こどもにとって、
父親の仕事は気になるもの。
チャップリンのこどもたちも、
パパの映画に興味があった。
そんなことを知ってか、
チャップリンは自分の映画の上映会を
よく開いてくれたという。
それも、本人による解説つきで。
「さあきました。ちっぽけ放浪者です」
「さてまいりましたが、足に包帯をしたでっかい野郎といっしょです」
それは、映画の説明と言うより、独演会。
こどもたちはみんな、声をあげて笑った。
上映会が終わると、チャップリンはこうたずねる。
ほんとうにおもしろかったかい?
子供たちを喜ばすことが世界中で一番むずかしいんだよ。
チャップリンにとって我が子は、
いちばん反応が気になるお客さんだった。
チャップリンが
いちばん信頼していたといわれる付き人は、実は日本人。
名前は、高野虎市(こうの・とらいち)さん。
彼の気遣いは、とてもきめこまやか。
たとえば、チャップリンのポケットに
いつも50ドルを入れておく。
それは、
ボーイさんにチップをあげ忘れることがないように
という配慮から。
気まぐれなチャップリンは、
お金を持たないまま
つい外出してしまう癖があった。
なので、
チャップリンがけちだといわれているのは
まったくの誤解なのですと、高野さんは語る。
いいところも、だめなところも。
ちゃんと「わかって」くれてる人だったから
チャップリンは秘書に選んだのかもしれない。