涙のはなし 殷富門院大輔の涙
見せばやな 雄島(をじま)の蜑(あま)の 袖だにも
濡れにぞ濡れし 色は変はらず
百人一首の中に、こんな恋の和歌がある。
詠み人は、平安時代末期の女流歌人、
殷富門院大輔(いんぷもんいんのたいふ)。
海女の袖でさえ、
どれほど波しぶきで濡れても
色が変わらないというのに。
あなたのつれなさを嘆く私の涙は
血の涙となり、
袖の色まで変わってしまった。
涙で袖を濡らすだけなら、
まだまだカワイイものよ。
平安時代の恋愛の先輩の、
そんな声が聞こえてきそうな一首である。