薄組・小野麻利江

小野麻利江 16年12月25日放送

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Dan Lacey
ことばの贈りもの マザー・テレサ

もしも今日、あなたの周りに
不機嫌そうな顔をした人が
いるとしたら。

マザー・テレサのこんな言葉を
贈ってみてはどうでしょう。

 平和は 微笑みから始まる。

もしもそれでも、
不機嫌そうな顔が直らなかったら。

微笑みから始まる平和を、
あなたからその人に
贈ってみてください。

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小野麻利江 16年12月25日放送

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ことばの贈りもの 横浜市営バスの運転手さん

昨年、横浜市を走るバスの車内で
赤ちゃんが突如ぐずりはじめた。

母親が懸命にあやしながら、
周りに頭を下げつづけていると、
こんな車内アナウンスが流れてきた。

 お母さん大丈夫ですよ、
 赤ちゃんですから気になさらないでください。
 きっと眠いか、お腹すいているか、
 おむつが気持ち悪いか、
 暑いかといったところでしょうか。

運転手のその声かけで、
車内の空気は一瞬にしてなごんだという。

一人の母親を孤立させないための、
ことばの贈りもの。
ニュースにも取り上げられ、
たくさんの人の心を温めた。

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小野麻利江 16年11月27日放送

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angelocesare 
のりものの話 サントーリオ・サントーリオと体重計

現代人、とくに女性にとって
いちばん怖い「のりもの」。
もしかするとそれは、体重計かもしれないが、
中世イタリアの医師 サントーリオ・サントーリオは
一日中、体重計にのって生活をしたという。

食事から排泄まで。
大きなハカリ型の体重計の上ですべて行い、
結果、栄養分が身体の中で
代謝されていることを証明した。

「測るだけダイエット」が定着した現代だが、
サントーリオにあやかった「測りっぱなしダイエット」、
試した場合、効果のほどは如何ほどだろうか。

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小野麻利江 16年11月27日放送

161127-08
Pastel
のりものの話  松任谷由実と「かんらん車」

遊園地のランドマークとして
愛される乗り物、観覧車。
その反面、乗る人のいない観覧車は
物悲しさのメタファーとして
強い力を持っている。

中でも松任谷由実の「かんらん車」は、
失恋した主人公の気持ちを
人もまばらな遊園地の情景に託した名曲だ。

 私だけ 冬空の旅人
 地上に戻る頃 世界が止まる

別れの虚しささえ、美しく縁取る(ふちどる)。
観覧車の魅力は、奥深い。

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小野麻利江 16年10月30日放送

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お風呂のはなし ベルツ博士が愛した草津温泉

中世から湯治場として名を馳せる、
群馬県の草津温泉。
明治時代、この温泉に取りつかれた
ドイツ人がいた。

エルヴィン・フォン・ベルツ博士。
明治政府に招かれ、現在の東大医学部で医学を教えていたが、
草津を初めて訪れたわずか2年後、
現地に約6000坪の土地と温泉を購入。
温泉保養地づくりを目指すとともに、
伝統的な湯治療法「時間湯(じかんゆ)」を研究。
論文にまとめ、優れた効能を世界に紹介した。

ベルツ博士は草津温泉を、こう評している。

 草津には素晴らしい温泉以外に、
 日本で最上の山の空気と、
 理想的な飲料水がある。
 もしこんな土地がヨーロッパにあったら、
 カルロヴィ・ヴァリ温泉よりも
 にぎわうことだろう。

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小野麻利江 16年10月30日放送

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お風呂のはなし イザベラ・バードが視た湯元温泉

19世紀イギリスの冒険家、イザベラ・バード。
彼女の旅行記の中には、詳細な数値が数多く登場する。
科学的な目で見て、伝える。
それがバードの信条の一つだった。

1878年5月、日本を旅しはじめたバード。
6月には奥日光の「湯元温泉」にたどり着く。
初めて見る日本の湯治場に驚いたバードは、
その様子を、こう記している。

 この湯の温度は華氏130度であるが、
 湯が村まで蓋のない木の樋(とい)に沿ってゆくと、
 ただの84度となる。
 湯元は四千フィート以上の高さにあり、非常に寒い。

