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三國菜恵 11年8月14日放送



前を向く言葉/仁木ふみ子

1964年。
戦争がおわり、少し落ち着きをとりもどした日本では
教育に対する新しい試みがはじまっていた。

大分県立別府青山高校。
受験を目的とする進学校で、しかも女子校だった。

何もかもが真新しいこの学校に赴任してきたのが、
教員・仁木ふみ子。

スターターメンバーとして
一から学校を「つくる」権利をあたえられた彼女は、
これから入ってくる一期生に向けて、
入学式のしおりに、こんな言葉を添えた。

教えるとは希望を語ること、
学ぶとは誠実を胸にきざむこと

学校の「これから」を
たしかに指し示している言葉だった。

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前を向く言葉/タモリ

前を向いて、明るくいこう。
それはとても正しいけれど、
そう思ってもいられないときだって、人間にはある。

誰もが知っている名司会者・タモリも
そう思うところがあったのか、こんな言葉を残している。

前を向いて歩いてたって、つまんないよ。
後ろを振り返ったほうが「あれが楽しかった」って楽しいよ。

要するに、その人らしいことが大事なのかもしれない。



前を向く言葉/チャールズ

ノーベル賞、受賞数学者
ジョン・ナッシュ。
彼の名言にこんな言葉がある。

 数学は正確さにかけては芸術だ

しかし、人を好きになる気持ちは数学とは無縁のものだった。
彼は自分の愛する女性が本当に自分を好きかどうか
確かめるのがこわくて思い悩んだ。

そんな彼に、友人・チャールズは
こんな言葉をかける。

人生に確かなことなんてない、
それだけが確かなことなんだ。

友人のその言葉には
彼が信じるに足りる確からしさがあったらしい。
自分の言葉で彼女の気持ちを確かめた彼は、ぶじ、結婚。

数字はもともと確かなものだが
人を信じることは
自分のなかに確かなものをつくることだと思う。

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三國菜恵 11年7月17日放送



ヨーロッパの芸術家/フジ子・ヘミング

日本とヨーロッパを股にかけるピアニスト、フジ子・ヘミング。
彼女は、実は絵を描くのも得意。
しかも、その楽しみ方がとてもユニークなのだ。

フジ子は、いちど描いた絵をふたたび取り出し、手を加える。
チョウチョや花を描き足したり、
女の人のスカートを、ちがう色に塗りかえたり。

だから彼女をおとずれた人は、時折ふしぎな顔をする。
いちど見たことのある絵なのに、どこか前とちがうから。

彼女は、いたずらげにこう語ってみせる。

ピアノも絵も今に満足しないで、
もっと上をめざすのが、フジコ流よ。

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三國菜恵 11年7月17日放送



ヨーロッパの芸術家/ランドフスカ

音楽のなかで
つい、もう一回、もう一回と聴きたくなる曲に出会ったこと、ありませんか。

ポーランドうまれのチェンバロ奏者、ランドフスカにも
そんな曲があった。彼女の場合は、バッハ。
その魔力について、こう語っている。

このもう一度と願わせる何かは、
われわれに永遠なるものを
ほのかに感知させているのである。

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三國菜恵 11年7月17日放送



ヨーロッパにゆかりのある芸術家/ロートレック

この人は自分と同じだ。
そう思える人に出会えたとき、
人の運命は大きく動くのではないかと思う。

フランスの画家、ロートレックも
ある日、運命的な出会いを果たす。
モンマルトルのキャバレー、「ムーラン・ルージュ」で。

お金持ちの家に生まれた彼とは
無縁の世界を生きているように見える、娼婦や踊り子たち。
そんな彼女たちと、彼はなぜか仲良くなった。

彼女たちは、人の肩書や見た目を気にしない。
小人のような背丈のロートレックにとって、
それははじめてのことだった。

やっとぼくは、ぼくと同じ背丈の娘たちを見つけたよ。

彼女たちを描いた、たくさんのポスターは
やがてロートレックの代表作となる。

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日本代表、三國菜恵。出発します。

Vision執筆陣のひとりである
コピーライターの三國菜恵さんがカンヌへ旅立ちます。

各国を代表する若手クリエーターたちが
広告アイディアを競い合う「ヤングカンヌ」の日本代表として。

