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渋谷三紀 12年11月24日放送



つづける人 小泉今日子

1985年に発売されたシングル曲
「なんてったってアイドル」。

その曲で、
アイドル自らアイドルと名乗り
注目を集めたのが、
ご存知、小泉今日子。

ことしで、デビュー30周年。
彼女は、こんなことを言っている。

人を好きになることを
経験するために、
アイドルはある。

最強のアイドルは、
最強のアイドル論を
生んでしまった。

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渋谷三紀 12年11月24日放送



つづける人 浅利妙峰

一大ブームとなった
万能調味料、塩こうじ。

その立役者が、浅利妙峰さん。
大分にある老舗こうじ屋の女将。

1000年以上の歴史をもち、
日本の食文化には欠かせない、こうじ。

しかし、みそや甘酒をつくる家庭が少なくなり、
いまや原料のこうじを売る店の多くが、
廃業に追い込まれている。

厳しい時代に、
こうじ屋を継いだ浅利さん。

専門書を読みあさる日々の中、
江戸時代の書物に「塩こうじ」を見つける。

アレンジを加え、売り出したところ大反響。
その後、塩こうじをつかった
オリジナルのレシピを1000以上も考え、
ニューヨークで講習会も行った。

守るだけでは、守れない。
浅利さんは、攻めつづけることで、
その看板を守りつづけている。

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渋谷三紀 12年9月29日放送



乗りこえたひと/奈良美智

あのどこか不機嫌で、
すねているような、にらんでいるような
つり目の少女を描いてきた、
画家、奈良美智。

最新の彼の個展では、
いつもと違う表情の少女たちに出会える。

きっかけは昨年の震災。
多くのアーティストがそうであったように、
奈良さんもまた、大きな壁にぶつかる。

表現に、何ができるのか。

答えの出ない、もやもやを抱えた奈良さん。
母校におもむき、後輩たちとものづくりの時間を過ごす。
無心に手を動かす中で見つけた、ひとつの答え。

表現することで、まず、自分自身が立ちあがらなくては。

そうして描かれた少女は、
いつもよりすこし、優しい目をしていた。

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渋谷三紀 12年9月29日放送



乗りこえたひと/菅井きん

日本のドラマで、映画で、
おばあさん役と言えば、このひと。
女優、菅井きんさん。

若い頃、「女優になりたい」と父に相談した、きんさん。
「それは美人がなるもんだ」
としかられた。

しかし、根っから負けず嫌いのきんさん。
負けるものかと女優への一歩を踏み出す。
生涯の当たり役となる、
おばあさん役を初めて演じたときは、
まだ30代だった、というから驚く。

それから半世紀にわたって、
おばあさん役を演じつづけた、きんさん。
82歳で映画初主演。
最年長初主演女優として、ギネスブックに認められた。

とびきりの美人でなくても、女優になれた。
とびきりの美人でないからこそ、いい女優になれた。

自分の欠点を愛せたら、
それは、あなたの個性になる。

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渋谷三紀 12年6月23日放送



旅のはなし/ルイ・ヴィトン

“カバンを見れば、人となりがわかる。”
1921年のルイ・ ヴィトンの広告コピーは、
持ち主とカバンとの関係をよく言い表している。

1854年、パリに世界初の旅行カバン専門店を
オープンさせたルイ・ヴィトン。
当時主流だったドーム型のトランクとは全く違う、
平らな形のトランクを発明する。
軽いキャンバス生地でつくられたそのトランクは、
積み上げるにも、持ち運ぶにもいいと大評判。
ナポレオン三世皇妃の注文をきっかけに、
各国の王族が競うようにオーダーし、
ルイ・ヴィトンの名はヨーロッパ中に知れわたることとなる。

それから150年以上たった今日も、
旅好きに愛され続けるルイ・ヴィトンのトランク。
旅の荷物だけではなく、旅の思い出や物語もいっしょに運び続けている。



旅のはなし/ペーパームーン
詐欺師のモーゼと九歳の少女アディが旅をする
映画「ペーパームーン」。

自信家なのにどこか抜けているモーゼと
大人顔負けに頭がよく生意気なアディ。
ふいにはじまった相棒関係は、時にぶつかりながらも、
旅を通じてほんとうの親子のような愛情に変わっていく。

