matsukawa1971
夫婦のはなし 小津安二郎が描いた夫婦
小津安二郎の映画「お茶漬けの味」は
裕福だけれど、かみ合わない夫婦の物語だ。
真面目で努力家で無口な夫と
派手好きでお嬢様育ちの妻。
味噌汁かけごはんが好きな夫と
それを下品だと言って怒る妻。
育った環境も価値観もまるで違うふたりは、
話し合うことも歩み寄ることもせず
互いに距離を置く。
そんな夫婦の関係が変わるのが、
深夜にお茶漬けを食べる場面だ。
家事が苦手な妻と夫でたどたどしく準備をし、
ふたりで食卓につく。
夫が美味い。というと、
妻も美味しいわ。とつぶやく。
ひとりごとのような会話から、
わだかまりが溶け、ふたりの本音がこぼれ始める。
食卓を囲む風景が仲直りの象徴となるのは、
恋人ではなく、夫婦の物語ならではだ。
最後に夫がぽそりと言う。
これだよ、夫婦はお茶漬けの味なのさ