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男の美学 穂村弘
私のような性質の人間は、
女性を自分の脳内で、勝手に女神にしてしまう。
そのためのきっかけは、至るところにある。
小心者で、妄想がたくましくて、
常に世界と、ちょっとだけずれている感じ。
歌人・穂村弘のエッセイは、
そんなエピソードに事欠かない。
自身が街で見つけた「運命の女神」を
つぎつぎと紹介してくれる様子も、じつに穂村らしい。
真夏に長袖を着ているひとをみるだけで、おっと思う。
本屋で同じ本に手を伸ばしたひとに、おっ。
電車のなかで立ったまま林檎を齧っていたひとに、おっ。
足首に包帯を巻いたウエイトレスに、おっ。(中略)
世界は女神に充ちている。
矢継ぎ早に「女神」を挙げたあとに、一転。
妙に冷静な、自己分析をはじめる。
結局のところ、自分は女性とのまともな関係を
求めてはいないのかもしれない。そう思う。
恋に恋する乙女のような、
男の美学が見え隠れ。
男の美学 カレル・チャペック
チェコの作家、カレル・チャペックは、
園芸を、土いじりを、こよなく愛していた。
しかし彼は、園芸マニアである以前に、やはり作家。
思いきり楽しみながらも、視線はどこか冷静。
いったい、何のために園芸家は
背中を持っているのか?
ときどき体を起こして、
「背中が痛い!」と
ため息をつくためとしか思われない。
そんなユーモアこそがチャペックの美学。
土を掘り、球根を埋め、水を遣る…
園芸家に課せられた果てしない労働を
笑いながら楽しんでいる。
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男の美学 開高健
開高健はいう。
諸君、男のファッションの究極は、紺なんだ。
いい紺を選びたまえ。
芥川賞作家、戦場のルポライター、美食の釣り師
人並み外れた経験を持つ人のコトバは説得力がある。
開高健が、いわゆる「男のファッション」に
興味を持ちはじめたのは
57歳になってからだというが
男の美学は、時間をかけて熟成されるのかもしれない。