ところで、ペーパームーンとは、
紙製の、作り物の月、という意味。
映画の主題歌には、こんな歌詞が歌われる。

君が僕を信じてくれるなら、
それは作り物なんかじゃない。

信じていれば、作り物の月だって、
親子だって、本物になれるかもしれない。
そう願う気持ちは、
ふたりと102分の旅をした観客も同じだろう。



旅のはなし/外国のことわざ

世界でいちばん高い山は?
そう聞かれれば、誰もが「エベレスト」と簡単に答えるだろう。
セルビアにはこんなことわざがある。

いちばん高い山は敷居。

出不精な人間の性質を言い表している。
旅に出たら楽しいことはわかっているけれど、
ついつい億劫になってしまうひとは、セルビアにも多いらしい。

では、世界でいちばん重い荷物は?
という質問には、デンマークのことわざで答えよう。

旅人にとって、いちばん重い荷物は軽い財布。

こちらもまた、ごもっともという他ない。

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渋谷三紀 12年3月25日放送



忘れられないこと/アンディ・ウォーホール

ポップアートの第一人者、アンディ・ウォーホール。
派手な色彩で同じ図版を大量に生産する技法で
スターのイメージや商品、ドル記号など、
アメリカ社会のシンボルを作品化した彼の作品は
難解なアートとは一線を画す新しい世界をつくりあげた。

彼はあるインタビューでこんな質問を受けた。

インテリジェンスとはなんでしょうか。

彼は迷わずこう答えた。

しょっちゅう意見を変えられることだね。

忘却という能力を身につければ、
ひとは過去に縛られずにすむ。
その身軽さで、彼はアートの常識を軽々と飛び越えた。


kiki
忘れられないこと/北原白秋

薔薇ノ木ニ

薔薇ノ花咲ク

ナニゴトノ不思議ナケレド

北原白秋の詩は
思い出させてくれる。

誰もが子供の頃に住んでいた、
不思議に満ちた世界を。

大人になって忘れてしまうのは
しかたないとしても、
忘れたことさえ忘れてしまうのは
さびしすぎる。

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渋谷三紀 12年1月28日放送


A. Davey
つくる男/映画/三谷幸喜

三谷幸喜監督の撮影現場でのこと。

大工役に
たくさんの老人俳優をキャスティングしたところ、
どうも思うような絵が撮れない。

撮影前は元気なのに、
カメラの前に立つとパワーダウンして
話し方までゆっくりになってしまう。

思い悩むうち、三谷は気づく。
彼らは老人を演じているのだ。

ご老人役にはご老人俳優という作り手の意図。
そこに、演じるという演じ手のプロ意識が加わることで、
いかにもすぎる不自然な老人ができあがってしまうのだから、
なるほど、映画づくりはむずかしい。
三谷監督は俳優たちにこう声をかけた。

普通な感じで演じて下さい。
心配はいりません。
皆さん、普通のままでも十分お爺さんですから。


acaben
つくる男/ファッション/三宅一生

アップルの前CEOスティーブ・ジョブスのトレードマークとなった
黒いタートルネックは、三宅一生のデザイン。
すでに生産中止になった商品にもかかわらず
全く同じ色合い、肌合い、袖を捲り上げたときの感触のものを、
100枚以上つくらせて積んでおくほどの気に入りようだったという。
考えてみれば、

きれいで終わる服じゃなく
着たいと思う服を作ろう。
という三宅一生のデザイン哲学は、

どう見えるかでなく
どう機能するか。
というスティーブ・ジョブスの哲学とみごとに重なる。

シンプルな哲学でつくりあげた
シンプルなプロダクツは
人の身体にも心にもよく馴染むようだ。


hakkaku
つくる男/笑い/萩本欽一

天然ボケ。
いまでは普通に使われているその言葉を
初めてつかったのは、欽ちゃんこと萩本欽一。

当時明石家さんまの運転手をしていたジミー大西に、
「天然にボケてる人だ」と言ったことが始まりだとか。

悪意がなく、みんなを笑わせてくれるボケ役は、
周囲を和ませ、誰からも愛される。

ボケ役について欽ちゃんはこんなことも言っている。

自分の欠点を突かれてニコニコしていられる人は
いいボケができるよ。

それができたら、お笑いの世界じゃなくても、最強かもしれません。


hello_hiroki
つくる男/歌詞/松本隆

書いた曲は2000曲以上。
51曲のオリコン1位は日本一。
アイドルからロック、クラッシックまで
40年以上ヒットメーカーとして走りつづける作詞家松本隆。
現在も依頼がひっきりなしの松本は、
作詞についてこんなことを言っている。

