お茶のはなし 東海道五十三次と街道の茶屋
江戸時代、宿場町を中心に
「水茶屋」などの名で、数多くの「茶屋」が営まれていた。
そんな茶屋の様子を描いた代表的なものといえば、
歌川広重の浮世絵、『東海道五十三次』。
広重は生涯のあいだに何度も五十三次シリーズを発表しているが、
天保年間に保永堂から出版された
全55図からなる最初のシリーズが、今でも最も人気が高い。
「こめや」という看板がかかる茶屋の軒下に
お伊勢参りの御一行の名札がかかる「戸塚 元町別道」。
「名物とろろ汁」の看板の隣で、客が椀をすする、
「丸子(まりこ)の名物茶屋」。
簡素な葦簀(よしず)掛けの小屋で飛脚が休息をとる
「袋井 出茶屋(でぢゃや)の図」。
鈴鹿川をへだて、岩根山をのぞむ見晴らしの良い峠に建つ、
「阪之下」の茶屋。
京都まであと少し、琵琶湖の南・大津宿の
有名な泉を持つ茶屋を描いた「大津 走井茶屋(はしりいちゃみせ)」。
500キロ近くにおよぶ東海道。普通の旅人は1日40キロずつ、
2週間ほどかけて歩いたという。
一服の茶が、旅の疲れをどれだけ癒したことだろう。