‘茂木彩海’ タグのついている投稿

茂木彩海 13年6月30日放送


Thomas Gehrke
プレゼントのはなし 受け継がれるプレゼント

知らぬ間に両親から受け継いでいた。
その事に気づくのは
意図せず自分に父の癖が出てきたり、
電話の声を母と間違えられたりした瞬間だろう。

作家の吉本ばななは、父で詩人の吉本隆明から
「上手に自分を律する方法」を受け継がせてもらったのだと言う。

作家の生活は自分次第。いつ気を抜くか、追い込むか、
新人のころは勝手がわからず、そのままつぶれてしまう作家も多い。

しかしばななは迷わなかった。

父が夕方になるとフラっと外出していたように、
自然と夕方くらいに落ち着かなくなり、買い物がてら散歩に出かける。
これでバランスを取っているのだ。

そんな素敵なクセを娘にくれた隆明が昨年亡くなった。
その寸前、ばななは言った。

「私はお父さんの娘でいて、
 いやなことが一個も、ほんとうに一個もなかった。
 それはほんとうに幸せなことだったと思います」

親から受け継いだプレゼントを自分のものとして生きていく。
それを、幸せな生き方と呼ぶのかもしれない。

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茂木彩海 13年5月19日放送


the BCth
緑のはなし 小林崇がつくる緑

一日に何十回と木に登り、
ロープに吊られた状態でノコギリを使う。
大工は大工でも、生きている木の中に、家をつくる。

ツリーハウスの第一人者。小林崇。

緑にやさしく包まれて、風を頬に感じながら
寝転がったら、どんなに気持ちがいいだろう。

その心地よさを彼はこんな風に語っている。

 生きている木のうえに
 肩車みたいに乗せてもらっている感じ
 乗せてもらって、
 そこから景色を見ているというのがいい。

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茂木彩海 13年5月19日放送


Roger McLassus
緑のはなし 関野吉晴が見た緑

探検家、医師、美術大学教授。
3つの顔を持つ男、関野吉晴。

アフリカで生まれた700万年前の人類が
どのように世界へ広がっていったのか、
その道すじをたどる旅「グレート・ジャーニー」を
約10年もの歳月をかけて達成した。

その旅の途中、関野はある光景と出会う。

アラスカを先住民と犬ぞりで移動していた時、
真っ白な雪景色の中に、一点の緑が見えた。

近づいていくとどうやら1本の木であるらしい。

その木の目の前まで来たとき、先住民たちがみな
おもむろに犬ぞりから降り、その木に向かって拝みはじめた。

薪にすれば体を暖めてくれること。
食べるためのトナカイたちを育てくれること。
過酷な雪から身を守るための家が建つこと、
生きるためのすべての源がこの緑であることを感謝していたのだった。

関野は言う。

 今、地球上に存在するすべての生命が奇跡なんです。
 そして、それを感じることができるのは人間だけなんです。

緑を全身で感じる。
それだって立派な奇跡のような出来ごと。

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茂木彩海 13年4月21日放送


MShades
出会いのはなし 出会いの極意

出会いの瞬間は、
できれば相手の記憶に残るようなものにしたい。

 虹も15分と出ていると、だれも眺めない。

とは、ゲーテの言葉。

不意に出会う虹のように、一瞬のインパクトで。
毎回そんな出会いにできればいいのだけれど。

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茂木彩海 13年4月21日放送



出会いのはなし ロバート・キャパをつくった2人

人生を変える出会い、というものがある。

20世紀を代表する戦場カメラマン、ロバート・キャパ。
この名前が、実は偽名だったということはあまり知られていない。
ロバート・キャパ。本名を、アンドレ・フリードマンという。