 ところどころに広い板が渡してあり、
 リューマチに悩む人々は、何時間もその上に横になり、
 硫黄の蒸気を身体に当てる。

バードの真骨頂とも言うべき、精緻な描写。
明治初期の温泉街の活況は、
当時のイギリス人読者のみならず、
現代の私たちにとっても、貴重な資料となっている。

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小野麻利江 16年9月25日放送

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服のはなし 黒柳徹子の「徹子の部屋」の衣装

放送10,000回を超えるトーク番組『徹子の部屋』。
黒柳徹子はそこで、同じ衣装を2度着たことがない。

洋服をお客様に合わせることで、より心を開いていただき、
良いお話を伺えるのではないか。
そんな思いから、用意もすべて自前だという。

1度のゲストのために、1度しか着られない衣装。
それらは1年ごとにオークションに出され、
得られた収入は、親と暮らせない子どもたちを
支援する団体に寄付されている。

 だから、もう1度着たいなあと思っても、
 着ることはありません。
 私の衣装が子どもたちのお役に立つことの
 ほうがうれしいから。

自分のためだけではなく、人のためを想う服。
黒柳は今日も、そんな服をまとい続ける。

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小野麻利江 16年7月31日放送

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Corn Farmer
記録のはなし イチロー

2016年6月15日。
サンディエゴ・パドレス戦。
9回2アウト。
イチローは日米通算4257本目となるヒットをはなち、
「プロ野球における通算最多安打数」の
ギネス世界記録を達成した。

マーリンズに移籍した昨シーズンは、
メジャー移籍後最低の成績に終わったが、
今季は、課題となっていた
「強い当たり」のヒットの割合が格段に上がり、
40歳を過ぎても復調する姿に、
専門家さえも驚きを隠せない。

 常に人に笑われてきた その悔しい歴史が僕にはある

パドレス戦後に開かれた会見で、
そんな想いを口にしたイチロー。
常にクールな彼のその目には、涙が浮かんでいた。

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小野麻利江 16年6月26日放送

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papadont
童謡のはなし たなばたさま

 ささの葉さらさら
 のきばにゆれる
 お星さまきらきら
 きんぎん砂子(すなご)

七夕に欠かせない童謡、「たなばたさま」。

2番までしかない短い唄だが、
歌詞の中には、数々の色彩がつめこまれている。

「きんぎん砂子」の「砂子」は
金箔や銀箔を細かい粉にしたもので、
天の川の細かい星屑のたとえ。

「五色」は、短冊の色の多さを表したものだが、
七夕の発祥・中国の五行説に由来する、
自然現象を抽象化した、五つの色とも考えられる。

 五しきのたんざく
 わたしがかいた
 お星さまきらきら
 空からみてる

梅雨の灰色の曇り空が続いても、
七夕は、どことなく心はずむもの。
さあ、7月はもうすぐ。

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小野麻利江 16年6月26日放送

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suneko
童謡のはなし おぼろ月夜の舞台

 菜の花畠(はなばたけ)に 入日薄れ
 見渡す山の端 霞深し
 春風そよ吹く 空を見れば
 夕月かかりて 匂い淡し

童謡「おぼろ月夜」。
作詞は、国文学者で作詞家の高野辰之。

こののどかな春の情景は、
高野の生まれ故郷、
長野県下水内郡豊田村が舞台とも、
明治四十二年ごろから居を構えていた、
東京・代々木近くの、
アブラナ畑とも言われている。

どちらにせよ、
明治から大正にかけての日本では、
菜の花畑は、全国各地で見られる情景だった。
今もこの曲が、多くの人々の郷愁をかきたてるのは、
そのせいかもしれない。

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