薄組・熊埜御堂由香

熊埜御堂由香 18年1月28日放送

180128-02

鍋の話 池波正太郎の小鍋だて

鬼平犯科帳など時代小説の名作を数々残した作家の池波正太郎。
彼は美食家としても知られ、エッセイや小説には
「小鍋だて」という、ひとりかふたりで食する
小さな鍋料理が何度も紹介されている。
実際、江戸時代のひとも火鉢を囲み食べていたという。

池波は言う。

 江戸時代の男女も差し向かいで、小鍋だてをした。
 小鍋だてとは、実に粋な食べ物だ。

雑炊までたどり着かないかも?
と思うほど、具材が詰まった大きな鍋もいいけれど、
誰かとふたりで小さな鍋を囲むのも、最高にあったまる。

topへ

熊埜御堂由香 17年11月26日放送

171126-04

香りの話 土屋耕一さんのキャッチフレーズ

香りは、女の、キャッチフレーズ。

ある化粧品メーカーの広告に使われたフレーズだ。
言葉にしないで、香りで伝える。
すべての女性が、あらゆる時に、そうできたなら。
きっと世界から、男と女の喧嘩はなくなるだろう。

topへ

熊埜御堂由香 17年11月26日放送

171126-08
Mohmed Althani
香りの話 ジョー・マローン夫妻

日本でも知られるイギリスのフレグランスブランド
ジョー・マローン。
ブランドを設立した調香師ジョー・マローンさんは
カリスマ的な人気をほこる。

彼女のこだわりは、自分の手と嗅覚だけを信じて
機械を使わずに調香すること。
ブランドをここまで大きくしたのは、19歳で出会い、
経営を支えた夫の存在だ。
彼女は、夫の匂いを、どんなささやかな
ものからでも嗅ぎ分けられるという。

ブランドを代表する香りは、夫のために調香したものだ。
フレグランスとは香る人によって感じ方が違うもの。
きっとその香りの中には、
彼女にしか甘受できない夫の香りが含まれている。

topへ

熊埜御堂由香 17年10月29日放送

171029-01

写真のはなし マン・レイと被写体

写真家としても画家としても活躍したマン・レイが
こんな言葉を残している。

 私は絵に描きたいと思わないものを写真に撮る。
 それは、すでに存在しているものだ。

被写体がいて、写真家がいる。
一枚の写真の中には、
その関係性が焼き付けられている。

topへ

熊埜御堂由香 17年10月29日放送

171029-02

写真のはなし 操上和美のファインダー

 コップ一杯の水で写真が撮れたら、
 一流のカメラマンになれますよ。

81歳の現在も活躍を続ける写真家
操上和美はそう言う。

コップに水を入れて毎日観察していると、
水の存在や光との関係、持っている手の形など、
一つの哲学ができてくるという。

ファインダーを外した日常でも、ものをじっくり見る目。
それが写真家の武器なのかもしれない。

topへ

熊埜御堂由香 17年10月29日放送

171029-08
HAMACHI!
写真のはなし ハービー山口のシャッターチャンス

写真家、ハービー山口。
病気を患い、内向的だった彼が、
カメラという武器を手に入れたのが、中学2年生の時。

シャッターを切るたびに、自分が救われていく。
そんな感覚がやみつきになった。

彼の写真で特徴的なのは人の顔。
人の顔が世の中で一番美しく、ドラマチックだと語る山口は、
シャッターを切る、その瞬間を、彼らしい言葉で、こう表現する。

「君の…心のピントを僕に合わせて…!」

 ずっと、ずっと写真少年、少女のままでいい。
 そんなときめきがシャッターモーメント。

topへ

熊埜御堂 由香 2017年9月24日放送

gf01a201501290000

涙のはなし 涙の味わい

涙は、感情を持つ分泌物と言えるかもしれない。
なぜなら、その時の気分によって
成分が少しずつ違い味も変わるのだ。

悲しい時、嬉しい時は
副交感神経が優位になっていて甘い涙になり、
怒っている時、悔しい時は
交感神経が優位になり
ナトリウムなど電解質が分泌されて塩辛い涙になる。

そう、流れる涙は、よく知っている。
ひとのからだとこころが
しっかりとつながっていることを。

topへ

熊埜御堂由香 17年7月30日放送

170730-04
Mr.Sai
青のはなし 漠然とした色

古代、やまと言葉では、青という色は
漠然の漠という字をあてて漠色(あおいろ)と呼ばれ
青、緑、灰、黄色まであおと呼ばれていた。

「青春」や「青二才」という現代に残る青を使った言葉も
まだ未熟で漠然としている色という語源からきている。

青い空や、青い海は私たちを色んな気持ちにさせてくれる。
漠然な色とは、実は可能性がたくさんつまった自由な色だ。

topへ

熊埜御堂由香 17年6月25日放送

170625-08
Markus Spiske raumrot.com
日記のはなし 手帳大賞の言葉

思わず手帳にメモしたくなった身近なひとの名言を、
手帳メーカーの高橋書店が、毎年、公募している。
「手帳大賞」として選ばれた受賞作には、
なにげないのに、かけがえのない言葉が並ぶ。

 病室の夕陽より、やっぱり台所の朝陽ね。

重い病気から退院した妻が、台所に立ちしみじみ言ったひとこと。

 ネギにアイロンあてたのがニラだね。
 
小さな娘がスーパーで父に言った微笑ましいひとこと。

読んでいると、大事なひとの言葉をさっと書きとめる。
そんな日記のつけ方もあるのだと、気づかされる。

topへ

熊埜御堂由香 17年5月28日放送

170528-07

ダンスのはなし 20歳のコンドルズ

男たちが学ランを着て、ロックを大音量で流しながら踊る
ダンス集団「コンドルズ」。
その独特のスタイルは、ニューヨークタイムズでも絶賛され、
国内外で公演を続けている。

なぜ、コンテンポラリーダンスというだけで難しいとかわからないとか
言われてしまうんだろう。
主催の近藤良平は、ずっと疑問に思い続けてきた。

そんな近藤がコンテンポラリーダンスで成し遂げたいことは?
と問われてこう答えた。

 目指すは、楽しい悪ふざけ。

今年、20周年を迎えるコンドルズ。
永遠の少年たちは、すべての枠を飛び越えて踊り続ける。

topへ


login