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茂木彩海 16年2月21日放送

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yoppy
お酒のはなし 田村隆一

アガサ・クリスティーやエラリー・クイーンなど
海外ミステリーの翻訳家としても名高い詩人、田村隆一。

生粋のお酒好きとしても有名で、朝食に赤ワインとステーキを嗜んで、
午後からはお気に入りのウイスキー、オールドパー
の水割りを飲んでいたと言われている。

そんな彼が残したお酒にまつわる哲学が、こちら。

 青年の酒、壮年の酒、老年の酒。
 その節がわりに、車窓の風景も変わってくる。
 酒を飲むことは旅をすることだ。

次はどんな景色を見に行こう。
そんな気持ちで今宵のお酒を決めるのも悪くない

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茂木彩海 16年2月21日放送

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お酒のはなし マダム・リリー

007シリーズの中で愛されているシャンパーニュがある。
銘柄は「ボランジェ」。ジェームスボンドが英国紳士でなければならないように、
このシャンパンも、英国王室御用達の認定を受けている。

この「ボランジェ」の味を守ったのが、
5代目当主の妻、エリザベス・リリー・ボランジェ。通称マダム・リリー。
夫の死後、第二次世界大戦下でドイツ軍に占領されたシャンパーニュ地方の農園を
ただ一人残った従業員と守り続けた。

マダム・リリーは言う。

 楽しい時や悲しい時、シャンパーニュをいただきます。
 時々は一人の時にも。仲間と一緒の時は必須です。
 お腹がすいていない時はちょっぴりたしなみ、空腹のときには飲むのです。

彼女にとって生活の一部となっているシャンパンは
愛する人との思い出そのものなのだろう。

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茂木彩海 16年1月24日放送

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designmilk 
北欧のはなし マリメッコのウニッコ柄

フィンランドで誕生した誰もが知るファブリックブランド、マリメッコ。
ブランドを象徴する柄に、ウニッコ柄がある。

この斬新な花柄を提案したのは、デザイナー、マイヤ・イソラ。

1964年、“花は生地になるよりもありのままのほうが美しいから”、
という理由で、今後花柄はプリントしないと公表していたマリメッコ。

マイヤはその方針への反発の意味を込めて
真っ赤で情熱的なこの花柄を描き、結果的には
見事コレクション入りを果たしてしまう。

彼女の哲学は、「徹底して失敗する自由」。

失敗を恐れず、自分が信じるものをつくる。

その意思が、温かみの中にも強さを感じるデザインに滲み出て、
今日も世界のどこかで誰かが、華やかなウニッコ柄に元気をもらう。

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茂木彩海 16年1月24日放送

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Noske, J.D. / Anefo
北欧のはなし スウェーデンの歌姫

インテリアでは有名な北欧だが、
国際的に活躍する歌手や女優を数多く生み出している
ことは、あまり知られていない。

1939年、15歳でデビューし、
昨年亡くなった歌手、アリス・バブスもそのうちの一人。

耳が良く、感受性が豊かで、どんな曲でも歌い上げてしまう。
即興が得意で、チューニングも必要なければ不得意なジャンルも無い、
まさに完璧な歌姫だった。
ステージに立てばとんでもないカリスマ性を見せる彼女だが、
普段の生活はいたって普通。

 スポットライトの当たる場所にいるからって
 他人より優れているわけじゃないわ。

彼女の口癖からは、謙虚でありながら
歌いたいものを自分らしく歌うことへの自信が感じられる。

その自信こそが、
いまなお北欧に暮らす人々を魅了し続ける歌声の理由なのだろう。

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茂木彩海 15年12月27日放送

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白石准
掃除のはなし なくてもいいものを考える

掃除とは、捨てること。と一般的には解釈されるが
なくても良いものを選ぶ作業、とも言えるのではないだろうか。

掃除機で有名なダイソンは、
羽根をなくす、という掃除を
ある家電にほどこした。

そこで生まれたのが、羽根のない扇風機。

何十年も続く常識を、一掃することで
また新しい必要なものを生み出していく。

かの、スティーブ・ジョブスもこんな言葉を遺している。

 必要なものを考えるのは重要じゃない。
 必要じゃないものをどれだけ考えられるかだ。

ものの選び方ひとつで、いつもの掃除がちょっぴり楽になるのだとしたら。
この冬、試さない手は無いかもしれない。

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茂木彩海 15年12月27日放送

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掃除のはなし 掃除に必要な音楽

年末ともなると、頭にチラつく大掃除の3文字。
なんとか少しでも気分が乗るように、
掃除をするときは、お気に入りの音楽を流しながら。
そんな人も多いのではないだろうか。

