澁江組・田中真輝

田中真輝 17年11月19日放送

171119-01

Life is management.

1909年の今日は、
経済学者ピーター・ドラッカーが生まれた日。

オーストリアのウィーンに生まれたドラッカー。
4歳の夏、ウィーン皇太子が暗殺され、
世界が第1次世界大戦に向かって行く中で、
少年時代を過ごした彼は、20歳のときドイツで新聞記者に。

ヒトラーやゲッベルスにも何度もインタビューを行っている。
その後、ユダヤ人だった彼は、台頭するナチスを嫌って、
ウィーン、イギリスを経てアメリカへ。
経済アナリスト、大学教授や、企業のコンサルタントとして
活躍する一方、数々の名著を上梓し、マネジメントという
概念を生み出し体系化していった。

95歳で亡くなる直前まで、

 わたしの人生に引退という言葉はない、

と語り、働き続けたドラッカー。
彼の生き方そのものが、自らのマネジメント論の
集大成だったのかもしれない。

topへ

田中真輝 17年11月19日放送

171119-02

マネジメントとは何か

1909年の今日は、
経済学者ピーター・ドラッカーが生まれた日。

人類史上初めて
「マネジメント」という分野を体系化した彼は、
「マネジメントの父」とも呼ばれている。

彼の思想の根底にあるのは「人間の幸せ」。
多くの人々が組織で働く組織社会において、人の幸せは、
所属する組織のマネジメントのありかたに左右される。

そう考えた彼は、
豊かな知識と明晰な頭脳によって物事の
本質を突く著作を次々と上梓していく。

 寝床につくときに、
 翌朝起きることを楽しみにしている
 人間は幸福である

とは彼の言葉。
ドラッカーが考えるマネジメントとは、
企業のためのものである前に、
組織で働く人々の幸せのためにあるものなのだ。

topへ

田中真輝 17年11月19日放送

171119-07

創造者

1909年の今日は、
経済学者ピーター・ドラッカーが生まれた日。

彼は「マネジメント」という概念の発明者。
「民営化」や「知識労働者」、「目標管理」といった、
いまや経済論を語る上ではごく一般的な言葉も、
実は彼が作り出した造語である。

彼は自らを「社会生態学者」と名乗り、経済の仕組みを
つぶさに観察し、そこに見られる構造を言語化していった。

しかしそれは決して単なる観察ではない。
そこにある、名付けられていないものを名付けることは、
すなはち、新しい概念を作り出すことでもある。
ドラッカーは優れた観察者でありながら、
新しい世界の創造者であった、ともいえるのではないだろうか。

topへ

田中真輝 17年11月19日放送

171119-08

未来学者

1909年の今日は、
経済学者ピーター・ドラッカーが生まれた日。

彼は一流の経営学者と評される一方、
未来学者、フューチャリストと呼ばれることもあった。

未来についてのドラッカーの有名な言葉。

 未来を予知しようとすることは、夜中に田舎道をライトも
 つけずに走りながら、後ろの窓から外をみるようなものである。
 一番確実な未来予知の方法は、未来自体を作り出してしまうことである

大切なことは、
明日がどうなるのかと憂うのではなく、
今日、何をするかである。
そう思わせてくれる力強い言葉だと思う。

topへ

澁江俊一 17年9月10日放送

170910-04

扇の人間国宝

メートル・ダールをご存知だろうか。
それは日本の人間国宝にならって
策定されたフランス版人間国宝の名称である。

その一人、シルヴァン・ル・グエンは
最年少38歳でメートル・ダールに認定された扇作家。
ソフィア・コッポラ監督の映画
「マリー・アントワネット」に出てくる貴族の扇の
すべてをデザインしたのが、彼。

