理由はそのあたりにも
あるのかもしれない。

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田中真輝 18年11月11日放送

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erin & camera
カワイイ臓器

秋と言えば食欲の秋。

お腹いっぱい食べて満腹のはずなのに、デザートを
見ると食べたくなる。いわゆる「別腹」。
もちろん、胃袋が二つあるわけもなく、
この別腹、いったいどこにあるのか。
実は人間の食欲は、脳からの命令によって
コントロールされている。

大好きな食べ物を見ると、脳の視床下部から、
「オレキシン」というホルモンが分泌され、
このホルモンが、胃袋の蠕動運動を刺激すると…
あら不思議。さっきまで一杯だった胃袋に
新たなスペースが生まれる、という仕組み。

英語ではdessert stomachとも言う別腹だが、
つまり、デザートに限らず、肉でも魚でも
大好物が出てくれば、別腹は生まれるということ。

食べたい気持ちに反応して頑張ってくれるなんて、
胃袋って、なんだかカワイイ臓器だな、と思えてくる。

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田中真輝 18年11月11日放送

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銀猫 夏生
おいしい一瞬

秋と言えば食欲の秋。

コマーシャルやテレビ番組などで、食品を美味しそうに
見せる映像を「シズルカット」と呼ぶ。
もっとシズル感を強く、というのは、
もっと美味しそうに、という意味だ。

この「シズル」という言葉、
肉がジュージュー焼けて、肉汁がしたたり落ちている
様子を表す英語が由来だという。
「シズル感」は、食品のコマーシャルではとても重要な要素。
一瞬で美味しそう!と思わせられるかどうかに
制作スタッフは心血を注ぐ。

ふわっと立ち上る湯気、グラスの表面を流れ落ちる水滴、
シズル感溢れる瞬間をとらえるために、何時間も撮影を
続ける。あなたが美味しそう!と感じたその一瞬は、
膨大な撮影素材の中の、一番おいしいひとくちなのだ。

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田中真輝 18年9月16日放送

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Aaron Huber(Unsplash)
世紀の大発見

今日はメキシコの独立記念日。

かつて、かの地に繁栄した古代マヤ文明。
いまも各地に残る遺跡に、
その卓越した技術力を垣間見ることができる。

2016年に報じられた、15歳の少年が未発見の
マヤ文明の都市を発見した、というニュースを
ご存じだろうか。

少年が使ったのは、なんとネットの衛星写真。
その写真にはジャングルに浮かび上がる
正方形の印影が見て取れる。

すわ新発見か、と大騒ぎになったのだが、
実はこれ、マリファナの畑だった可能性が。

指摘したのはその地に詳しい文化人類学者。
その地に行ったこともある彼によると、
大切なことは実際にその場所に行って、
自分の目で見てみることだととか。

世紀の大発見は一日にしてならず、である。

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田中真輝 18年9月16日放送

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jorgeparedes
リングの上の正義

今日はメキシコの独立記念日。

メキシコを代表する文化のひとつが、
ルチャ・リブレ。
一言で言えば、メキシカンスタイルの
プロレスリングだ。

スペイン語で「自由の戦い」を意味する
この格闘技を、メキシコ人はこよなく愛している。

派手なマスクを被ったレスラーたちが、
リング上で華麗な技を披露し人々を魅了する。

支配層に対する民衆の反抗心をそこに見て取る
向きもあるが、その姿を目の当たりにすれば
そんな政治的な話はどうでも良くなる。

悪者が倒れ、ヒーローが勝利の雄叫びを上げる。
どれだけ世界が複雑になろうとも、このリングの
上だけには、まごうことなき正義があるのだ。

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田中真輝 18年9月16日放送

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テキーラをストレートで

今日はメキシコの独立記念日。

メキシコを代表する酒といえば、テキーラ。
アロエに似たリュウゼツランという植物から作る
蒸留酒だ。

テキーラのアルコール度数は、50度前後。
ショットグラスで一気に煽る飲み方も相まって、
一般的に「キツイお酒」という印象が強い。

しかし本当は、飲み方ひとつで芳醇な味わいが
楽しめる、美味しいお酒なのだ。

ブルーアガヴェ100%のテキーラを、軽く冷やして、
シャンパングラスで一口。琥珀色の豊かな味わいと
舌の上に広がる余韻。

しかし飲み過ぎは禁物。
原色の夢に飲み込まれる前に、グラスを置く。
それが美味しく飲むための一番のコツ。

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田中真輝 18年9月16日放送

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神の領域

今日はメキシコの独立記念日。

多くのダイバーが、死ぬまでに一度は行ってみたい、
と憧れる場所、それがメキシコにある、グラン・セノーテだ。

セノーテとは、ユカタン半島の石灰地層が雨によって
浸食された天然洞窟のこと。
ユカタン半島には大小合わせて5000ものセノーテが
存在するという。

その中でも最も美しいと言われるのが、グラン・セノーテ。
極めて透明度の高い水面は、差し込む太陽光の角度で
その色を深い緑からクリスタルブルーへと変えていく。
水中には白い鍾乳石が立ち並び、さながら古代神殿のようだ。

マヤ文明が栄えた時代、神官たちはこの場所を
神聖な地としてあがめたという。
音のない青の世界に浮かんでいると、その祈りが遠く
聞こえてくるような気がする。

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田中真輝 18年6月17日放送

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Susan NYC
ニューヨーク 街の通奏低音

今日はニューヨークに
自由の女神が贈られた日。

ニューヨークシティ。
その街角に立って、耳をすますと、
街の喧騒の最も奥に、途切れることのない
唸りのような音を感じることができるはずだ。

耳からというよりは、
全身の細胞を震わせる振動として伝わってくる。
一説よると、人の営みが生み出した音は、
地中深く打ち込まれた高層ビルの鉄骨を通じて
マンハッタン島の固い岩盤を振動させる。

その振動が共鳴しながら跳ね返され、
街全体に広がっていくのだと言う。
ニューヨークが常に高揚感に満ちているのは
この絶え間ないバイブレーションに人々の魂が
揺さぶられ続けているからなのかもしれない。

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田中真輝 18年6月17日放送

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image munky
マンハッタンヘンジ

今日はニューヨークに
自由の女神が贈られた日。

マンハッタンヘンジ
という現象をご存知だろうか。

マンハッタンには、
大きな通りが碁盤の目のように走っている。
年に二度、その東西の大通りに丁度沿うようにして、
太陽が沈む現象、それがマンハッタンヘンジだ。

その呼び名はもちろん、
春分、秋分の日の日没に沿うように
石が組まれたストーンヘンジに由来する。

かつて古代の人々は
ストーンヘンジに沈む太陽に向かって
神聖なるものへの謙虚な祈りを捧げた。
いま、世界の富と繁栄を象徴する場所に住む人々は
摩天楼を真っ赤に染めながら沈む太陽に、
何を思うのだろうか。

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