「愛してる」と連呼されても信用できないでしょう。
どうしたら「愛してる」とか「好き」って言葉を使わずに
その気持ちを伝えられるか。
それがわかれば歌になります。

ともすれば、
イメージの広がりよりもわかりやすさがもてはやされる
現在の音楽シーン。
その中にあってなお
聴き手の想像力を信頼できるかどうかが
消費されない作詞家の条件かもしれない。


steevil
つくる男/エンターテイメント/ウォルト・ディズニー

決して忘れてはならない。
すべての始まりが一匹のネズミだったことを。

黒くて丸い耳に、大きな白い靴。
世界中で愛されているミッキーマウスの生みの親
ウォルト・ディズニーの言葉。

貧しかったウォルトは、
ガレージに古いカメラを据えてやっとの思いでつくった
アニメ『うさぎのオスワルド』の権利を配給会社に奪われてしまう。
うなだれて帰る汽車の中ふと浮かんだのが、ネズミのキャラクターだった。

「蒸気船ウィリー」でのデビュー後は、25年で100本以上
ミッキーシリーズの映画が制作され
ドナルド、プルート、グーフィーなど
多くの人気キャラクターがミッキーとの共演から巣立っていった。

ディズニーの成功は映画だけにとどまらなかった。
カルフォルニアを皮切りに世界中にディズニーランドを開園。
現実に夢の世界をつくりあげた。

夢が現実を変え、それがまた、世界に夢を与えつづける。
そのきっかけは複雑な理論でも難解な思想でもなく
たった一匹のネズミだった。


David_Reverchon
つくる男/詩/ジャン・コクトー

フランスの芸術家、ジャン・コクトー。
小説や演劇、舞踏、評論、デッサンと、その活躍は多岐にわたるが
すべての活動の根底には「詩」があり、
彼自身、「詩人」と呼ばれることを好んだ。

あるインタビューで
「あなたは死んだら、地獄と天国のどちらにいくと思いますか?」
と聞かれたコクトーは、こんな風に答えた。

どちらでも。そのどちらにも会いたい友人がいるのでね。

詩人、ジャン・コクトー。
「人生」という作品の根底にもやはり「詩」があった。


Edwin Leung
つくる/建築/アントニオ・ガウディ

サグラダファミリアにグエル公園、カサミラと、
スペインのバルセロナを歩けば目に飛び込んでくる独創的な建物の数々。
それらを手掛けたのが建築家アントニオ・ガウディ。

「鳥の翼は飛ぶためにあります」といった教師に、
「鶏の翼は走るためにありますよね」と反論した。
というエピソードからわかるように、
少年時代から鋭い観察眼で周囲をあっと言わせていたガウディは
こんなことを言っている。

人間がつくりだすものは、
すでに自然という偉大な書物に書かれている。

つくることは、見つけること。
創造の種は世界中にあふれていると
ガウディは教えてくれる。

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渋谷三紀 11年12月17日放送



幸せを運ぶ男/サンタクロース

ニューヨークの新聞社に一通の手紙が届く。
差出人は8歳の少女バージニア。

サンタクロースっているんでしょうか。
手紙に書かれた子供らしいまっすぐな問いかけに、
ある記者が新聞を通じて返事を返した。

サンタクロースを見た人がいないことは、
サンタクロースがいないことの証拠にはなりません。

愛や、思いやり、そしてサンタクロース。
目に見えないものを信じることができたら、
人生は楽しく美しいものになる。
ひとりの子どもに向けて書かれたその手紙は、
サンタクロースを信じられなくなった
すべての大人たちへの手紙でもあったのです。



幸せを運ぶ男/佐々木則夫監督

ドイツワールド杯を制し日本中を沸かせた、
なでしこジャパン。
チームを率いた佐々木則夫監督は、
大変な愛妻家として知られている。

いまから20年ほど前、
病気で倒れた妻の看病に専念するため
サッカーを辞めようとした監督をひきとめたのは、
妻だった。

私のための人生じゃなくて、
あなたの人生なんだから、
大好きなサッカーを辞めないで。

夫としても、監督としても、
ぐいぐい引っ張っていくタイプではないだろう。
自分を捨ててでも、献身的に相手を支えるその姿が
女性たちの心を掴んできたことは、想像にかたくない。

ワールド杯の優勝はもちろん、
そばにいる女性たちとその人生を輝かせたことも、
佐々木監督の偉業なのだと思う。



幸せを運ぶ男 中原淳一

可憐な少女のイラストで知られる画家、中原淳一。

女性を見つめ描きつづけた中原先生は、
若い娘たちにこんなアドバイスをおくっている。

 誰が見ていなくても
 美しい寝まきを着て寝てください。
 それは昼間のあなたを明るく美しくしますから。

ほんとうの美しさは、しぐさや表情といった
普段の何気ない所作にこそ現れる。
美しいひとになりたいなら、
生き方が美しい人にならなければね。
中原先生からのやさしくもきびしいお言葉です。

