アポロ③「ブラウンとアメリカ」
ナチスの敗北を予見するのに
ロケット工学の知識は必要なかった。
ドイツのロケット開発チームの責任者、
ウェルナー・フォン・ブラウンの
関心事はただ一つ。
つくべきはアメリカか、それともソ連か。
宇宙に行く夢を叶えてくれるのは
どちらの戦勝国か、彼は冷静に計算した。
基地を死守せよという命令に逆らい、
大量の機材、設計図、技術者たちを
彼は秘かに脱出させる。
ラジオがヒトラーの死を報じた二日後、
アメリカは世界最高のロケット技術と
その頭脳を確保した。
戦後、
宇宙旅行の亡者
と揶揄されながらも
ロケットを開発し続けたブラウン。
彼の祖国はもはや、
ドイツではなく宇宙だった。