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石橋涼子 19年3月31日放送



畑のはなし 三粒に種

アメリカの実業家であり、政治家でもある
ジェームズ・フィニー・バクスターは、
故郷ポートランドの産業と教育を開拓した人物でもある。
彼の残した言葉がある。

 何度学んでも悟らない人は、
 何度耕しても種をまかない人のようだ。

そう、良い畑にも、蒔かぬ種は生えぬもの。
農業には「三粒に種」という言葉がある。

 一粒は空を飛ぶ鳥のため。
 一粒は土の中の虫のため。
 最後の一粒が、人間のため。

鳥や虫と共存してこそ、おいしい実りを頂けるという考えだ。
春。何かを始めるなら、可能性の種を三粒くらいは蒔きたいものだ。

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石橋涼子 19年3月31日放送



畑のはなし 津田仙の野菜畑

江戸末期、佐倉藩藩士の家に生まれた津田仙(せん)は、
早くから洋学を学び、福沢諭吉らとともに
アメリカ留学も果たした人物だ。

維新後はその英語力を見込まれ、
外国人向けの築地ホテル館の理事に就任した。
そこで、外国人が求める新鮮な西洋野菜が
日本では手に入らないことに気づいた。

ないならば、つくればいい。
アスパラガス、ブロッコリー、パセリ、いちご…。
畑に海外から取り寄せたタネをまき、
英語の農業書を片手に土をいじりながら栽培法を研究した。

さらには、畑で学んだ知識を広く伝えるため、
日本初となる私立の農学校も設立した。

先見の明を持ち、開放的な考え方を持つ津田仙。
若干8歳の娘を日本人初の女子留学生として
アメリカに送り出したことでも有名だ。
娘の名前は、津田梅子である。

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石橋涼子 19年2月24日放送


t-mizo
雪のはなし 雪見鍋

冬の定番の鍋料理。
雪見鍋は、すりおろした大根おろしを大量に入れた
真っ白な見た目も気もちを浮き立たせる。

雪鍋、あわ雪鍋、みぞれ鍋。
呼び方もレシピも様々だが、寒い季節の象徴である雪を
あたたかい食卓で味わう幸福感は、変わらない。

冬の大根は、厳しい寒さに耐えて
その体内に甘味をぎゅっと閉じ込めている。
一本まるごとすりおろして鍋に入れれば
消化にも、美肌にも、いいことづくめ。

せっかくならば、雪づくし。
魚編に雪と書く、冬の魚、タラをメインにした
雪見鍋で、雪見酒。なんて、いかがだろうか。

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石橋涼子 19年2月24日放送


Solstrike
雪のはなし ゆきやこんこ

誰もが歌ったことのある冬の童謡「ゆき」。

ゆきやこんこ、あられやこんこ
ふってはふっては ずんずんつもる
やまものはらも 綿帽子かぶり
枯れ木のこらず 花が咲く

作詞・作曲ともに不詳だが、
100年以上前から小学校の教科書に載っている。

歌詞にある「雪やこんこ」は
「雪よ来い」の意味なのか、
こんこんと降る雪を表すのか不明だけれど、

枯れ木に花を咲かせる綿帽子は
樹木に積もった雪の様子をあらわす。
牡丹雪、花びら雪、綿雪。
ふわふわと降る大粒の雪を植物に例える日本語は多い。

童謡の「ゆき」に凝った言葉はなく、
「ド」から「ラ」で完結したメロディもシンプルだ。
だからこそ、冬になるとつい口ずさんでしまう
不思議な魅力があるのかもしれない。

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石橋涼子 19年1月27日放送



お茶のはなし 源実朝の二日酔いとお茶

鎌倉幕府第3代将軍、源実朝。
北条家の庇護のもと若干12歳で征夷大将軍に任ぜられた。
と言うと華々しいが、実際は、
北条家による執権政治の始まりであった。

政治への関与は許されない一方で、
周囲には暗殺やクーデターの気配ばかり。
若いころから好きだった文学趣味と、
お酒に救いを求めたのも無理からぬことかもしれない。

『吾妻鏡』には、
連日の深酒による二日酔いに苦しむ
実朝のエピソードが記されている。
臨済宗の僧・栄西が二日酔いの将軍を見かねて、
お茶を献じたのだという。
さらに、栄西自らお茶の効能を説いた『喫茶養生記』を
将軍に献上したことで、
武家社会にも喫茶文化が広まった。
当時すでに、お茶に含まれる
ビタミンCやカフェインなどの効能は
知識階級に知られていたのだ。

鎌倉幕府成立から北条政権への過渡期に翻弄された将軍は
お茶の効能だけでは救われなかった。
歌詠みとしても知られる源実朝だが、
28歳の若さで身内に暗殺され
今でもその才能を惜しまれている。