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渋谷三紀 11年10月15日放送



のびたとジャイアン

のびたの天敵、ジャイアン。
彼の傍若無人ぶりをあらわす
有名なセリフがある。

 俺のものは俺のもの、お前のものも俺のもの。

しかしこのセリフ。
生まれた背景を聞くと、聞こえ方が一変する。

入学式の直前、
のびたがなくしたランドセルを
ジャイアンは一緒になって探してくれた。

俺のものは俺のもの、お前のものも俺のもの。

だから俺も探しに行くんだ。

乱暴者、だけど、情に厚い。
そんなガキ大将がいまはなつかしい。



タモリさんと鶴瓶さん

タモリさんは怒らない、というのは、芸人仲間では有名な話。
たとえば鶴瓶さんはこんな話をしていた。

タモリさんの別荘で植木がすべて切られる、という事件が起こる。

鶴瓶さんに促され、
別荘の管理人に電話で確かめるタモリさん。

もしもし、玄関の木、切っちゃったの?・・・わかった。ガチャン。

どうやらこういうことらしい。
生い茂る枝葉を剪定するという意味で、
「木を切っといて」とタモリさんは言ったのだけれど、
言葉どおりに受け取った管理人さんと植木屋さんは
木を根本からバッサリ伐ってしまったのだ。

何事もなかったような顔のタモリさんに半ば呆れながらも、
鶴瓶さんは突っ込んだ。

それじゃ、植木屋じゃなくて木こりやがな。



パパカラスと子カラス

かこさとしさんが描いた絵本
「カラスのパンやさん」。

パン屋に生まれたカラスの子たちはいつも
焦げたパンや、半焼きのパン、
商品にできないパンを食べている。


友達に
「いつもかわったパンがおやつだね」
とからかわれたって
自信満々でこう言い返す。

そうさ、これは せかいじゅうで
おとうさんしか
やけない、
めずらしい おやつパンなんだぞ。

どんなに小さくたって、
子どもはパパの、最強の味方。



ミッフィーとキティ

昨年のこと。
ミッフィーの生みの親である
ディック・ブルーナの会社が
キティの生みの親である
サンリオを訴えるという事件が起こった。

キティの友達として描かれた
うさぎのキャラクター、キャシーが
ミッフィーに似すぎているというのが理由だった。

どちらもシンプルな線で描かれたうさぎのキャラクター。
確かに似ている気もするし、
どう描いても似てしまうような気もする。

そして事件は思いもよらぬ結末を迎える。
きっかけは3月11日、東日本大震災。
両社は訴訟を取り下げ、
訴訟に使われるはずだった費用をすべて被災地におくった。

救いたい人がいる。
けんかしてる場合じゃない。
ミッフィーもキティも、そう思ったんだろう。

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渋谷三紀 11年9月18日放送



ある脚本家の美学/向田邦子

脚本家、向田邦子の家では、
遠足の弁当には海苔巻き、と決まっていた。

朝になり、母が海苔巻きを切り分け始めると、
邦子は途端に落ち着きをなくす。
海苔巻きの切れ端が、大好物だったのだ。

かまぼこも、伊達巻も、羊羹も、
邦子はとにかく、切れ端が好き。

切れ端好きの理由を、
彼女はこんな言葉で語っている。

なんだか貧乏たらしくて
しんみりして、うしろめたくていい。

不ぞろいで、不恰好で、いとおしい。
切れ端も、にんげんも、
邦子の目には、そう映っていたのかもしれない。



あるキャラクターの美学/キティちゃん

右耳に赤いリボンの白いネコ。
日本を代表する人気キャラクター、
キティちゃん。

電車で、会社で、学校で、
毎日どこかしらで、
私たちはキティちゃんに出会う。

さらに旅先の土産物屋には、
マリモキティになまはげキティにシーサーキティと、
想像をこえたさまざまな全国ご当地キティ。

世界的に有名な宝石ブランドからは、
100万円以上もする高級クリスタルキティ。

お菓子メーカーの広告では、人間になったキティ。

活躍はとどまることを知らない。

しかし、どんな風に姿を変えても
キティはキティとわかるのが、強いキャラクターの証。

ブレない自分があれば、
どんな変化にも「ハロー」と言えるのかなあ、
キティちゃん。

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