日記のはなし 石川啄木のローマ字日記
1909年の4月7日から6月16日のあいだ。
歌人・石川啄木は、ローマ字で日記を書いた。
そこに書かれているのは、
会社をずる休みしたり、
生活を助けてくれる友人をけなしたり、
友人の物を勝手に質に入れて遊郭に通い、
その様子を赤裸々に描写したりという、
彼の歌からは想像もつかない振る舞いの数々。
妻のことは愛しているが、
妻に読まれたくないからローマ字で日記を書く。
そんな身勝手な感情まで、記されている。
実のところ、妻の節子は
ローマ字を読めたのではないかという説もある。
しかし、啄木の死の直前に
日記をすべて燃やすよう命じられても、
愛着から燃やすことができませんでした。
と、親友の金田一京助に日記を託した。
読まれた人と、読んだ人。
日記は、様々な人情の機微でできている。