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礒部建多 14年1月12日放送


Sarah.Marshall
大人の贅沢

レストランで生牡蠣の皿といっしょに
ダブルのシングル・モルトを注文し、
殻の中の牡蠣にとくとくと垂らし、そのまま口に運ぶ。

「もし僕らのことばがウィスキーであったなら」という本で、
村上春樹は、シングル・モルトの聖地アイラ島で
ラフロイグや、ボウモアなどの蒸溜所を訪れ、
出来たばかりのウィスキーを、
じっくりと堪能し、こう語る。

「うまい酒は、旅をしない」

出来るだけその産地で飲まないと、
そのお酒を成立せしめている何かが、失われていくということだ。

美味い酒を求めて、世界をめぐる。
そんな大人の贅沢な旅を、いつか味わってみたい。

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礒部建多 13年12月15日放送



ラブソングと電話

 “ただ「愛してる」って言う為に電話したんだ。

 ただ「こんなに君を想ってる」って言う為だけに電話したんだ。”

「I just call to say I love you(邦題:心の愛)」は
スティーヴィー・ワンダーの代表曲。
彼はある2人を想いながら、
この曲を書き上げた。

その2人とは、
後の南アフリカ大統領ネルソン・マンデラと、その妻。
当時アパルトヘイト政策に反対し、
反逆罪として投獄されていたマンデラが
妻に電話をかけている様子を思い描いたという。

信念を貫き、逆境に耐える2人をつなぐ、一本の電話。
受話器越しに交わされる愛の言葉は
今も世界中の恋人たちを魅了し続けている。

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礒部建多 13年12月15日放送



五輪ポスターと電話

堂々と佇む日の丸。
それを支える様に、
金の輝きを放つ五輪マーク。
亀倉雄策がデザインした
1964年東京五輪のポスターだ。

日本のデザインの発展に寄与した功績を認められ、
五輪ポスターのコンペに招かれた亀倉だが
〆切当日、委員会から催促の電話を受けるまで
提出期限を忘れていた。
その電話から、わずか2時間で彼は
あのダイナミックなデザインを仕上げたのだ。

シンプルで力強い、そのポスターは
20点以上の案から満場一致で選ばれた。

もしあの時、
電話に出られなかったら、
この歴史的デザインは、
幻になっていた。

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礒部建多 13年11月24日放送


mrhayata
OLを描く 中園ミホ

「やまとなでしこ」や「スタアの恋」。
脚本家、中園ミホの作品は次々ヒットを飛ばす。

中園のこだわりは、
時代と共に移り変わる、
働く女性像の描き方だ。
彼女たちをリアルに表現するためなら
努力は厭わない。

「取材の中園ミホ」と呼ばれるほど、
自分の足を使って、徹底的に取材を行う。
「ハケンの品格」を書く際には
何人もの女性派遣社員に会いに行った。

取材を受けてくれた人の
生の声を届けなければ。

中園はセリフを書くことで、
働く女性たちの声にならない声を
代弁している。

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礒部建多 13年11月24日放送



OLの曲

OLの教祖と呼ばれ
働く女性たちから多くの支持を受けている、
シンガーソングライター、古内東子。

本人がメディアに出ることは滅多にないが
その歌はテレビドラマのテーマとしてよく使われた。
古内の楽曲は、デビュー当時から変わる事なく、
恋愛に向かう女心をリアルに歌い続ける。

彼女の切なくも温かい音楽に、
OLたちは自分の体験を重ねながら、
聴いているのだ。
古内は言う。

 含みの美学、みたいなものが表れていると思います。
 自己投影できたり、少し余白があった方が
 気持ちを込めやすい気がしています。

古内のつくる余白は
恋や仕事に疲れたOLたちの心を癒し
優しく背中を押している。

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礒部建多 13年10月13日放送


Ben Grogan
北島康介と引越し

オリンピック2種目連覇。
北京での北島康介の泳ぎは、
見る者すべてを魅了した。
しかしその直後、彼は10カ月も水泳を離れてしまう。

復帰のために北島が選んだ場所は、
住み慣れた日本ではなく
アメリカのカリフォルニア州であった。
プレッシャーのない場所で、純粋に水泳を楽しみたい、
そういう気持ちがあったという。

