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佐藤理人 14年12月27日放送

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カルティエ・デザイン③「タンクと戦車」

 戦車は武器じゃない。平和の象徴だ。

少なくとも第一次大戦直後の
パリ市民にとってはそうだった。

迫りくるドイツ軍から
パリを守り抜いてくれた連合軍の戦車。

フランスの高級ブランド、
カルティエの三代目ルイ・カルティエもまた、
その勇姿に感銘を受けた一人だ。

彼は戦車のキャタピラーからヒラメキを得て、
腕時計を作った。その名も、

 タンク

発表から100年近く経つ今も、
基本のデザインは変わらない。

過去の名作を復活させるメーカーは多い。
しかしデザインがこれほど古びずに
生き続けているブランドはカルティエしかない。

美しさの耐久力もまた、戦車の名にふさわしい。

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佐藤理人 14年12月27日放送

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カルティエ・デザイン④「チプロと釘と貞操帯」

新しいのに普遍的。シンプルなのに華やか。

フランスの高級ブランド、カルティエのデザインが
いつまでも古びない秘訣は、

 時空を超えた美学

にある。

1970年代、ニューヨーク。

夜な夜なディスコで催されるパーティには
もっとインパクトのあるアクセサリーが必要だ。

カルティエニューヨークのデザイナー、
アルド・チプロは考えた。

彼は釘や貞操帯などメッセージ性の強いアイテムを
敢えてデザインのモチーフに選んだ。

 王たちの宝石商であり、宝石商の中の王。

かつてイギリス王エドワード7世は
カルティエをそう評した。

それから100年後のアメリカで、
カルティエの進歩的なデザインに
まっ先に飛びついたのは、
ウォーホールやカポーティなど、
夜遊びの帝王たちだった。

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佐藤理人 14年11月15日放送

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Raoul Luoar
007の作り方①「スーツ」

「007」と他のアクション映画の決定的な違い。

それはスーツだ。

英国諜報部員ジェームズ・ボンドの
表の顔はエリート商社マン。
スーツの似合う男でなければならない。

初代ボンドを演じたショーン・コネリーは
スーツを着なれていなかったため、
監督から寝る時もスーツでいるよう命じられた。

セヴィルロウ、ブリオーニ、トム・フォード。
すべてオーダーメイドのクラシック。
ボンド映画は何十年間も観返されるため、
時代を超えて洒落て見えなければならない。

原作者イアン・フレミングは服に興味がなく、
擦り切れた安物のスーツばかり着ていたことは
あまり知られていない。

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佐藤理人 14年11月15日放送

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Pineapples101
007の作り方②「ガール」

ボンドガールの歴史は、
女性の進化の歴史でもある。

美しくグラマーなだけでなく、
知的でタフな自立した大人の女性。

1962年の初代ボンドガール、
ウルスラ・アンドレスから
彼女たちは時代を先取りしていた。

90年代末より、
ハル・ベリーやソフィー・マルソーなど
有名女優が起用されるようになると、
彼女たちは敵や味方として
さらにボンドを圧倒し始める。

しかし最もボンドを苦しめた女性といえば
この人しかいない。

史上最高齢の72歳で起用された
ジュディ・デンチ。

なんといっても彼女は
ダニエル・クレイグ演じる
6代目ボンドの上司「M」として、
彼を死ぬほどこき使うのだから。

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佐藤理人 14年11月15日放送

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007の作り方③「ソ連」

冷戦はすぐに終わる

「007」の脚本を書き始めた1959年、
原作者イアン・フレミングは、
諜報員だった自分の経験からそう考えた。

ジェームズ・ボンドの敵役として彼は
いかなる国家にも属さない
架空の秘密組織「スペクター」を作った。

しかし映画が公開された60年代、
冷戦はさらに激化。
ソ連が敵になるのに時間はかからなかった。

その最大の敵の崩壊から約四半世紀。