ロバート・キャパという架空の名前をアンドレに付け、
「アメリカの有名なカメラマン」として売り込むことを提案したのが、
パリで出会った女性、ゲルダ・タロー。

売れないカメラマンだったアンドレは
彼女との出会いによってキャパとして生まれ変わり、
やがて誰もが知る戦場カメラマンとなっていった。

アンドレはのちに、後輩のカメラマンにこんな助言をしている。

 きみの写真が傑作にならないのは、
 あと一歩、被写体に近づいていないからだ。

可能性があると感じたら、一歩近づいてその出会いに懸ける。
写真の話だけに留まらないこの哲学こそ、キャパとして生きた彼の強さなのかもしれない。

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茂木彩海 13年3月10日放送


florence craye
出発のはなし7 スナフキン

スウェーデン語で、
「嗅ぎたばこのあいつ」の意味を持つスナフキン。

トーベ・ヤンソンが描くその自由気ままな生き方に
つい憧れてしまう大人も多いかもしれない。

そんな彼から、この春旅立つあなたへメッセージ。

 長い旅行に必要なのは
 大きなカバンじゃなく、口ずさめる一つの歌さ。

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茂木彩海 13年3月10日放送


Alé
出発のはなし8 パウロ・コエーリョ

ブラジル、リオ・デ・ジャネイロを代表する作家
パウロ・コエーリョ。

大学の法学部を突然やめたかと思えば、世界中を旅し、
帰国後はレコードの作詞をはじめるも、とつぜん仕事を放棄。
再び旅に出たのち、現在は小説家として活動している。

そんな彼の言葉。

 一本の道を決めるということは、

 ほかの道をあきらめるということだ。
 
まだ人生はまるごと残っている。

目的地をひとつにする必要なんかない。
どこに到着するか楽しみにしながら踏み出す、
そういう出発があってもいい。

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茂木彩海 13年2月3日放送


noriqnub
ユーモアの話 黒柳徹子のユーモア

よこしまで腹黒の奴は、善良な縞馬を見習うがよい。
なぜなら縞馬は腹白で、たてしま、なのだから。

自身の著書、『トットの動物劇場』の中で
ユーモアたっぷりに動物たちを観察する黒柳徹子。
その目は鋭くて斬新。

「もう秋だよ!」と喋る九官鳥に感動したり
キリンの首に掛かる血圧の心配をしたりと、忙しい。

そんな彼女の言葉。

 変わりたければ、

 「私、これじゃなきゃダメなの」と決め込んだりしないことが大切ね。
 
いくつになっても変われる可能性があると思うと、
 
ワクワクするじゃない?

ユーモアのある人。それは
世の中を自由な角度で見ることができる人、
とも言える。

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茂木彩海 13年2月3日放送



ユーモアの話 長新太のユーモア

たくさんのユーモアを描いた絵本作家、長新太。
彼の死後に出版された絵本「プアー」は、
息を吸うとしっぽと耳と鼻が膨らんで、「スー」と息を吐くと元に戻る犬の物語。

 プアー
 スー
 もとに もどったよ ワン

深呼吸するみたいに、たまには力の抜けたユーモアを。

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茂木彩海  13年1月20日放送



夢のはなし 黒澤明の理想

こんな夢を見た。
“私”は、美術館に飾られたゴッホの絵に魅せられている。
ふと気付くとそこは絵の中。
歩いていくうち、やがてゴッホと出会う。
「鴉のいる麦畑」の中を歩く彼の前を沢山の鴉が飛び立つ、その瞬間。
“私”はまた、何事も無かったかのように
展示会場のゴッホの絵の前に立っているのだった。

黒澤明が自分の見た夢をモチーフにつくった映画、『夢』。
第五話の「鴉(からす)」では、黒澤が尊敬するゴッホが現れる
幻想的な夢が描かれている。

現実には出会えない、誰かと出会う。
それも夢の醍醐味。
もし大好きな人と夢の中で出会えたら、あなたならどんな言葉を交わすだろう。

ちなみに黒澤は、夢の中のゴッホにこんな台詞を言わせている。

「絵になる風景を探すな
 よく見るとどんな自然でも美しい
 僕はその中で自分を意識しなくなる
 すると自然は夢のように絵になっていく」

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