Helge Øverås
左手の話 ⑤デヴィッド・ボウイ
「左手で絵を描いたり字を書いたりすると、
まわりの連中が『こいつは悪魔だ!』と、
私をからかったことを、
いまでもはっきり覚えている」
そう語ったのは、デヴィッド・ボウイ。
左利きであるだけで差別を受けた
みずからの経験。
こんなことも語っている。
「教師は右利きにさせようとして
私の手をひっぱたいたものだ。
そう、かつてはイギリスでも
左利きは忌まわしいものとされていたんだ」
左利きをむりやり右利きに直されたのは、
英国王だけではなかった。
箸をもったり、鉛筆をつかったりするのは
右手で。という社会通念が、
かつて日本にもあった。漢字もひらがなも
右手で書くことを前提につくられている。
左手で毛筆をもって縦書きの文字を綴るのは
なかなか難儀なこと。そんな文化のありようが
左利きをあまり歓迎しなかった。
英国の場合、宗教上のなんらかの理由もあり、
左利きの存在をゆるさない空気があった。