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石橋涼子 16年6月26日放送

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童謡のはなし 林柳波の憧れのうみ

海に行くと、海の歌をうたいたくなる。

日本には、静かな海も、激しい海もあるけれど
どの海でくちずさんでも似合うのが、
童謡の「うみ」ではないだろうか。

 うみは ひろいな おおきいな
 つきはのぼるし ひはしずむ

この童謡をつくったのは、
作詞家の林柳波と作曲家の井上武士。
実はこの二人、海のない群馬県の出身なのだ。

だからだろうか。
海の持つシンプルでおおらかな魅力が
すーっと染み込んでくる気がしませんか。

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石橋涼子 16年6月26日放送

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TAKUMA KIMURA
童謡のはなし 岡野敏明とかえるの合唱

 かえるのうたが きこえてくるよ
 クワ クワ クワ クワ
 ケケケケケケケケ
 クワ クワ クワ

こどもたちの声が重なる輪唱でおなじみ
童謡「かえるの合唱」。
この曲を広めたのは、音楽家の岡野敏明だ。

当時、音楽講師として勤めていた学校に
スイスの教育者ヴェルナー・ツィンメルマン博士が滞在し、
こどもたちにスイスやドイツの音楽を教えていた。
その際に、輪唱を耳にしたのがきっかけだったという。

声の重なりの美しさとおもしろさに心を奪われた岡本は、
作曲が本業だったものの、
試行錯誤して日本のこどもたちに歌いやすい歌詞を考えた。
こうして「かえるの合唱」は日本各地で愛される童謡となった。

メロディはドイツ民謡と言われているが、
不思議なことに、原曲の具体的な存在は謎のままだ。
バッハやチャイコフスキーの楽曲に
似たようなメロディがあるとも言われている。

もちろん、こどもたちはそんなことおかまいなしに、
今日もどこかで歌のおいかけっこを楽しんでいる。

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石橋涼子 16年5月29日放送

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zimbia
ペットのはなし 鯉の花子

鶴は千年、亀は万年と言われているが、
家庭で飼育しやすいミドリガメは
平均寿命が20年前後だと言われている。

そんな亀よりも長生きするペットが、鯉だ。
野生の鯉の平均寿命が20年以上と言われており、
飼育されるとさらに長生きできるという。
1983年のギネスブックに認定された
鯉の「花子」は推定226歳、江戸時代生まれだった。

雑食で、濁った水でも生きていけるタフさが
長生きの理由だと言われている。
鯉の滝登りというが、
急流を登り切って龍になるというのもうなずける。

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石橋涼子 16年5月29日放送

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ペットのはなし 歌川国芳の猫

浮世絵画家、歌川国芳は猫好きでも有名だった。
懐に猫を入れながら画を描く国芳のアトリエでは、
猫たちが弟子を押しのけ我が物顔でのさばっていたという。

そんな国芳の描く猫は、仕草が魅力的なうえ、
化け猫の着物が鈴や小判、めざしやタコなど
猫好みの柄になっていたりして、
画家のこだわりと愛情に満ちている。

若いころに苦労した国芳は、派閥に縛られることを嫌い、
自分の名前を襲名させることにも興味がなかった。
生前、弟子たちにはこう言いきかせていたという。

 万一、死後に国芳の名を継ぐものがあったら
 化けて出て食い殺すからそう思え

きさくで親分肌の彼が化けるとしたら、
きっとユーモアにあふれた化け猫だろう。

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石橋涼子 16年3月27日放送

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桜のはなし 弘前公園の桜守

今日は、桜の日。

桜と聞いて多くの人が思い浮かべるのは、ソメイヨシノだろう。
人の手による品種改良で生まれたソメイヨシノは、
他の野生種に比べると病弱で枯れやすく、
平均寿命は60年くらいと言われている。

しかし、青森の弘前公園に暮らすソメイヨシノは
ほとんどが平均寿命をはるかに超える
樹齢100年以上の古木だという。

他で暮らすソメイヨシノと何が違うのかというと、
弘前公園には、桜専門の守り人、
桜守(さくらもり)と呼ばれる存在がついているのだ。

弱った枝はばっさり切って、若い枝をどんどん伸ばす。
桜の手入れとしては常識破りの手法は、
青森のりんご栽培で実地に基づいて培われたものだ。

300本以上あるソメイヨシノの健やかさと美しさを守る
ベテランの桜守は、桜は老木こそ美しいと考える。
そして、バッサリ。

 100年なんて、まだまだ若造

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石橋涼子 16年3月27日放送

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TANAKA Juuyoh
桜のはなし 梶井基次郎とフランスの花言葉

