名探偵と都市 メグレとパリ
パリを愛した名探偵、メグレ警視。
彼の推理は極めて地味だ。
鮮やかなトリックの種明かしも、
あっと驚くアリバイ崩しもない。
証拠より心理を重視した緻密な論理の積み重ね。
その興味は誰が犯人かより、
なぜ罪を犯してしまったのかにある。
パリの街を歩きながら、
彼は犯人の皮膚の下に入り込み、
苦しんだ時間を共有しようとする。
運命の修理人
として人生の不幸な偶然で
道を踏み外した人を正しく導きたいと願うメグレ。
彼が向き合うのは犯罪者ではなく、
罪を犯さざるを得ない人間の弱さだった。