ところが、昔の写真などを整理しているときに、
これまた昔の思い出がつまった曲が流れてしまうと話は違う。

手は止まり、なんとなくぼんやりしながら過去に身を馳せて
気づいたら時間が過ぎている。

そんなとき参考にしたいのが、
暮しの手帖社出版 「暮らしのヒント集」のこんな言葉。

 明日は起きぬけに行進曲をかけてみましょう。
 支度がテキパキとはかどるみたいです。

掃除をするぞ、と決めた日は、
音楽をつかって掃除にぴったりの空気に身を投じる。

そこまでしないと動かない、ずぼらな自分をちょっぴり笑ってやりながら、
大掃除。ぼちぼちはじめてみましょうか。

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茂木彩海 15年11月8日放送

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jafsegal
夫婦のはなし 藤代冥砂が撮りたいもの

自身の妻を被写体にシャッターを切り続けるカメラマン、
藤代 冥砂(ふじしろ めいさ)。

カメラマンと被写体というちょっぴりかわった夫婦のはじまりは
撮影現場。

最初からピンときたわけではなかったけれど
2人の距離を一気に縮めたのが知人と一緒に出掛けたタイ旅行。
こそこそ夜遊びに抜けだそうとする藤代に、
「女の子?今日行くの?」
と声を掛けられて、振り返った瞬間のくったくのない笑顔と、
さげすむわけでもない不思議な佇まいにグっときてしまった。

藤代は言う。

彼女が年を取っていく姿を見てみたい。
そして、できたらそこに自分もいたいなと思った。
生まれて初めて、「未来」に対して
愛おしいという気持ちが生まれたんですよね。

これからも一人のファンとして、夫として
愛する妻の日常をカメラのフィルターを通して切り取っていく。

カメラマンと被写体の幸せな関係はきっと
未来へ歩むたび、より深まっていく。

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茂木彩海 15年10月18日放送

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jiroh
日本語のはなし 虫たちの声

秋になるとどこからともなく聞こえてくる虫の声。

10月にもなるとコオロギ、マツムシ、ツクワムシと
小さな合唱がいたるところで行われている。

西洋人は虫の声を機械音と同じように左脳でとらえるが
日本人は、右脳にある言語脳でとらえることができるように
できているという。

俳句の世界には、虫に関するこんな長い季語がある。

 「藻に住む虫の音に泣く」

実際には声を持たない虫の声も日本人は聴いているのだ。

他にも、「蚯蚓(ミミズ)鳴く」「蓑虫鳴く」などがあるが、
言うまでもなくこれらの虫は声を出すことはない。

秋の夜長に虫たちの声をひとりぽつんと聞いている。
虫たちの言葉は日本語となって脳に届き、
さらには木や草のかすかなざわめきまで
命あるものの声としてとらえようとする。
日本の秋、日本人の秋は繊細で美しい。

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茂木彩海 15年10月18日放送

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日本語のはなし 月を表す日本語

豊作の祈願と、収穫の感謝をするささやかな秋のお楽しみ、お月見。

お団子は毎晩夜を照らしてくれる月に感謝をするために、
すすきはお米の豊作を願って飾られる。

古来から月を愛でる習慣があった日本には
月の状態を言い表す名前が、数多く存在している。

新月から7日目の月は、弓に似ている、「上限の月」。
14日目は、満月に少しまだ足りない「小望月(こもちづき)」。
そして、18日目の夜に浮かぶ月の名前は、「月待ち月」。 

月が出るのをいまかいまかと待ち望む
そんな気持ちごと、月の名前にしてしまう。

日本語のやわらかさが、
今夜の月をもっと優しい光にする。

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茂木彩海 15年9月27日放送

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CaDs
お茶のはなし 「お茶の水」の由来

江戸時代のはじめ、江戸城の外堀を建設するために
山を切り崩したところ、高林寺という寺の境内から湧き水がでた。
その水を徳川将軍のお茶を沸かす水として献上したところ
大変お気に召したという。

その場所こそ、いまの「お茶の水」。

お茶のためには、水からこだわる。
日本人は昔からおいしいお茶を淹れるための苦労を厭わないようだ。

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