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小野麻利江 14年8月10日放送

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Alessandro Baffa
3.香りのはなし 調香師が嗅ぐ香り

飛び抜けた嗅覚を駆使して香料を調合し
あたらしい香りを創り出していく職業、
「調香師」(ちょうこうし)。

彼らの嗅覚は、生まれつきそなわった能力ではなく、
プロとしての長年の経験の末に獲得されたものだ、
とする研究結果が、
脳医学会誌「Human Brain Mapping」に
掲載されたことがある。

経験の浅い調香師とベテラン調香師を
2つにグループ分けし、
数百から、数千もの匂いをかぎ分けさせたところ、

ベテラン調香師ほど、より速く正確に
答えにたどりついたという。

研究チームの1人、
神経科学者のジャン・ピエール・ロワイエは、
次のように説明する。

ピアニストが音階の練習を重ねて
上達していくように、
『鼻利き』になるためにも
トレーニングが必要だ。

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小野麻利江 14年8月10日放送

140810-04
bastus917
4.香りのはなし マーク・トゥエインとスミレの花

香水を選ぶ。つける。
自分のために選ばれがちな
その「香り」が、
誰かの鼻を愉しませることだって、しばしばある。

しかし、アメリカの作家・
マーク・トゥエインの次のような言葉ほど、
利他精神に満ちたものも、そうそうないだろう。

 許しとは、踏みにじられたスミレの花が
 自分を踏みにじったかかとに放つ芳香

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小野麻利江 14年6月8日放送

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家のはなし 伴美里の部屋の中

アーティストの伴美里(ばん みさと)が
自分の部屋を見渡した時、
そこは、彼女が年月をかけてつくりあげた
「世界の箱庭」になっていた。

「ミラーワーク」という刺繍がほどこされた
インドのキーホルダー。

バリ島で買った「バティック」という、
ろうけつ染めのスカーフ。

ベルギーはアントワープで見つけて
「文化遺産」という呼び名をつけた
大きめのカフェオレボウルに、

イギリス湖水地方、
ウィンダミアの山から持ちかえった石ころが
あったかと思えば、

プラグの周りは、いろんな国の電化製品が共存して
大変なことになっている。

自分の部屋にある思い入れの深いものをスケッチし、
それぞれにまつわるエピソードを添えた伴美里。
彼女のドローイングブック
『100 Things in My Room』の中には、
そんな「家あそび」の極意がぎっしりと詰まっている。

雨続きで、外に出られない。
そんな日は、お家の中を旅するチャンスかもしれません。

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小野麻利江 14年6月8日放送

140608-06

家のはなし 谷崎潤一郎の暗がり

外の光がまったく届かない建物の
暗がりの中にある、
金の襖や金屏風。

作家・谷崎潤一郎は、著書『陰翳礼讃』の中で
その微かな色彩の、照り返しをいつくしむ。

 
私は黄金と云うものが
 あれほど沈痛な美しさを見せる時は
 ないと思う。

明かりを消してしまえば、
何も見えなくなる訳ではない。
私たちの眼に、
闇が見せてくれるものもきっとある。

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小野麻利江 14年5月18日放送

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学びの話5 B・B・キング

ブルース界の巨人、B・B・キング。
親戚が持ってきたギターに初めて触れたのは、彼が8歳の時。
以来ギターに夢中になり、
農場で働いた給料で手に入れた自分のギターを手に
ラジオから流れてくるジャズ、ブルース、
カントリー&ウェスタンといった音楽をコピーしはじめた。
ある日、街角でブルースをプレイしたところ、
投げ銭が増えたことから、ブルース・プレイヤーになることを決心。
ブルースへの傾倒を強めていった。

テネシー州メンフィスのラジオ局でDJとして名を馳せた後、
1949年にレコードデビュー。
以来、半世紀以上にわたり、文字通りブルース界の「キング」で
ありつづけている彼だが、

 いろんな楽器を弾くことで、
 ギター・フレージングに効果があるんだ。

と、ギター以外にも、ピアノ、ベース、ドラム、
ハーモニカ、ヴァイオリン、クラリネットなどを独学で習得している。

学ぶことの素晴らしいところは
誰にも取られることがないってことだ。

B・B・キングの成功は、数え切れない学びでできている。

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小野麻利江 14年5月18日放送

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学びの話6 DJおばあちゃん

「暇つぶしと、ぼけ防止に」。
そんな理由で習い事をはじめるシニアは、きっと少なくない。
でも、そう言って習い始めたのが「DJ」だとしたら・・・?

