ファッションことば①
イヴ・サンローラン
蒸し暑い街の風景を涼しげに彩るシースルー・ファッションを
はじめて世に送り出したのは、イヴ・サンローラン。
1968年に発表した、モデルのからだが透けて見える黒いドレスは、
保守的なパリのファッション業界から激しい非難をあびた。
しかし彼は、
ヌード以上に女性らしい美しさを引き出すシースルーの魅力を
誰より早く見抜いていた。
ファッションとは生き方である。
と語ったサンローランは、
自分の意思でファッションを、そして生き方を選びとる自由を
女性たちに与えようとした。
それはつまり、女性が女性らしく、自分らしく生きる時代の幕開けだった。
ファッションことば②
パリス・ヒルトン
アメリカの億万長者として名高い
ヒルトン一族の令嬢パリスは
お騒がせセレブとして知られている。
このパリスの発言が
イギリスの由緒正しい引用句辞典に掲載されたのは
去年のことだった。
どこへ行くにもかわいらしく着飾りなさい。
人生は短すぎてすべてを着られないんだから。
パリスの言葉は
オスカー・ワイルドやホーキング博士の言葉と並んで
堂々と胸を張って見える。
100年後、パリスのお騒がせ事件の数々を知らないまま
これを読む人は何を感じるだろう。
それが知りたい。
ファッションことば③
ジバンシー
永遠の妖精、オードリー・ヘップバーン。
そのエレガントな美しさのいくらかは、
衣装を担当したジバンシーがつくりだした、
といっていいだろう。
ふたりの出会いは
ジバンシー26歳、オードリー24歳のとき。
約束の場所に現れたオードリーを見て、
ジバンシーは思った。
ショートヘアで化粧っけのない、
少年のようにやせっぽっちの女の子。
ジバンシーは、オードリーでなく
当時彼女より有名だった
キャサリン・ヘップバーンが来ると誤解していたのだ。
お互いの存在なしでは、
世界的女優と世界的デザイナーになれなかったふたりの歴史が
誤解と落胆からはじまったなんて、おもしろい。
ファッションことば④
川久保玲
1982年、コムデギャルソン、
初めてのパリコレクション。
デザイナー川久保玲は、
喪服のような黒で
女性のからだのラインを覆い隠すスタイルを提案。
賛否両論の嵐を巻き起こし、
その事件は「東からの衝撃」と呼ばれた。
川久保はいう。
新しいものは、半分の人がノーと言うし、
そうでなくては新しくない。
強烈に求められるか、拒絶されるか。
決して無視できない、まったく新しい価値をつくることが
自分の仕事だと考えている。
それ以降、ファッションの世界で、
川久保は革命を起こしつづけている。
もっと正しく言えば、
川久保の存在自体が、革命でありつづけている。
ファッションことば⑤
アナ・ウィンター
世界のあらゆるファッションショーで、
最前列を約束されている女性がいる。
金髪のボブカットにサングラスがトレードマークの
米国版「VOGUE」編集長、アナ・ウィンター。
映画「プラダを着た悪魔」のモデルとしてあまりに有名。
彼女のもうひとつの顔は
ファッションブランドに新しい才能を紹介するコーディネーター。
ルイ・ヴィトンに、マーク・ジェイコブスを。
クリスチャン・ディオールに、ジョン・ガリアーノを。
アナ・ウィンターはモードの流れを追うだけでなく
自らモードの未來をつくりだしている。
そして、アナ・ウィンターはこんな意見を言う。
ファッションとは、先を見ること。
ファッションことば⑥
ワダ・エミ
映画『乱』の衣装デザインで
日本人女性初のアカデミー賞を受賞した、ワダ・エミは、
自分にとって、衣装はことばです。
と語る。
京都で育った子ども時代、何気なく見ていた
古い絵画、彫刻、建築、神社の鳥居の形が
自分のデザインの基本にあるという、ワダ。
衣装という世界共通語にのせて、
73歳になったいまも、
日本の文化の美しさ、奥深さを世界に伝えつづけている。
ファッションことば⑦
キャリー from 「SEX AND THE CITY」
キャリー、サマンサ、ミランダ、シャーロット。
NYで生きる4人のキャリアウーマンの
友情を描いたSEX AND THE CITYは、
世界中の女性の心をつかみ、
2度も映画化された大ヒットドラマ。
中でも主人公キャリーのハイセンスな
ファッションは常にアツイ注目を集め、
彼女が身に着けたものから、
次々とトレンドが生まれていった。
オシャレは足元から、とばかりに、
クローゼットに入りきらないほど
お気に入りの靴を並べて、彼女はいう。
シングルウーマンの道は平坦ではないから、
歩くのが楽しくなるような靴が必要なの。
なるほど。
ファッションと同じように、
女心にも国境はないようです。