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佐藤理人 15年4月5日放送

150405-03

作家たちの副業③ 「アシモフ」

SF作家アイザック・アシモフの副業は
お菓子屋さんだった。

父親が経営する何軒もの店を
彼は大人になるまで手伝った。
営業時間は朝の6時から夜中の1時まで。
休みはない。

 私は今も、これからも、
 ずっとあの菓子屋にいる

幼い頃、体に刷り込まれた一生懸命働く歓びが、
作家になった後も彼を突き動かし続けた。

なぜ休むより働く方が好きなのか。
それはサイエンスでは解けない謎だった。

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佐藤理人 15年4月5日放送

150405-04

作家たちの副業④「ダーウィン」

生物学者チャールズ・ダーウィンの副業は
地質学者だった。

ヒトはサルから進化した。
そんな話が19世紀のイギリスで
受け入れられるはずがない。

学会から追放されるだけでなく、
教会から断罪されるかもしれない。

だから彼は身分を偽った。
地質学に関する本を何冊も書き、
科学界で信用を高めることに努めた。

1859年、ついに「種の起原」を出版。

 最も強い者が生き延びるのではなく、
 最も賢い者が生き延びるのでもない。
 唯一生き残るのは、変化できる者である。

「進化論」は、初めは激しく批判されたが、
次第に受け入れられ始めた。

世の中が進化するまでに、
彼は30年近く待たなければならなかった。

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佐藤理人 15年4月5日放送

150405-05

作家たちの副業⑤ 「フォークナー」

作家ウィリアム・フォークナーの副業は
発電所の管理人だった。

昼起きてから夜勤に向かうまでの数時間を、
若きフォークナーは有効に使った。
そうして生まれたのが出世作「響きと怒り」。

1949年、ノーベル文学賞をもらってからも、
彼の創作意欲はいささかも衰えることはなかった。

 私は魂に動かされたときに書く。
 そして魂は毎日、私を動かす。

書かずにはいられない。その性こそが才能。

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佐藤理人 15年4月5日放送

150405-06

作家たちの副業⑥ 「カフカ」

作家フランツ・カフカの副業は公務員だった。

仕事はラクで短く、
実家暮らしで身の回りの心配もない。
しかし彼は不満だった。

 時間は足らず、職場は不快で、
 アパートはうるさい。

貴重な執筆時間であるはずの夜も、
明日彼女から手紙が来るだろうか、
来るとしたら何時だろうか、
そんなことばかり考えていた。

不眠症のせいで常に不安だったカフカ。
職場にある大きな台車が、彼には、
自分のために作られた棺桶に思えた。

どこへも行けない。何にもなれない。

傑作「変身」は、そんな絶望が生んだ、
やぶれかぶれの願望だったのだろうか。

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佐藤理人 15年4月5日放送

150405-07

作家たちの副業⑦ 「クリスティ」

ミステリ作家アガサ・クリスティの副業は主婦だった。

いや、作家こそが副業だったと言うべきか。
書類の職業欄に彼女はいつも「主婦」と書いた。
作家としての自覚どころか、自分の机さえなかった。

だから、取材があるといつも困った。
記者は必ず机の前で写真を撮りたがるからだ。

一体いつどこで書いているのか。
それが彼女の最大のミステリ。

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佐藤理人 15年4月5日放送

150405-08

作作家たちの副業⑧ 「トロロープ」

作家アンソニー・トロロープの副業は官僚だった。

郵政省で働くかたわら、
19世紀のイギリスで最も成功した作家となった。

 執筆に適した時間は一日3時間

集中力を高めるために
15分できっかり250語書く訓練をした彼は、
自分より時間に厳しい下男が
毎朝5時半に淹れるコーヒーを飲みながら、
出勤前にその日のノルマを書き終えた。

この並外れた勤勉さは
人気作家だった母親の影響である。

彼の母、フランシス・トロロープが
小説を書きはじめたのは53歳。
6人の子供と病気の夫を養うために
お金が必要だったというのがその理由。

彼女は毎朝4時に机の前に座り、
執筆を終えてから朝食の支度をしたという。

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佐藤理人 15年3月22日放送

150322-01

創造のジンクス①「ウルフの裸」

トマス・ウルフは焦っていた。
初の長編小説「天使よ故郷を見よ」を
書いた情熱がどうしても取り戻せない。

その夜もまた彼は
インスピレーションを得られぬまま
服を脱ぎベッドへ向かった。
しかし裸で窓の前に立った瞬間、
書くことへの情熱がみるみる溢れてきた。

以来、創作で行き詰まるたび、
彼はこの方法で執筆意欲を高めた。

背が2mあり、冷蔵庫を机代わりにするほど
身体的に発達していたウルフ。
自らの肉体美を愛でることで、
内なる野生を呼び覚ましていたのだろうか。

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佐藤理人 15年3月22日放送

150322-02

創造のジンクス②「ベートーヴェンの手洗い」

ベートーヴェンは一日に何度も手を洗った。

洗面台の前に立ち、大声で音階を唱え、
鼻歌を歌いながら水差しで手に水をかけた。

それから目をギョロギョロさせて部屋中を歩き回り、
何かメモしたかと思うと再び洗面台の前へ。

手洗いは彼に取って大切な瞑想の時間だった。
しかし大量の水漏れに怒った大家が
しょっちゅう怒鳴り込んで来た。

二人が罵り合う間に一体どれだけの名曲が
床に吸い込まれてしまったことだろう。

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佐藤理人 15年3月22日放送

150322-03

創造のジンクス③「ハイスミスのカタツムリ」

「太陽がいっぱい」の作者
パトリシア・ハイスミスの家は、
カタツムリでいっぱいだった。

 カタツムリを見るとなぜか落ち着くの

彼女はカタツムリを300匹も飼い、
100匹を巨大なハンドバッグに入れて
パーティのお供に連れて来た。

その後フランスに引っ越したときは、
カタツムリの持ち込みが禁止されていたため、
胸の下に10匹ずつ隠して国境を何往復もしたと言う。

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佐藤理人 15年3月22日放送

150322-04
Verónica R.
創造のジンクス④「アレンのシャワー」

 いいストーリーを作る秘訣は
 考えすぎるほど考えること

映画監督で脚本家のウディ・アレンは言う。

ヒラメキを得るため、
彼が何年もかけて編み出した方法。
それは小さな変化を起こすこと。

食事をする。外出する。そういった刺激が、
新たな精神的エネルギーを生む。
中でも効果的なのが、

 シャワーを浴びること

30分間、頭から熱いお湯を浴びながら
アイデアを考え、筋書きを組み立てる。
お風呂を出て服を着たらベッドで続きを考える。

それでも思いつかないときは、
またシャワーを浴びたくなるように
服を脱いで寒くなるのを待つそうだ。

もしもアレンが滝に打たれたら、
どんなすごいアイデアが浮かぶのだろう。

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