‘薄景子’ タグのついている投稿

薄景子 13年11月17日放送


Chickens in the Trees
アーティストの話 棟方志功

 愛してもアイシキレナイ

そう言いきるほど
板画を愛した世界的巨匠、棟方志功。
彼は一生の朝の数を

 三万六千五百朝

と表現した。
1年365日、100歳まで生きても
朝は3万6500回だけ。
だから、ひと朝だってムダにしない。
そんな棟方の板画家魂がこめられた言葉だ。

1日が生まれる朝は、
新しい何かが生まれる瞬間でもある。
うかうかしてはいられない。

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薄景子 13年11月17日放送



アーティストの話 淡谷のり子

20世紀を駆け抜けた
ブルース界のアーティスト、淡谷のり子。
戦時下で多くの慰問活動を行っていた淡谷の楽屋に、
ある時、若い兵士たちが来てこう言った。

自分たちは特攻隊員だから、
歌の途中で出ていくこともある、
その無礼を前もっておわびに来たのだと。

淡谷が一番を歌い終わると同時に、
その兵士たちはいっせいに立ち上がり、
舞台に向って敬礼をして出て行った。

もう帰ってこないかもしれない。
彼女は涙で、歌えなくなった。

 歌手は舞台で泣くものではありません。

淡谷のり子の信条が破られたのは、
生涯でこの一度だけ。

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薄景子 13年10月27日放送


Brief Gasp
おやつのはなし 向田邦子の水羊羹

砂糖壺にいっぱいの砂糖があったらなぁ
いつその日が来るんだろう

そうつぶやくのは、少女の頃の向田邦子。
食糧事情が最悪だった戦前に、
まわりの人を喜ばせたい一心で
さつまいもの茶巾絞りや、
アルミの大きな弁当箱で寒天菓子をつくった。

少女はやがて、お菓子を見極める天才になり、
南青山の水羊羹をこよなく愛したという。

 新茶の出るころから店に並び、
 うちわを仕舞う頃にはひっそりと姿を消す、
 その短い命がいい

向田邦子に書かれると、
おやつはみんな生き物になる。

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薄景子 13年10月27日放送


3liz4
おやつのはなし 安藤鶴夫の鯛焼き

しっぽまであんこが入った鯛焼き。
今ではすっかり主流となったが、
そのきっかけをつくったのが
演劇評論家の安藤鶴夫である。

昭和28年、各界の著名人が
名店の美味しいものを紹介する連載で、
安藤は自宅近くにある駄菓子屋の
ひとつ10円の鯛焼きをとりあげた。

なんでも上げ底の世の中にあって、
尻尾まで餡の入るたいやきに人間の誠実さを味わった。

安藤はうまいまずいの話ではなく、
しっぽのあんこで豊かな気持ちになってほしいと願う
鯛焼き屋の心意気に感動したのだ。

記事は大反響を呼び、店は一躍有名に。
世の中の鯛焼きたちのしっぽには
あんこがぎゅうっとつめられていった。

人間に感動する男、安藤鶴夫は、
「カンドウスルオ」と呼ばれたという。

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薄景子 13年8月18日放送


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山のはなし エドモンド・ヒラリー

ニュージーランドの5ドル紙幣の肖像でもある、
登山家、エドモンド・ヒラリー。

人類初のエベレスト登頂を成し遂げた英雄は
かつては虚弱児で、内向的な子どもだったという。

そんなヒラリーを変えたのが養蜂業の仕事だった。
蜂の巣箱を運ぶという作業の中で
足腰と心肺機能を鍛え、
登山家にふさわしい心身を作りあげたのだ。

ヒラリーは言う。

 克服するのは山ではない。私たち自身である。

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薄景子 13年8月18日放送



山のはなし 松岡修造

日本一ポジティブで熱い男、松岡修造。

その情熱の本質は
自分の弱さにある、と彼はいう。
だからこそ自身を鼓舞しようと
熱い言葉を叫び続けてきた。

彼の発するポジティブなメッセージは
情熱を失いかけた日本中の人々への
熱いエールとなっていく。

 いちばんになるって言っただろ。
 富士山のように日本一になるって言っただろ。
 今日からお前は富士山だ。

ここぞという時、彼の言葉を思い出せば、
笑っちゃうほど熱いパワーが
体中からこみあげる。

あなたも今日から、
富士山になってみませんか。

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薄 景子 13年7月14日放送



海のはなし アインシュタイン

さっきまで罵倒しあっていた相手と
今、お茶しながら笑いころげている。
人間ほど説明のつかない生き物はいない。

世紀の物理学者、アインシュタインは言う。

 人は海のようなものである。
 あるときは穏やかで友好的。
 あるときはしけて、悪意に満ちている。
 ここで知っておかなければならないのは、
 人間もほとんどが水で構成されているということです。

なるほど。科学の天才は、
人間を解き明かす天才でもある

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薄 景子 13年7月14日放送



海のはなし 三好達治

言葉にならない気持ちを
かかえきれなくなったとき、
人が海に行きたくなるのはなぜだろう。

ただただ寄せては返す波のリズムは、
なぐさめの言葉なんかよりずっと大らかに、
心のくさくさを洗い流してくれる。

昭和の詩人、三好達治は言う。

 海よ、僕らの使う文字では、お前の中に母がいる。
 そして、母よ、フランス人の言葉ではあなたの中に海がある。

地球上に最初に生物が生まれたのは海。
そうか、海は人のふるさとなんだ。

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薄 景子 13年7月14日放送


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海のはなし 寺山修司

つらいことに直面し、とめどなく流れる涙。
感動で心が揺さぶられ、うるうるあふれだす涙。

理由は何であれ、思いっきり泣いた後は、
すっきり生まれ変わった気持ちになれる。

泣くことには、心と体を浄化する
不思議な力があるらしい。

寺山修司は、詩の中でこう語る。

 なみだは
 にんげんのつくることのできる
 いちばん小さな
 海です

私たちは一生で
どれだけ大きな海がつくれるだろう。

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薄景子 13年6月30日放送


Weird Beard
プレゼントのはなし 最初のプレゼント

子どもが何気なく言った言葉に
思わず頬がゆるんでしまう。
そんな言葉を集めた新聞の投稿欄に
素敵なエピソードが寄せられた。

「あなたが最初にもらったプレゼントは?」
 というコマーシャルを見て、
「僕が最初にもらったプレゼントは、僕が生まれたこと!」

信じられないほど純粋な子どもの言葉は、
むかし子どもだったことを忘れかけた
大人たちへのプレゼント。

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