「自分らしさを失うより、
自分らしさを出して終わった方が、
記録が出なかったとしても満足できる。」

パンパシフィック水泳で北島は、
誰よりも速い泳ぎを見せ
世界最高記録をたたき出した。
そしてその日、誰よりも楽しそうに泳いだのも
また、北島だった。

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礒部建多 13年9月15日放送


IanJMatchett
老いても歌う

平均年齢80歳。
ご長寿ロック合唱隊、ヤング@ハート。
その中心で指揮を取るのは
一番の若手である59歳のボブ・シルマン。

歩行器や、呼吸器をつけながらも
クラッシュ、ボブ・ディランなど
ロックを力強く歌い上げる老人たち。
その練習に、ボブは一切妥協を許さない。

難しいパートでも、
常に高いレベルを求めて
徹底的に練習をさせる。
それでも出来ない場合は
担当のコーラスから外すこともある。

 老人だからと言って、特別扱いなんかしない。

そこには老人に対する、
ボブなりの尊敬の念が込められている。
だからメンバーは、体中の痛みを忘れるほど
歌うことに本気になれる。

ボブのその姿勢が、
メンバーに新たな生きがいを与えているのだ。

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礒部建多 13年9月15日放送



老いても握る

ミシュラン6年連続3つ星を獲得。
世界中の美食家に愛されてやまない
すきやばし二郎店主、小野二郎。

87歳にして、未だ現役の寿司職人。
現役を維持するために
毎日40分をかけて歩き、店に向かう。
外出時には、指を保護するために
手袋を欠かさない。

生涯の全てを、寿司に捧げてきた小野。
今まで仕事の不平不満なんてものは、
一切口にしたことがない。

 修行は一生終わらない。
 技を磨くことに人生を賭けなきゃ。

二郎は、今日も銀座で寿司を握る。
その腕は日を追うごとに、磨かれ続けていると言う。

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礒部建多 13年8月17日放送


LaLaLaTaro
礒部建多

「ぼくの愛は二度と燃えないはずさ」 

忌野清志郎自身の大失恋を歌った
RCサクセションの曲、「お墓」。
曲調はタイトルと裏腹に、軽快なレゲエサウンド。
  
「お墓」という際どいタイトルが理由で
当初、発表が見送られていた。
しかし清志郎は、別のタイトルに変えることはしなかった。
 
あまりに冷たかったお別れが ぼくのすべてを
変えてしまった 変えてしまった 変えてしまった。

伝えたい悲しみを、感じた通りに表現する。
飾らずに、ストレートに。
それが忌野清志郎のスタイルであり
希代のロックンロールスターと愛された理由。

「忌野清志郎」と大きく彫られた高尾霊園のお墓には、
今も多くのファンが訪れ、花を手向けていく。

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礒部建多 13年8月17日放送



イサム・ノグチ

みかげ石を削って創られた美しいアーチ。
丹下健三が設計した、広島の原爆慰霊碑。
その原案は、イサム・ノグチによるものだった。

戦争が終わり、
丹下に原爆慰霊碑のデザインを依頼されたイサム。
アメリカ人の母を持ち、アメリカ国籍のイサムは、
罪の意識に苛まれながら全身全霊でデザインする。

しかし、その案は
ノグチが「原爆を落とした国の人間」
という理由で却下される。

芸術は人種の違いや敵味方を超えて
人の心を安らかにする。

ノグチのその想いを受けて、
丹下が原案を残しながら設計したのが
今、私たちが見る原爆慰霊碑なのだ。

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