はりきって
がんばって
世界各国の代表たちをギャフンと言わせてほしい。
日本の若者はすごいんだぞって
ところを見せてきてほしい。

なんてことを言うと
すぐにプレッシャーを感じてしまう
三國さんであるからして!
ここはもう
ほんと
楽しんできてほしいと願うばかりなのであります。

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三國菜恵 11年6月12日放送



あの人の師/井上雄彦

漫画家・井上雄彦。
彼の師匠は、あの『シティーハンター』の作者・北条司だった。

20年もの間〆切を守り、
机の上で肉体と精神をつかい果たす姿をずっと見てきた。

『スラムダンク』がヒットして
師匠にほめられたときのことを、彼はこう語る。

職人に誉められるなんて、とても嬉しかった。



あの人の師/角田光代

小説家、角田光代(かくた・みつよ)には
ちょっと変わった師匠がいる。
それは、プロボクサーの輪島功一(わじま・こういち)さん。

角田さんは、大失恋をきっかけにスポーツジムに入門。
それがたまたま、輪島さんのジムだった。

輪島さんは、
毎日、練習生たちの靴をきれいに並べる。
毎回、気持ちの良いあいさつを返してくれる。

角田さんはその行動に、ひそかに尊敬の念を寄せていた。

彼女が輪島師匠からもらったことばに、こんなものがあるという。

おんなじことを嫌がらずに繰り返しやった人と、やらなかった人とでは、
得られるものがぜんぜん違うんだ。

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三國菜恵 11年6月12日放送



あの人の師/戸田奈津子

職業のなかにはいくつか、
「どうやったらなれるのかわからないもの」がある。

戸田奈津子(とだ・なつこ)さんも悩んでいた。
映画字幕の翻訳家になりたいけれど、なり方がわからなかった。
そこで彼女は、映画のエンドロールの中に、師匠をさがすことにした。

字幕翻訳家、清水俊二(しみず・しゅんじ)。
生涯で2000本もの映画を翻訳した、重鎮だった。

清水さんは戸田さんに、簡単には仕事をくれなかった。
それどころか、いつもこう聞いた。

まだ、あきらめないの?

そのたびに戸田さんは言った。「あきらめません」。

いま、映画のエンドロールに、彼女の名前を見ない日はない。
それは、師匠が鍛えてくれたねばり強さの証かもしれない。

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三國菜恵 11年5月22日放送



生き物のはなし/いとうせいこう

ベランダで、花を育てている。
けれども、うまくいかず
ときには、枯らしてしまうこともある。

クリエイター・いとうせいこうは
そんな失敗を繰り返すひとり。

けれども彼はその失敗を、とても大事に考えている。

園芸は植物を支配することではないのだ。
むしろそれが出来ないことを教えてくれるのである。



生き物のはなし/高村光太郎

作家としてはもちろん、
彫刻家としても数多くの作品を残した
高村光太郎。

彼は、ある生き物のことが
特別好きだった。

それは、セミ。

彫刻のモチーフとして
すばらしい姿をしている
と考えていたようで、

セミを見つけにいくことを
「モデル漁り」、なんて言い方をしていた。

加えて、やかましく聞こえがちなあの声も
高村にとっては愛らしく聞こえていたらしい。

あの一心不乱な恋のよびかけには
同情せずにいられない。

まっすぐなセミの声は、
まっすぐな心をもつ高村に、心地よく聞こえていたようだ。

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三國菜恵 11年5月22日放送



生き物のはなし/野毛山動物園の飼育員たち

横浜市にある野毛山動物園には
いっぷう変わった場所がある。
その名も、「しろくまの家」。

名前のとおり
しろくまが暮らしているのか、と思いきや
そこには何の姿もない。

そして入口には、こんな文字。

みなさんもホッキョクグマになったつもりで、
また飼育係になったつもりで探検してみましょう。

そう、ここはかつてしろくまが暮らしていた家。

飼育員さんたちはそこをお客さんに開放して、
自由に見てもらえるようにしたのだ。

しろくまがいたのと同じ場所に立って
景色を眺める人もいれば、写真を撮り合う人もいる。
それはとっても明るい光景。

飼育員さんたちのはからいで
「しろくまの家」は、今も変わらず
お客さんのいい顔であふれている。

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