Cross Duck
さようなら 山崎豊子
私の作品は、取材が命。
そう語ったのは、今年の9月に亡くなった、
小説家の山崎豊子さんだ。
取材中、相手の話に引き込まれて一緒に涙を流す。
反対に、失礼な態度をとられたときには、
捨て台詞を吐いて席を立ったそうだ。
「万年筆の先から血が滴る思いで書いている」
作者の魂が込められた人間ドラマは、
何年経っても色あせることなく、
読む人を山崎ワールドへ引きずり込んでいく。
Cross Duck
さようなら 山崎豊子
私の作品は、取材が命。
そう語ったのは、今年の9月に亡くなった、
小説家の山崎豊子さんだ。
取材中、相手の話に引き込まれて一緒に涙を流す。
反対に、失礼な態度をとられたときには、
捨て台詞を吐いて席を立ったそうだ。
「万年筆の先から血が滴る思いで書いている」
作者の魂が込められた人間ドラマは、
何年経っても色あせることなく、
読む人を山崎ワールドへ引きずり込んでいく。
nicolasnova
さようなら 山内溥
任天堂の元社長、山内溥(やまうちひろし)さんが亡くなったのは、
今年の9月のことだ。
花札やトランプを作っていた小さな会社は、
ファミリーコンピュータという空前の大ヒットで、
一躍、世界の一流企業にのし上がった。
しかし、その前に紆余曲折があったことはあまり知られていない。
タクシー会社、食品会社、事務機器、
育児関連用具、ラブホテルの経営まで手を出したが、
ことごとく失敗している。
「世間はよく成功者を手放しで尊敬してしまうが、
成功者の言葉ならなんでもかんでも金科玉条のように
あがめるのはおかしい」
成功と失敗。両方を知る男の言葉は、やけに説得力がある。
節目のとき 前田智徳
広島カープの背番号1。
前田智徳が、今シーズンでユニフォームを脱いだ。
その昔、イチローは言った。
「本当の天才は、前田さんです」
天才という安易な言葉に異論を唱える者もいる。
そのくらいバットを振り、練習に打ち込んだ。
しかし前田の敵は、いつも怪我だった。
引退セレモニーのとき、彼はマイクの前で
大きく息を吐いた。
これで、やっと怪我から解放される。
そんな吐息のようにも見えた。
EO Kenny
節目のとき 桧山進次郎
代打の神様、という言葉がある。
ひとりの神様が引退すると、
その役割は、次の選手に託される。
まるで名選手の持ち回りのように。
阪神タイガースの背番号24。
桧山進次郎は、代打の神様という役回りを終え
今シーズンでバットを置いた。
引退セレモニーでは、こんな言葉を残した。
「本当に僕は幸せものでした」
代打の神様は、ファンも自分も、幸せにできる。
節目のとき 山﨑武司
一度は引退を考えた男が、
見事に復活し、そして羽を休めるときを迎えた。
中日ドラゴンズの背番号7。
山﨑武司は、豪快なバッティングと
屈託のない笑顔が誰よりも似合う選手だった。
これは、引退セレモニーのときの言葉。
「今日試合に出て、諦めがつきました。
ユニフォームを脱ぐ決心が今さっき、つきました」
最後の最後まで、
選手人生に未練を残す正直さが、
彼という人、そのものなんだろう。
節目のとき 宮本慎也
あるベテラン選手が引退会見で言った言葉に
多くのファンが驚かされた。
「楽しんでプレーしたことは、一度もない」
東京ヤクルトスワローズの背番号6。
宮本慎也は、今シーズンで選手生活を終えた。
不思議な縁に導かれた19年だった。
人生観を変えた、野村監督との出会い。
そして、現在の小川監督は、
自分が入団するとき、スカウトをしていた人物だ。
神宮球場での最終戦、宮本の最終打席。
あわやホームランという打球が舞い上がった。
スタンドにあと一歩届かず捕球されると、
彼はようやく、晴れやかな、楽しそうな笑顔を見せた。
あの人の息子 菱川師房
父親は、偉大な芸術家。
その背中を見続けていた息子が、
同じ道を目指す。
そんな光景は、江戸時代にも
もちろんあった。
浮世絵の祖、菱川師宣の息子、菱川師房。
小さいころから浮世絵を教わり、
作風は、師宣の技法を忠実に再現した。
しかし、父と同じような作品は残せても、
父を超えることにはならない。
やがて師房は、筆を捨て、染物屋に転職したという。
親の七光りとは言うけれど、その輝きを維持することは難しい。
あの人の娘 近藤たま
新選組局長、近藤勇は、子煩悩な父親だったそうだ。
一人娘の誕生日に、京都西陣織の帯を贈っている。
その娘の名前を近藤たま、という。
戊辰戦争で父親を失ったとき、たまは6歳。
やがて叔父の家に引き取られ、息子の許嫁となる。
そして長男を出産したあと、25歳の若さでこの世を去ってしまう。
このとき生まれた男の子も日露戦争で命を落とし
近藤勇の直系は途絶えることになる。
戦争はいつも、人の運命を残酷にねじ曲げていく。
あの人の息子 夏目純一
夏目漱石の息子、夏目純一は
小説家を目指さず、音楽の世界へ飛び込んだ。
なにしろ、父親の印税は山ほどある。
ヨーロッパでヴァイオリン学びながら、
休日は貴族と豪遊して過ごしたそうだ。
その後、ヴァイオリニストとして東京交響楽団に参加。
ドイツ語やイタリア語にも堪能で、
通訳としても活躍した。
お金持ちの道楽かと思いきや、
しっかりと自分の居場所を見つけている。
あの人の息子 トーマス・エジソン・アルヴァ・ジュニア
目の前に、絶対に越えられない壁があるとして。
その壁が自分の父親ならば、
息子はどう立ち向かえばいいのだろうか。
たとえばトーマス・エジソンの次男、アルヴァ・ジュニアの人生。
発明王の息子として
周りから甘い言葉を囁かれ、
科学会社を設立する。
詐欺まがいの手口で資金を集めていたところ、
エジソンに告発され、会社は倒産。
そのかわりに、週200万円相当の仕送りをもらう契約を結んだそうだ。
親の甘茶が毒となる。
そもそも息子に、壁なんて見えなかったのかもしれない。
Copyright ©2009 Vision All Rights Reserved.