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石橋涼子 19年1月27日放送



お茶のはなし 参勤交代とお茶菓子の発展

ホッと一息つける、お茶の時間。
温かいお茶の隣に欠かせないのが、お茶菓子。

日本各地には、銘菓と呼ばれる
地元ならではのお茶菓子があるものだ。
この発展に、江戸時代の参勤交代が
関係しているのをご存知だろうか。

一年おきに、各地の大名が
江戸と領地を行き来する参勤交代。
将軍への献上品に始まり、
江戸での贈答品や茶会用にと、
土地にちなんだお茶菓子づくりが奨励された。

名物に旨いものあり。
たまには地元の銘菓とホッと一息、
お茶の時間をどうぞ。

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石橋涼子 18年12月23日放送

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愛のことば 日本と俳句とクリスマス

日本独自の文化である俳句の世界で、
初めて季語として認められたカタカナ言葉が、
「クリスマス」だ。

取り入れたのは、正岡子規だと言われている。

結核を患い病弱だった一方で
好奇心は人一倍旺盛、新しいものも大好きだった子規。
当時、日本に定着しつつあったクリスマスを
楽しむべきイベントとして、
いち早く受け入れた感性は、さすがと言うしかない。

8人の こどもむつまし クリスマス

贈りものの 数を尽くして クリスマス

晩年は床に伏して静養する日々だった子規だが、
彼が詠んだ句には、
うるさいくらい賑やかな家族団らんの情景が目に浮かぶ。
楽しそうなことは、楽しむ。それでいいじゃないか。
子規のおおらかさもひと役買ったのか、
クリスマスは日本の家庭に、俳句に、すんなり受け入れられた。

あなたもクリスマスで一句、愛のことばを紡いでみませんか。

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石橋涼子 18年12月23日放送

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愛のことば クリスマスカードに愛を込めて

もうすぐクリスマス。
海外では、グリーティングカードを送りあう季節でもある。
日本でいう年賀状を兼ねることも多いが、
いつもは照れくさくて言葉にできない
愛情や感謝を込めたメッセージを伝える役割が大きい。

恋人に、家族に、大切なあの人に。
すこし照れくさいくらいの、愛のことばを綴って
贈ってみてはどうだろうか。

とはいえ、愛情を表現しようと思うと、
なぜか悩んだり困ってしまうのが人情というもの。
そんなときはカントリーミュージックで知られる
ドリー・パートンの言葉を思い出そう。

愛とは、あなたをこれでもかというほど悩ませる、
天からの贈りもの。

きっと、あなたが悩んで言葉にしなかったたくさんの気もちも、
カードには沁みこんでいるはず。
それでも筆が進まない場合は、古代ローマの哲学者であり
手紙を書くのが大好きだったキケロの言葉を思い出そう。

手紙では人は赤面しない。

あなたの愛が届きますように。メリークリスマス。

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石橋涼子 18年11月25日放送

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Photo by Nick Harris1
靴のはなし 靴にまつわるジンクス

幸運を呼ぶアイテムは、世界中の国ごとで様々にある。
ヨーロッパでは、靴が幸運の象徴になることが多い。

玄関にベビーシューズを飾ると
幸運が訪れるという言い伝えがあったり。

マザーグースに由来すると言われているジンクスで、
花嫁の左の靴に6ペンスコインを忍ばせると、
その花嫁はお金に困ることなく結婚生活を送れる
というものもある。

日本にも地方によって様々だが、
新しい靴は3回靴底を合わせて叩くと幸運がやってくる、
などのおまじないがあるという。

幸運も大事だが、靴は身だしなみの一部、という
大人のたしなみも広く知られているところ。
とはいえ休み明けの朝など、慌ただしさのなかで
足先まで気が回らない日もある。

そんなときは、フランスに古くからあるジンクスを思い出そう。

 素敵な靴は、あなたを素敵な場所へと導いてくれる。

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石橋涼子 18年11月25日放送

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靴のはなし 

 It isn’t the mountain ahead that wears you out;
 it’s the grain of sand in your shoe.

 人の気力を奪うのは、行く先に横たわる山々ではなく、
 靴の中の砂粒である。

これは、イギリス生まれの詩人、
ロバート・W・サーヴィスの言葉。

意気揚々と踏み出した最初の一歩に違和感があると、
あとはもう気になってしようがないのが、人情というものだ。

しかし、そういった小さなトゲのような悩みは
意外と他人にはわかってもらえないもの。

英語のことわざに、こんな言葉がある。

 Only the wearer knows where the shoe pinches.

 靴のどの場所が痛むかは、履いているものしかわからない。

苦労は他人にはわからない。
靴の中の小石を取り除き、再び歩き出すことは、
自分にしかできないことなのだ。

だからだろうか。
良い表情で歩いている人は、良い見栄えの靴を履いている。
しょんぼり歩く人は、しょんぼりした靴を履いている。

オシャレな人が多いイタリアのことわざでは、
靴は、その人の人格を表す。
という。

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