中東のテロリスト、南米の麻薬王、北朝鮮、
かつての仲間などさまざまな脅威が
ボンドの前に現れた。

冷酷で邪悪な手強い相手は何人もいた。
しかしイデオロギーという鎖に縛られた
悲しい敵はもうどこにもいない。

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佐藤理人 14年11月15日放送

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007の作り方④「ムーア」

007にならないか

1971年、ロジャー・ムーアの元に
3代目ジェームズ・ボンド役のオファーが来た。

2代目ボンド、ジョージ・レーゼンビーは一作で降板。
ショーン・コネリーの代役は
誰にも務まらないように思われた。

だが彼は受けた。

ローレンス・オリビエの後に
ハムレットを演じた俳優のことを思えば
大したことじゃない

役作りのヒントを彼は原作に求めた。

ボンドは殺しが好きではなかった

これだ。コネリーのボンドは冷酷な殺しのプロ。
なら自分は上品で優しいボンドになろう。

持ち前のルックスとユーモアを生かした
この作戦は大成功。
彼は歴代最多の7作で主演を務めた。

007の武器はたくさんある。
しかし彼を演じる俳優の武器は一つしかない。

ムーア曰く、それは

自分の個性

だそうだ。

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佐藤理人 14年10月5日放送

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私の脚本術①「古沢良太」

映画は現実を変えない。
でも観た人の何かは変えられる。

脚本家古沢良太はその手応えを
映画「ALWAYS 三丁目の夕日」でつかんだ。
それ以来彼は常に、

これで世の中変えてやる

と原稿用紙に向かう。

彼はまずスタッフの想いを変える。
どんな理不尽な直しも喜んで受け入れる。
制約が増えるほど脳みその使ってない部分が、

もっと面白くしてやる

と燃えるのだそうだ。

作った人が納得できない作品に、
世の中が納得するはずがない。
スタッフが「自分の映画」だと思えて初めて、
観た人が「自分の映画」だと思ってくれる。

一人でも多くの人を前向きにすることで、
日本映画はまた一歩先に進める。
彼はそう信じている。

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佐藤理人 14年10月5日放送

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M.Christian
私の脚本術②「内田けんじ」

脚本はルービックキューブだ

映画「運命じゃない人」の脚本家
内田けんじは言う。

1面ずつ作ってたらいつまでも完成しない。
いいストーリーはすべての出来事が
6面同時に美しく収まる。

行き当たりばったりでは決してうまくいかない。
彼はまず登場人物と親友になることから始める。
どこで生まれ、何が好きで、どんな暮らしをしてるのか。

キャラクターが決まれば、行動が決まる。
行動が決まれば、物語が勝手に動き出す。

「ねえ、何か面白い話ない?」
彼は今日も親友に尋ねている。

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佐藤理人 14年10月5日放送

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JeffHBlum
私の脚本術③「三木聡」

脚本を書いてみたいが
何を書けばいいかわからない、
という人は意外と多い。

ドラマ「時効警察」などで知られる脚本家三木聡。
彼の発想法はそのタイトルと同じくらいユニークだ。

彼は心のオモチャ箱に1日1個ずつ
面白かった出来事をしまっていき、
ある程度溜まったらひっくり返す。

すると一見バラバラに見えた出来事に共通点が見つかる。
それこそ自分でも気づかなかった無意識のテーマ。

心の奥で自分が何を思っているのか。
映画を通じて発見できれば
それがベストの物語だ。

さて、あなたのオモチャ箱の底には
一体何が隠れているだろう。

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佐藤理人 14年10月5日放送

141005-04

私の脚本術④「横浜聡子」

すぐ理解できるものなんて最悪

映画「ウルトラミラクルラブストーリー」の
脚本家横浜聡子は理屈っぽいのが大嫌いだ。

観客の予想を徹底的に裏切るために、
テーマもあらすじも一切決めない。
結末を自分にもわからなくすることで、
脳みそで考えすぎる弊害を糾弾する。

彼女は世界に一発喰らわせたい。

頭、固くない?

と。

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