渋谷三紀

渋谷三紀 20年9月12日放送


NISSANEV
ひと休みしませんか? 「ベンチ」

愛媛県の松山駅から、
水色のディーゼルカーに揺られて、1時間。
下灘駅に降り立ったあなたは、
ホームに佇む青いベンチを見つける。
座れば、見渡す限りの瀬戸内海。
昼は紺青、たそがれ時は茜色に
染まる海を独り占めできる。
ああ、なんて贅沢な。
やっぱり人生には、ひと休みの旅が必要だ。

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渋谷三紀 20年9月12日放送



ひと休みしませんか? 「一休さん」

あわてない、あわてない。ひとやすみ、ひとやすみ。
でおなじみの一休さん。
子どもの頃は何も思わなかったこのセリフ、
大人になるにつれ、深く胸に響くものがある。
ちなみに、一休という名前の由来は、
師匠に言ったこんな一言から。
人生は、この世からあの世へ行く間のちょっとした休み時間。
雨が降ろうが風が吹こうが大したことじゃありません。
こんな時代だからこそ、
心の中に一休さんを棲まわせておきたい。

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渋谷三紀 20年9月12日放送



ひと休みしませんか? 「宇多田ヒカル」

突然のことだった。
音楽以外のことをして成長したいと、
宇多田ヒカルが
活動休止を宣言したのは2010年のこと。
結婚、出産を経て2016年に活動再開。
人間活動を経て生み出された曲は
驚くほどに深みを増した。
続けるためには、休みも必要。
肉体で音楽を生むアーティストの、
それは至極真っ当な決断だった。

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渋谷三紀 20年9月12日放送



ひと休みしませんか? 「ローマの休日」

映画、ローマの休日。
イタリアのローマを訪問したアン王女は
滞在先を抜け出し、
街でひとりの新聞記者に出会う。
初めての自由を感じながら、
髪をショートカットにしたり、
歩きながらジェラートを食べたり、
ベスパに二人乗りしたり。
身分違いの二人の、たった一日だけの恋。
別れは切ないけれど、
忘れられない休日のある人生は、幸福だ。

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渋谷三紀 20年9月12日放送



ひと休みしませんか? 「熟成」

熟成肉がブームになるずっと前から、
優れた食品加工技術として
「熟成」は、私たちの暮らしの中にあった。
冷蔵庫のない時代、
人々は乾燥させたり、塩漬けにしたりして、食品を保存した。
それを取り出して食べるとき、
風味や歯ざわりが変化していることに気づき、
もっと美味しく、もっと長く保存しようと工夫した結果、
さまざまな熟成食品が生まれた。
それらは現在の食卓を豊かにしてくれている。
そういえば、アイデアも寝かせるといいらしい。
催促されたら言い返そう。
熟成させているのだと。

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渋谷三紀 20年8月15日放送


carlfbagge
「ひまわり」について

夏の花、ひまわりの名前は、
「日が廻る」の意味で、
太陽を追いかけて成長することから来ている。
ひまわりは光が当たらない後ろ側が早く成長するから、
若い茎や咲きはじめたばかりの花は
光の向きに合わせて曲がる。
そして完全に開いたひまわりの多くは
東を向いているのだそうだ。
そんな生物学的根拠はひとまずおいておくとして。
ひまわりを見ていると、
明るい方を向いて生きようと思う。

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渋谷三紀 20年8月15日放送



「ひまわり」とインディアン

ひまわりの原産地は北アメリカ。
インディアンは紀元前3000年頃から
ひまわりを栽培して様々な用途に使っていた。
粉末状に砕いてお菓子やおかゆやパンにしたり、
他の野菜と混ぜて食べたりするのはもちろん、
茎を乾燥させて家を建てる材料にしたり、
塗り薬にしたり、
ひまわり油を髪や肌に塗ったりもしていたらしい。
インディアンにとって、
ひまわりは欠かせない資源だった。

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渋谷三紀 20年8月15日放送



「ひまわり」とゴッホ

花瓶に活けられた
ひまわりを描いた画家のゴッホ。
新天地の南仏アルルに移り住み、
後からやって来る友のゴーギャンを待ちながら描かれた
その絵には、希望に満ちたゴッホ自身が溢れ出ている。
実は当時のヨーロッパで黄色は裏切りを意味していて、
決してポジティブな色ではなかった。
しかし、そこはゴッホ。
そんな常識、まぶしい絵の具で塗りつぶしてしまった。

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渋谷三紀 20年8月15日放送


Irina Callegher
「ひまわり」とロシア

暑い国で咲く花、
というイメージがあるけれど、
ひまわりはロシアの国花だ。
生産量で世界一になったこともある。
極寒の地で、なぜひまわりが広まったのか。
宗教上の理由で油脂食品が禁じられていたロシア。
禁止リストに載っていなかったひまわりの種を
人々は自然と食べるようになったらしい。
鑑賞するだけではない。
ひまわりは生きるために必要な花だった。

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渋谷三紀 20年8月15日放送



「ひまわり」とギリシア神話

ギリシア神話にこんな物語がある。
太陽神アポロンと恋に落ちた水の女神クリュティエ。
心変わりしてしまった彼を
クリュティエは遠くから見つめ続けた。
9日9晩たったとき、その足は地面に根付き、
一輪のひまわりになっていたという。
そんな話を聞けば、ひまわりを見る目も変わる。
悲しいほどの情熱で太陽を向き、咲いている。

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