今日は、桜の日。
日本人が桜を愛するのは、
満開に咲きほこる姿の華やかさと、
散り際のはかなさゆえと言われる。

「桜の樹の下には死体が埋まっている」という
衝撃的な書き出しで有名な梶井基次郎の短編のように、
日本では桜の美しさに密やかで妖しい魅力を抱いている。

うってかわってフランスでは、桜の花言葉は
「Ne m’oubliez pas」
私を忘れないで、という意味だ。
散り際の良さをポジティブに、ロマンチックに捉えている。

さて、今年の桜の樹の下、あなたの気分はどっちだろうか。

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石橋涼子 16年2月21日放送

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お酒のはなし ゲーテとブレンターノ家

文豪であるとともに、酒豪であったゲーテ。

彼と親交が深かったブレンターノ男爵家の別荘は
ブドウ畑の中にあり、敷地には醸造所があり、
当然のように芸術家たちの集会所になっていた。

1814年9月、ゲーテはこの別荘に滞在し
詩作にふけっていた。
そのとき歌われた作品の一節に、こうある。

 青春はワインがなくても酔えるもの
 老年はよいワインで若さをとりもどす

この時、ゲーテは65歳。
若さをとりもどしてくれるよいワインとは、
もちろんブレンターノ家の白ワインのことだ。

いつしかブレンターノ家の白ワインは
ゲーテ・ワインと呼ばれて人気を集めるようになり、
今でもドイツの小さな村でつくり続けられている。

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石橋涼子 16年1月24日放送

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Peter Guthrie
北欧のはなし ハンス・J・ウェグナー

北欧インテリアのお店に行けば
必ず置かれている、
ハンス・J・ウェグナー デザインの椅子。

デンマークに生まれた彼は、
家具職人の経歴を生かし
木材を使った名作チェアを数多く生み出した。

生涯にわたり500脚以上の椅子をデザインした彼が
自宅の椅子でくつろいでいる写真が残っている。
どっかりと椅子に身を任せ、
大きく開いた足をアームに乗せた横座りの姿は
見ようによっては、行儀が悪いと見えるけれど、
ウェグナーは、
これが本来のイージーチェアの座り方だよ
と言ったのだという。

動くのが人間の本能だ。
という事実を常に尊重したウェグナーだからこそ、
自由にくつろげて、且つ、美しい椅子がつくれたのかもしれない。

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石橋涼子 16年1月24日放送

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北欧のはなし ニルス・トーソンと女性たち

北欧デザインを代表する陶磁器ブランド、
ロイヤル・コペンハーゲン。
多くの人が思い浮かべるのは、
白をベースにブルーの模様ではないだろうか。

そんなロイヤル・コペンハーゲンに
1960年代に人気を博した
「テネラ」という名前のデザインシリーズがある。

テネラの特長は、カラフルで大胆な絵柄。
ファンタジーに出てきそうな色彩豊かな鳥や、
細かな描きこみで螺鈿細工のような草花。
従来のブランドイメージとは異なり
多彩な絵柄を楽しむデザインシリーズを生み出したのは、
アートディレクターのニルス・トーソンだ。

彼は14歳で入社し、職人見習いとして働きながら、
同時に王立芸術学院でデザインを学んだ苦労人だ。
そんな経歴を持つニルス・トーソンだからか、
新ブランド「テネラ」のデザイナーとして抜擢したのは
学校を卒業したばかりの若い女性6人だった。

彼女たちにのびのびとした表現の場を与え、
自由な感性を発揮させた結果、
今でもコレクターを魅了してやまない
まったく新しいデザインシリーズが誕生した。

テネラという名前には、
繊細でやさしく未完成な若々しさという意味がある。

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石橋涼子 15年12月27日放送

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掃除のはなし 泉鏡花のそうじへのこだわり

幻想的な作風と美しい文体で知られる作家の泉鏡花は
極度のキレイ好きでも有名だ。

生ものは一切口にせず、お菓子も火で炙ってから食べた。
大好きなお酒は、燗を通り越して
ぐつぐつ煮立ててからいただいたという。

そんな鏡花だから、掃除へのこだわり方も徹底している。
常に家の中がきれいに掃き清められているのは当然として、
階段は高さによってホコリの量や汚れ方が違うと考え、
上、中、下段それぞれに専用のぞうきんをつくった。
もちろん、台所のふきんも戸棚用から食器用まで、
様々な用途に合わせて分けられている。
さらには、二階のホコリが落ちてくると言って
一階の天井板の目地に紙を貼ったという。

ここまで徹底されたら周りの人間はさぞ困っただろうと思うが、
意外なことに、夫婦の仲は終生睦まじかったし、
鏡花と親しい挿絵画家も「先生の個性」と言う程度で
さらりと受け止めていた。

生涯、一貫した作風の作家らしい妥協の無さと思われたか、
はたまた、デビュー時に畠芋之助と名乗るような
独特な茶目っ気のおかげだろうか。

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