「DJ SUMIROCK(スミロック)」こと
岩室純子(すみこ)さん。78歳。
高田馬場の老舗餃子店で働いている。
知り合いが主宰するイベントで、クラブの楽しさに開眼。
DJスクールに通いはじめた。

先生のダメ出しを受けながらも、すでに東京やパリ、
ノルマンディのクラブで回したこともあるという。

 夢は、ニューヨークのクラブデビュー。

そう語るDJ SUMIROCKを前にすると
「年寄りの冷や水」なんて諺のほうが、
時代遅れに見えてくる。

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小野麻利江 14年3月9日放送

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Matthew
からだの話 マイケル・ジョーダン

バスケットボールの神様、マイケル・ジョーダンは
試合開始早々、何本かシュートをはずしても、
ことさらに、気にしたりはしなかった。

「よし、リズムはつかめているぞ。これからだ。」

からだにそう言い聞かせて、プレーを続けていたという。

意志の力で、からだはきっと、いい方に動く。

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小野麻利江 14年3月9日放送

140309-08
naoyafujii
からだの話 三浦知良

47歳になる今も、Jリーグ・横浜FCで
現役でプレーを続ける、
「キング・カズ」こと三浦知良。

今までに培った経験とテクニックに
磨きをかけることはもちろん、
年を重ねるにつれ、
より質の高いトレーニングを追求してきたという。

さぞかし、自らの体を慎重に気遣って
プレーを続けているのだろうと思いきや、
必ずしも、そうではないようだ。
カズは言う。

 僕は基本的に、日常生活ができるなら、
 試合にも出られると思ってる。
 それでケガが悪化したこともあるし、
 ベストの状態でなければ、
 チームに迷惑をかけるという意見もあるだろう。
 でも100%治るまで休んでいたら、
 いつまでかかるか分からない。
 この年齢で1ヶ月も2ヶ月も休んだら、
 選手生命も終わってしまうしね。

選手を長く続けるために、あえて体に負荷をかける。
挑み続ける者にしかわからない境地が、ここにある。

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小野麻利江 14年1月19日放送


ゆずか
誕生にまつわる話 大人の誕生

何歳の誕生日をすぎたあたりから、自分は大人になったんだろう。

もう子どもじゃない。もう大人なんだ。
そうはっきりと自覚した「あのとき」は、いつなんだろう。

詩人の長田弘は『深呼吸の必要』という詩集の中で、
その瞬間を、鮮やかに切り取ってみせる。

それはたとえば、自分についての全部のことを、
自分で決めなくてはならなくなったとき。

それはたとえば、歩くことの楽しさを無くしてしまったとき。

それはたとえば、ある日ふと、誰からも、
「遠くへ行ってはいけないよ」と言われなくなったとき。

それはたとえば、これ以上自分が大きくなれないんだと知ったとき。

それはたとえば、自分の人生で、
「こころが痛い」としか言えない痛みを、はじめて知ったとき。

九章からなる散文詩「あのときかもしれない」が見せてくれるのは
とりとめもないこととして片付けられるような、
でも、誰しもが通っている、火花のような瞬間の再体験。

子どもを大人にするのは、大人ではない。
子どもの中から、大人が生まれる。

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小野麻利江 13年11月17日放送


Père Ubu
アーティストの話 ヤン・シュヴァンクマイエル

チェコのアニメーション作家、ヤン・シュヴァンクマイエル。
彼の創作の歴史は、色々なものへの、抵抗の歴史とも言える。

社会主義、全体主義、画一的な商業中心主義。
皆が一様に、思想そしてそれを体現した芸術に
侵食されていくことを嫌い、徹底的に抵抗する。

映像の中に登場する食べ物を、不味そうに描いたり。
動く肉片など、フェティシズムを全開にしたモチーフを多用したり。
人間の運命や行動が、何ものかに「不正操作」されている。
彼みずからが抱く、そんな強迫観念を投射した作品も、数多い。

アニメーションにとどまらず、
コラージュ、オブジェ、ドローイングなど
79歳になる現在も、作品を残し続けているシュヴァンクマイエル。
自らの肩書きを書くときに、彼は「アーティストと書く」と言う。

アーティストとしての、彼のプライド。
それは、こんな発言からも伝わってくる。

 世界を変えようとする気がないクリエイターは辞めたほうがいい。

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