涼菓の話 二見浦と赤福氷
玉くしげ 二見の浦に すむあまの
わたらひぐさは みるめなりけり
三重県伊勢市の二見浦(ふたみがうら)。
古来より和歌にも詠まれ、
お伊勢参りの人々が
穢れを祓ったとされるこの海岸で
海水浴客のために生まれたのが、赤福氷。
赤福の餡と餅は、氷になじむよう特製され
今も多くの観光客の、暑気払いとなっている。
涼菓の話 二見浦と赤福氷
玉くしげ 二見の浦に すむあまの
わたらひぐさは みるめなりけり
三重県伊勢市の二見浦(ふたみがうら)。
古来より和歌にも詠まれ、
お伊勢参りの人々が
穢れを祓ったとされるこの海岸で
海水浴客のために生まれたのが、赤福氷。
赤福の餡と餅は、氷になじむよう特製され
今も多くの観光客の、暑気払いとなっている。
HiroshimaGab
お米の話 田植えにまつわる言い伝え
かつての日本の四季は、今よりもずっと
米づくりと密接につながっていた。
米づくりにまつわる言い伝えが
土地ごとにいくつも存在していた。
田植えに関しても、
五月の婚礼、八月の離れ月
という風習があった。
これは、旧暦の五月と八月に
婚礼をとり行なうのを避けるように、戒めたもの。
旧暦の五月は、田植えの最盛期。
婚礼に人手を出すどころではなく
しかも梅雨時に重なるとあって、
花嫁行列などしようものなら、晴れ着は台無しになる。
実に理にかなった言い伝えであった。
しかし今や旧暦の五月、今の暦で六月は、
「ジューンブライド」として婚礼の最盛期。
欧米の「ジューン」には梅雨などなく
日本にそのまま取り入れるのは
本来は無理がありそうなものだが、
そんな懸念もなんのその。
挙式場所の変化や空調の発達で
梅雨時の晴れ着の心配が減ったこともあるが、
なにより日本の農業人口が減り、
田植えの日取りとの兼ね合いを
気にする人が減ったということも、
普段は気づきもしないが、
実は大きな要因のように思える。
Stefan Berndtsson
あいさつの話 中村メイコの弔辞
究極の別れの挨拶。
それは、亡くなった人へ手向ける
お葬式での弔辞かもしれない。
その中でも深い感動を残したのが、
1989年に亡くなった美空ひばりに向けた
女優・中村メイコの弔辞。
あなたに会える、そう思うと
私はもう死ぬことは怖くありません。
あなたはそんなプレゼントまで
私に残してくれました。
私はもう友達は持たないでしょう。
あなたが最高だったから。
待っててね。
あいさつの話 畑正憲の「しつけ」論
「ムツゴロウさん」の通称で知られる、
動物エッセイストの畑正憲。
さまざまな動物と触れ合うイメージが強い畑だが、
人間のしつけに関しても、厳しくも覚悟に満ちた
独特の視点があった。
かつて彼の子どもが、魚の命をうばって食べることを
嫌がるようになった際、
それを「表面的な生き物好きの精神」だと感じ、
その虚弱さを払拭させるために
家族で北海道に移り住む決意をしたという。
畑自身も、こんな言葉を口にしている。
私は「しつけ」とは、「押しつけ」だと考えます。
挨拶をする、お年寄りを敬う、
他人に迷惑をかけないなど、
人として生きていく上での原則をしつけるのに、
論理的な裏づけが必要でしょうか。
親から押しつけられてするようになった挨拶が、
やがて子どもの心の中に深い根をはり、
人格のひとつとなる。
「おはようございます」「こんにちは」
「さようなら」「おやすみなさい」…。
さて、今日までのあなたは
いったい幾つの挨拶で出来ているのだろう。
BADBOY_1975
眠りのはなし 左甚五郎の「眠り猫」
日光東照宮をいろどる数多の彫刻の中でも
特に人気が高いのが、
江戸時代の名工・左甚五郎作と伝えられる
「眠り猫」。
作り手が謎に包まれているのと同様、