日本の折り紙に着想を得て、広げると
飛び出す絵本のように立体装飾が現れる扇など
その作品は遊び心に満ちている。
開いてみて驚く人々の表情をいたずらっぽく
眺めている、そんなシルヴァンの姿が目に浮かぶようだ。

topへ

田中真輝 17年9月10日放送

170910-06

傘の人間国宝

メートル・ダールをご存知だろうか。
それは日本の人間国宝にならって
策定されたフランス版人間国宝の名称である。

その一人、ミシェル・ウルトーは映画界や
王族から使命を受ける傘のデザイナー。
物心ついた頃から、傘は最高のおもちゃだったと
語る彼は、幼い頃から傘を分解しては
組み立て直すことに没頭していたという。

普通の人からすれば単なる雨を避ける道具、
しかし彼からすれば、それは情熱を傾ける
に足る美を宿した構造物に他ならない。

いま、あなたの目の前にあるものを、
改めて見つめてみてほしい。そこに美を
見いだせるかどうかは、あなた次第なのかもしれない。

topへ

田中真輝 17年9月10日放送

170910-07

折り布の人間国宝

メートル・ダールをご存知だろうか。
それは日本の人間国宝にならって
策定されたフランス版人間国宝の名称である。

その一人、ピエトロ・セミネリは
ファッションやインテリアの世界で
注目を集めている折り布作家。

折り紙を応用した全く新しい芸術表現を
生み出す彼の作品には、愛読する
ライプニッツやドゥルーズといった哲学者の
深い思索が反映されている。

複雑かつ精緻なデザインを見つめていると
その奥行きに引き込まれそうになるのは、
そこに哲学的な深淵が
隠されているからかもしれない。

topへ

田中真輝 17年9月10日放送

170910-08

エリオグラビュールの人間国宝

メートル・ダールをご存知だろうか。
それは日本の人間国宝にならって
策定されたフランス版人間国宝の名称である。

その一人、ファニー・ブーシェは
フランスで唯一のエリオグラビュール作家。

エリオグラビュールとは、ユネスコに無形文化財として
登録されている銅板と感光性のゼラチンを用いて印刷する技法。
しかし彼女はそれを単なる印刷技術としてではなく、
銅板そのものをアート作品として捉え、全く
新しい工芸美術を開拓、三次元の作品創作に
挑戦している。

二次元の表現手法を三次元へと進化させた
ファニー・ブーシェ。その眼差しは、
次元の壁を軽々と越えていく。

topへ

田中真輝 17年7月23日放送

170723-01
DonkeyHotey
SFとはなにか

SFとは何かを一言で表すのは困難だ。

「夏の扉」を描いた巨匠、ロバート・A・ハインラインは
「過去や現在の現実社会や、科学的手法の性質と重要性の
十分な知識に基づいた、可能な未来の出来事に関する
現実的な推測」と定義した。

「ロボット三原則」で有名な
アイザック・アシモフは、「価値観の転倒、つまり
センス・オブ・ワンダーがなければならない」と語った。

そして、現代のSF作家、ケン・リュウはこう語る。
「地球が、宇宙の中の小さな星であることを思い出すことで、
自分自身についてではなく人類について考えさせてくれること
こそがSFの力である」

グローバル化が進む現代。より大きなパースペクティブを
もたらす装置として、SFはこれまで以上に
求められているのかもしれない。

topへ

田中真輝 17年7月23日放送

170723-02

メッセージ

“Stories of Your Life and Others”
これは、今話題の映画「メッセージ」の原作タイトル。

著者は、中国系アメリカ人作家、テッド・チャン。
映画に登場する謎の宇宙船が
お菓子の「ばかうけ」に似ているということでも話題になった本作だが、
従来の派手な演出を駆使したSFにはない
静かで深い思想性が見る者を惹きつけてやまない。

一見、人間と宇宙人のファーストコンタクトを描いた
物語、と受け取られがちだが、その奥に潜むのは、
母親の愛情、人間とは何かという深い洞察である。

映画を見て興味を持たれた方はぜひ原作をご一読
頂きたい。映画では描ききれなかったものを
そこに見いだすはずだ。

時間の不条理さと
それを超える深い愛情こそが、この物語の真の
メッセージである。

topへ


login