カメラの裏には ヴィンセント・ヴァン・ゴッホ
「一番美しい絵」とは、どんな絵だろう。
そんな問いに、ゴッホはこう答えたという。
一番美しい絵は、
寝床のなかでパイプをくゆらしながら夢見て、
決して実現しない絵だ。
わずか10年あまりの芸術家人生。
理想の絵を夢みながら、
ゴッホは時代を駆け抜けた。
カメラの裏には ヴィンセント・ヴァン・ゴッホ
「一番美しい絵」とは、どんな絵だろう。
そんな問いに、ゴッホはこう答えたという。
一番美しい絵は、
寝床のなかでパイプをくゆらしながら夢見て、
決して実現しない絵だ。
わずか10年あまりの芸術家人生。
理想の絵を夢みながら、
ゴッホは時代を駆け抜けた。
おやつのはなし マキコさんのシュークリーム
高野文子(たかのふみこ)の漫画
「バスで四時に」の中に出てくる、
八個のシュークリーム。
お見合い相手の家へ向かうバスの中で、
主人公のマキコさんは、手みやげに買った
シュークリームを数えだす。
あちらが三人、あちら入れて四人
あとから遅れてもうひとり 三つあまる
これはきっとあしただ
あした、あちらで一つずつ
不安と緊張、そして八個のシュークリームを抱えて
バスは未来へ進んでいく。
おやつのはなし 池波正太郎の好事福盧
「好事福盧(こうずぶくろ)」というお菓子がある。
中身をくりぬいた紀州蜜柑の皮に
蜜柑のゼリーをぎっしりと詰め込んだ
この京都のお菓子を
池波正太郎は、こよなく愛していた。
好事福盧が3つ手に入ると
ホテルですぐさま1つ食べ、
残る2つは冬の冷えたベランダに出しておき、
ほどよく冷えたものを、
缶ビールで楽しんでいたという。
ゼリーをすくい口へ運ぶと広がる、キュラソーの香り。
そのさわやかさに酔いしれながら、
池波は感慨にふけっていた。
菓子をあんまり食べなくなった私だが、
こういう菓子なら、いくつでも食べられる。
plindberg
山のはなし 「すべての山に登れ」
「山を登る」と言う時。
概して人は、上り道だけを
ひたすら上がっていくさまを想像する。
しかし、実際は山の中にも、
上り道と下り道。
広い道と細い道、さらには脇道と、
様々な表情が存在している。
映画「サウンド・オブ・ミュージック」の
有名な劇中歌のひとつ、
「Climb every mountain」。
すべての山に登れ。それは、
「どんな困難にも立ち向かえ」という
意味に聞こえるが、
「人生という山の中にある
あらゆる機微を、
自分の体で感じて生きていきなさい」
そんな趣きも持っていることに、
歌詞を読むと、気づかされる。
すべての山に登り
すべての流れを渡り
すべての虹を追いかけよう
夢を見つけだすまで
プレゼントのはなし ココ・シャネルの言葉
シャネルの創設者、ココ・シャネルは言った。
20歳の顔は、自然の贈り物。
50歳の顔は、あなたの功績。
女性の自立を目指した
デザイナーならではの一言。
さあ、未来の自分に
どんな顔をプレゼントしましょうか。
プレゼントのはなし 薩摩藩からの大硯
安政3年。徳川第13代将軍・家定のもとに
薩摩藩島津家から、篤姫が嫁いだ。
挙式の際、薩摩藩からの贈り物の中には
ひときわ目立つ大きな「硯(すずり)」が。
長さ1.5メートル、幅90センチで、重さは108キロ。
上甑島(かみこしきじま)で切り出された天然の硯石に彫刻し、
大人4人がかりで、江戸まで運んできたという。
なぜこのような硯を献上したか。
篤姫の養父、薩摩藩主・島津斉彬は、
こう語ったそうだ。
「婚礼の品に関しては、全国の大名が
金銀珠玉をちりばめ華美を競っているが、
どの品もそれほど大したものではない。
そのように絢爛豪華ではないが、
雅の心だけは非常に深く込められている
この大硯を献上することは、
後世まで一つの語り草になるのではないかと思う。」
何をどう贈るか。贈り物も、またひとつの政治。
m-louis
緑のはなし マーシャ・ブラウンが見た緑
さわやかな みどりのはっぱのうえの
ちいさなみどりの いもむし
つめたいみどりのあしで
はっぱのはじに ぶらさがる
アメリカの絵本作家 マーシャ・ブラウン。
道ばたに生える、なんでもない草の葉っぱですら。
彼女の目を通して見れば、
かけがえのない存在をいつくしむ
ひとかけらの、詩に変わる。
彼女は語る。
みることのレンズは
ちいさいものを おおきくみせる・・・
5月の新緑に、目をやる時。
あなたなら、そこに何を見つけるでしょうか。
出会いのはなし 梅原真とカツオ漁師
日本唯一の飛び地村でとれた、
「じゃばら」というみかんの果汁。
牛肉のかわりに海に豊富にあるさざえを入れた
「島じゃ常識 さざえカレー」。
日本各地で獲れたモノたちに、
まっすぐで、風圧の強いデザインを加える男がいる。
それが、デザイナーの梅原真(うめはらしん)。
そのきっかけは、
土佐のカツオの1本釣り漁師との出会い。
このままでは舟がつぶれる。
そう言う漁師の話を聞くうちに、
カツオにデザインをかけあわせれば、
きっと新しい価値が生まれる。
そう確信し、
商品化とパッケージを請け負った
「カツオのたたき」は、
やがて年商20億円の産業となった。
一次産業とデザインが出会えば、
日本の風景は残せる。
そう考える梅原は今日も、
日本各地に眠る資源たちとの、
出会いを重ねている。
tomato umlaut
出会いのはなし ソニア・パークとお買い物
どうして人間って
買い物するのだろう?
スタイリストのソニア・パークは、
そう考えたことがあるそうだ。
少し考えて、彼女が出した答えはこうだ。
そこにものがあるから。
そして、それを買うことができるから。
みずからのショッピングフリークぶりを
「一向に治らない買い物癖」と称する
彼女ならではの答えである。
人とモノとの出会いの連続、ショッピング。
あなたはこの春、どんなものと出会いましたか?
出発のはなし3 武田百合子の日記
まだ知らない場所へと旅立つ瞬間は
一抹の不安も入り混じり。
心からワクワクしているのか、嬉しいのか、
実はよく分からない。
冒険の最初の一歩が達成されたあと
徐々にうれしく感じるというのが
本当に正直な、心のありように思える。
昭和44年。随筆家の武田百合子は、
夫・武田泰淳のロシア旅行に同行する。
「連れていってやるんだからな。
日記をつけるのだぞ」
夫にそう言われて
走り書きでつけ続けた日記は
『犬が星見た ロシア旅行』という一冊になり
出発の瞬間のあの独特の感情を
今も多くの読者に、呼び起させる。
百合子。面白いか? 嬉しいか?
横浜大桟橋で見送る知人たちの表情が
するすると離れて見えなくなったのち。
甲板から船の中に戻り、
ビールを飲みながら尋ねる夫に
百合子はこう答える。
面白くも嬉しくもまだない。
だんだん嬉しくなると思う。
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