この猫は何を意味しているのか?と
見た者の好奇心をかきたて続けている。
諸説ある中でも一番よく言われるのが
猫の彫刻の裏で二羽の雀が舞う様子から、
「猫が雀に襲いかからないほどの平和」
すなわち
「徳川幕府によってもたらされた平和」
を
象徴しているという説。
もっとも、当の眠り猫は、
「知ったこっちゃない」という風情で
これからも梁の上で、眠りつづけるのだろうが。
DailyPic
眠りのはなし アリストテレスの「眠り」と人生
あと5分、あと10分。
早く起きなきゃという焦りと、
布団の気持ちよさとの間を
行ったり来たりな、春の朝。
でも、予定の無い日くらいは、
アリストテレスのこんな言葉を
言い訳にしてもいいかもしれない。
勤勉なる者も怠惰なる者も、
人生の半分は大差なし。
なぜならば、人生の半分は
眠っているからなり。
suttonhoo
旅のはなし 旅に出てきた甲斐・沢木耕太郎の場合
旅に出ても、
旅先で何をすればいいかわからない。
そんな人がいたら、
沢木耕太郎のこの言葉を伝えたい。
これから毎日、朝起きれば、
さてこれからどうしよう、と
考えて決めることができるのだ。
それだけでも旅に出てきた甲斐が
あるように思えた。
やることが、まだ決まっていない。
それだけでも、旅は冒険になる。
thor_mark
旅のはなし 旅に出る理由と、くるり「ハイウェイ」
僕が旅に出る理由は だいたい百個くらいあって
ロックバンド・くるりの
代表曲のひとつ、「ハイウェイ」。
歌い出しのこの歌詞は、
旅のはじまりに感じる静かなワクワクを
記憶の中から連れてくる。
ひとつめはここじゃどうも 息も詰まりそうになった
「だいたい百個くらいある」らしい
旅に出る理由を
ボーカルの岸田繁が、ぽつりぽつり紡ぐ。
ふたつめは今宵の月が 僕を誘っていること
みっつめは車の免許 とってもいいかな なんて 思って いること
でもどの理由も、本当の理由じゃないように聞こえる。
旅を愛する人なら、聴けばわかるはずだ。
歌の終盤で、岸田もこう言っている。
僕には旅に出る理由なんて何ひとつない
旅に出たい、旅に出ようという衝動。
くるりの「ハイウェイ」には、
その衝動が、濃縮された原液みたいに詰まっている。
名前のはなし ティラミス
日本でも根強い人気をほこる、
イタリアのチーズケーキ、ティラミス。
実はイタリア語で
「私を元気付けて!」という
意味を持っている。
北イタリアのトレヴィーゾという
町のレストランで、
妊娠中の女店主のために
考え出されたという。
卵黄、お砂糖、マスカルポーネチーズに、
エスプレッソ。
お腹の子を元気づけるには、
ちょっと大人な味わいだ。
663highland
名前のはなし 100万ドルの夜景
美しい夜景をたたえる時に使われる、
「100万ドルの夜景」という言葉がある。
ドルという単位なので、
外国で生まれた言い回しと思われがちだが、
実は日本、しかも神戸生まれ。
1953年。六甲山から見える夜景について
関西電力の副社長が
広報誌に書いたコラムのタイトルに
由来しているという。
さらに驚くべきは、その本当の意味。
「100万ドルもの価値がある夜景」
という意味で使われがちだが、
六甲山から見える神戸の電灯496万個にかかる
1ヶ月の電気代が、
当時のレートでおよそ100万ドルに
なったからだという。
実際に「100万ドルかかっている夜景」だった、
神戸の「100万ドルの夜景」。
時代が進み、1ドル=360円の固定相場制も終わり、
電灯の数も何倍にも増え、
今や「1000万ドルの夜景」なのではとも
ささやかれている。
Copyright ©2009 Vision All Rights Reserved.