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名雪祐平 13年7月28日放送



手紙 谷崎潤一郎

まだ新婚だったくせに、
作家谷崎潤一郎は
人妻に惚れてしまった。

大阪で1,2を争う大商店の人妻は
根津松子。

松子に送った恋分の中で
谷崎はこんな言葉をつづった。

 たとえ離れておりましても
 あなた様の事を思っておりましたら
 それで私には無限の創作力が湧いて参ります。

 しかし誤解遊ばしては困ります。

 私に取りましては
 芸術のためのあなた様ではなく、
 あなた様ための芸術でございます。

そして新妻を捨て、
松子のもとにかけつける。

すぐ二人は深い仲になった。

松子は名作『細雪』の幸子のモデルとなる。

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名雪祐平 13年5月26日放送


johnm2205
チューリップバブル 狂い咲く人1

この花の球根を1個、ください。

はい。1億円になります。

1634年のオランダ。
世界初のバブル経済事件
「チューリップバブル」が起こった。

チューリップに人気が集中。
人々は競って球根を買い、すぐ高値で売り抜けた。

特に美しいセンベル・アウグストゥスという
チューリップの球根は、たった1個で
労働者の年収の20倍で取引された。

球根1個で豪邸1軒が買えた。

人々は、庭に植えたチューリップを
盗まれまいと、
毎晩見張り、眠れなくなった。

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名雪祐平 13年5月26日放送



チューリップバブル 狂い咲く人2

チューリップの球根は、
小さなタマネギのよう。

イギリスの植物愛好家が
オランダの友人の家を訪ねた。

その家で愛好家は“小さなタマネギ”を発見し、
ほう、珍しい品種だ。
中身はどうなっているのだろう。
と、皮をむいてしまった。

友人は激怒した。

なぜなら、それはタマネギではなく、
金貨2000枚ぶんで取引可能な
チューリップの球根だったのだ。

1963年のチューリップバブル。
しかし、突然売れなくなった。
そこから一気に暴落が始まった。

いや、元に戻ったのだ。

球根は球根に、
タマネギ並に、なった。

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名雪祐平 13年5月26日放送



元禄バブル イヌノミクス1

江戸幕府5代将軍は
お犬様、徳川綱吉。

世はデフレ。

幕府財政は赤字つづきで
江戸城の蔵の金銀は底をついていた。

金がほしい。銀がほしい。
将軍は恒例の
日光東照宮への参拝にも行けずにいた。

綱吉は、勘定吟味役という役所の
荻原重秀に財政立て直しを命じた。

重秀は金銀改鋳という
画期的な政策を行った。

徳川家康の時代に作られた金貨・銀貨を回収し、
金銀の含有量を減らして
貨幣を増やしたのだ。

増やしたぶんが幕府の収入となり、
その額は500万両、5000億円という
うなるような利益となった。

まさに、濡れ手に粟(泡)。

江戸はデフレから脱却し、
元禄バブルによる、きらびやかな元禄文化が
華ひらく。

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名雪祐平 13年5月26日放送



元禄バブル イヌノミクス2

お犬大好き将軍 
徳川綱吉。

幕府の重役、荻原重秀に
財政の立て直しを命じ、
市中に出回る金貨と銀貨を回収した。

2両ぶんの金銀で、なんと3両を作り、
差し引き1両を幕府の利益とした。

貨幣の信用がガタ落ちしないのか?

重秀の決意の言葉が残っている。

 貨幣は国家が造る所
 瓦礫を以ってこれに代えるといえども
 まさに行うべし

しかし、世はデフレ経済から一転、
じゃぶじゃぶ出回った貨幣で
激しいインフレが発生したという。

これは、300年前の話。

さて。歴史は繰りかえすのだろうか。

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名雪祐平 13年5月26日放送



うさぎバブル 赤目の人々1

明治6年、東京で
風変わりな法律ができた。

『兎取締ノ議』

うさぎを飼うと、
1匹につき月1円の税金が課税された。

当時1円あれば
米30kgも買えるほどの重税。
しかも年間ではなく月々の負担だった。

そんな法律ができるほど
貴族や平民にいたるまで、
日本人がうさぎに熱狂していた。

うさぎは高く売れる。
うさぎは儲かる。

人々は血眼で兎を追った。
二兎を追い、四兎得ようと。
四兎を追い、八兎得ようと。

ところが法律によって
一兎ずつ、
高い税金がかかるようになってしまった。

うさぎはよく子どもを産む。

10匹産めば、
10匹の丸儲けだったのが、
10匹の丸損になったのだ。

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名雪祐平 13年5月26日放送



うさぎバブル 赤目の人々2

明治5年。
東京に空前の
うさぎバブルが発生した。

珍しい種類のうさぎは高額で売買された。
白い平凡なうさぎは毛に色をつけ、売られた。

人々は血眼だった。

田畑を売ってでも、うさぎを手に入れろ!
娘を売ってでも、うさぎだ!うさぎだ!
人なんか欺してでも・・・。

大きな社会問題になり、
つぎの年から
うさぎを飼うと重い税金がかけられるようになった。

『兎取締ノ議』

税金を払いたくない人々は
うさぎを殺して食べた。

その毛皮を服にして、ぬくぬくと寝た。

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名雪祐平 13年5月26日放送


そのまんま狸
うさぎバブル 赤目の人々3

消えたうさぎ。

明治6年、行き過ぎた
うさぎの投棄ブームを冷ますために
1匹につき高い税金をかけられた。

うさぎに血眼だった人々は
一気に冷めた。

うさぎを殺して食べたり、捨てたり。
うさぎの鍋を出す屋台が多く出たりした。

ブームもおさまり、
数年後には課税も廃止された。

その途端、何が起こったか。

人々は第2次うさぎブームを
起こしたのだ。

得をしようと。
損をうめようと。

うさぎの長い耳は
人間のどんな言葉を聞いていたのだろうか。

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名雪祐平 13年5月26日放送



はじけないバブルはない ドラッカーほか

球根、うさぎ、株式、土地、IT、石油・・・
人間が繰りかえしてきたバブル。

それでも人間は懲りない。

たとえ、バブル崩壊後の世界恐慌や
失われた何十年で痛い経験をしても。

この3人の忠告を
いまのうちに聞いておこう。

 バブル時に、物ごとを
 よく見せるのは簡単である。
 そのため、怪しげなものまでトップにのぼる。
 私が経験したバブルは4、5回におよぶ。

   経営会社 ピーター・ドラッカー

 バブルはヒステリーのうちにはじめ、
 暴落はパニックで幕を閉じる。

   投資家 ジム・ロジャース

 バブルがいつ崩壊するか予測するのは
 誰にもできない。
 ただ、過去のバブルは例外なく
 はじけている。

   経済学者 ジョン・ケネス・ガルブレイス

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名雪祐平 13年4月28日放送



鉄のマーガレット  サッチャー 1

イギリス東部、グランサム。
その町の食料雑貨店に女の子が生まれた。

家の家訓は、
質素倹約。自己責任。自助努力。

父から受け継いだ精神は
少女のなかに、骨のある強い人間性を築いていった。

9歳のとき、学校で表彰された際に
少女はこんな言葉で主張した。

 ラッキーだったんじゃないわ。
 私はそれにふさわしかったのよ。

少女、マーガレット・ロバーツ

のちにイギリス初の女性首相、
マーガレット・サッチャーになる。

鉄の女になる。

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