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小野麻利江 18年3月25日放送

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Adria Richards
呼吸のはなし マヤ・アンジェロウと息の数

酸素を吸い、二酸化炭素を吐く「呼吸」。
ヒトが生きるために、呼吸は欠かせない。

しかしヒトは必ずしも、
呼吸のみによって生かされているのでは
無いのかもしれない。

アメリカの女性作家、マヤ・アンジェロウは
こんな言葉を残している。

 人間の価値は息をした数ではなく、
 心奪われ、息をするのも忘れる瞬間を
 経験した数で決まる

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小野麻利江 18年3月25日放送

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呼吸のはなし アスリートと呼吸

アスリートの商売道具は、
言わずもがな、「身体(からだ)」。
どんな競技・種目であれ、
アスリートたちはみずからの身体の使い方を
1ミリでも向上させるべく、
日夜トレーニングを続けている。

そして、身体の可能性を
極限まで高めようとする彼らにとっては、
「呼吸」の使い方も、身体の使い方。
多くのプロゴルファーを育てた
名指導者・坂田信弘も、
みずからの著作の中で、こんな話をしている。

 ゴルフというのは、球を叩く、
 その球を叩くのは、空気で叩くんです。
 呼吸で叩くんです。

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小野麻利江 18年2月25日放送

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yu-sui.net & cooperators
喫茶の話 談話室滝沢

かつて東京に4店舗あった喫茶店、「談話室滝沢」。
広々とした店内は、長居のできる落ち着いた雰囲気。
黄緑色の椅子とカーペット、
そして、錦鯉が泳ぐ小さな滝がトレードマーク。
また、従業員は、すべて正社員。
社員寮で徹底した接客教育を行っていた。

しかしそんな滝沢も、
2005年に、惜しまれながら閉店。
従業員の確保とサービスの質を保つのが
難しくなったというのが、その理由だった。

喫茶というサービスにかける、並々ならぬプライド。
社長の滝沢次郎氏は、かつてこう語っている。

 滝沢がお客様に売るものは
 コーヒーではなく、
 社員の人格・礼儀作法である

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小野麻利江 18年1月28日放送

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Daremoshiranai
鍋の話 中国の火鍋

お隣の国、中国でポピュラーな鍋料理といえば、
唐辛子が入った「火鍋」。

具材や調理法は地域によってさまざまで、
たとえば、北京より北の地方では、
食材の並べ方にも決まりがある。
鍋の手前に鳥の肉。後ろに動物の肉。
左に魚、右にエビを入れて、野菜を散らす。

さらに、招かれざる客が来た時は、
鍋の手前に、特大の肉団子を入れるそうだ。

鍋を囲むと、人と人の距離は
縮まっていくものだが、
「早く帰れ」と、人を遠ざける鍋もある。

鍋の世界は、鍋の底よりも深い。

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小野麻利江 17年12月31日放送

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_Nowo
大晦日の話し 蕎麦

大晦日に蕎麦を食べる由来には、諸説ある。
「細くて長いから、長寿につながる」とか、
逆に「切れやすいから、災いを断ち切れる」とか。

さらには、
金細工で飛び散った金粉を蕎麦粉で集めたことから、
「金(かね)を集めるもの」と縁起を担がれた、
という由来も有力だという。

今日は大晦日。
あなたはどんな願いをこめて
お蕎麦をすすりますか?

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小野麻利江 17年12月31日放送

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大晦日の話し 世界の大晦日

今日は大晦日。
日本では年越し蕎麦を食べ、
除夜の鐘をつきに、お寺に出かける人もいる。

今日は大晦日。
スイスでは、アイスクリームをスプーンですくって床に落とす。
「新しい年も幸運や平和、豊かさであふれるように」
という意味があるという。

今日は大晦日。
ルーマニアの一部の地域では悪霊を払うために、
クマの衣装に身を包み、ダンスをして年を越す。

今日は大晦日。
エストニアでは今日1日だけ、
7回・9回・12回など、何度も食事をする。
7・9・12が、エストニアの人にとっての
ラッキーナンバーだからだという。

国や地域によって過ごし方に違いはあれど、
「来年も良い年になるように」という願いは、世界共通。

今日は大晦日。
2017年最後の日。

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小野麻利江 17年11月26日放送

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wiserbailey
香りの話 香りの街・グラース

フランス南東部の都市・グラースは
世界的な「香水の都」と称され、
今もなお、フランス産の香水の半分以上は
ここで生産されている。

もとは革製品が主要産業だったが、
革手袋を外したときに手に残る臭いの対策として
「香り付き手袋」を売り始めたのが、香水づくりの始まり。
ラベンダー、ジャスミン、ローズマリー、
ミモザ、オレンジフラワー・・・。
温暖な気候に恵まれたグラースには
香りの原料となる花たちが数多く自生し、
今もなお、稀代の調香師たちの感性を刺激する。

エルメスの香水を手がける調香師、ジャン・クロード・エレナも、
グラースで調香師をしていた父親から、
香りについての「教育」を施されたことを語っている。

父は何か食べる前あるいは飲む前に
その一つ一つの素材をまず嗅がせるということを
僕と兄弟にさせてきました。
慌てて飲み込まず、ゆっくりと呼吸し、
思考することの喜びを発見しました。

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小野麻利江 17年10月29日放送

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写真のはなし ロバート・キャパの視点

20世紀を代表する
報道写真家、ロバート・キャパ。

キャパが向き合い、撮ろうとしたのは、
「戦火の真っ只中で、何が起きているか」。
カメラだけを携えて5つの戦争に従軍し、
名もなき兵士たちを撮り続けた彼は、
こんな言葉を残している。

 君がいい写真を撮れないのは、
 あと半歩の踏み込みが足りないからだよ

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小野麻利江 17年9月24日放送

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涙のはなし 殷富門院大輔の涙

見せばやな 雄島(をじま)の蜑(あま)の 袖だにも
濡れにぞ濡れし 色は変はらず

百人一首の中に、こんな恋の和歌がある。
詠み人は、平安時代末期の女流歌人、
殷富門院大輔(いんぷもんいんのたいふ)。

海女の袖でさえ、
どれほど波しぶきで濡れても
色が変わらないというのに。

あなたのつれなさを嘆く私の涙は
血の涙となり、
袖の色まで変わってしまった。

涙で袖を濡らすだけなら、
まだまだカワイイものよ。

平安時代の恋愛の先輩の、
そんな声が聞こえてきそうな一首である。

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小野麻利江 17年7月30日放送

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青のはなし 山下達郎「蒼氓」

シンガーソングライター・山下達郎の曲の中に、
「蒼氓(そうぼう)」という、難しいタイトルがある。
蒼氓の「そう」は、
くさかんむりに倉と書く「蒼(あお)」。
「ぼう」は、「亡くなる」の「亡(ぼう)」に
「民(たみ)」と書く、見慣れない漢字。

「名も無き人々」を、
道端に生える「名も無き青草」に喩えた言葉で、
作家・石川達三の芥川賞受賞作を
頭に置いてつけたという。

山下達郎がこの曲で形にしようとしたのは、
「ゴスペルのように、見知らぬ誰かと
喜怒哀楽を共有できるような音楽」。

幼い頃から賛美歌に触れ、
ゴスペルに対する憧れがあった彼の
ひとつの到達点が、ここにある。

 憧れや名誉はいらない 華やかな夢も欲しくない

名も無き草は、花の美しさや葉ぶりの見事さを
称えられることもなく。
黙々と、しかし、青々と生い茂り、拡がっていく。
「蒼」という色には、静かな生命力が宿っている。

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