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薄景子 12年5月20日放送


Jaanus Kalju
植物のはなし 斉藤吉一

花に逆らわず、花に従わず、花のするように生きる。

庭師であり、作家である
斉藤吉一(よしかず)はそう語る。

植物も生きているのだから、思いどおりには育たない。
だからこそ、肩の力を抜いてガーデニングを楽しもう。
そんなメッセージをこめた著書、
「ものぐさガーデニングのススメ」は、
園芸書を超えた“人生の書”としてベストセラーになる。

しかし出版後、書いた本人が、
肩の力の抜き方がわからなくなってしまう。
自分自身を見失い、やがて廃業寸前に。
歳月をかけて立ち直った庭師は、
木について、こう語る。

今ある姿が、その木らしさ。
経験と傷こそが個性です。

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薄景子 12年4月22日放送


itou
師のはなし 岸本葉子の先生

エッセイスト、岸本葉子。
彼女の人生訓となる、
高校の先生の言葉がある。

「うちの子はやればできる、やらないだけ」
という親がいるが、それは違う。
重要なのは、やるかやらないかだ。

その言葉に導かれるように、
岸本は自分で400枚の原稿を出版社にもちこみ、
それがデビュー作となった。

編集者は言ったという。
「本を出してくれるなら書く」という人は大勢いる。
だが実際に書いてくる人はその何百分の一だ。

人生は、やるかやらないか。
いい教えは、一生、生徒を育てつづける。

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薄景子 12年3月18日放送


しょうちゃん
⑥動物と人 ぷースケと由美子さん

人間なら125歳超。
ギネス認定の長寿犬、ぷースケ。
名前の由来は、

見た目がぷーという感じだったから

ある日、飼い主の由美子さんが買い物から帰ると
5分後に、眠るように息をひきとった。

世界一の長寿の理由は、
愛すべきのんきな名前をくれた由美子さんと
1日でも長く一緒にいたかったから、じゃないかな。

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薄景子 12年2月12日放送



おやこの話 母がくれたもの

児童文学作家、松谷みよ子。
戦後の「働くお母さん」の先駆けとなり、
小さな子どもを保育園にあずけながら
数々の絵本や童話のロングセラーを生み出した。

そんな松谷を育てた母親は、
戦前・戦中という時代に、
こう言い切ったという。

うちのことは嫁に行けばできるようになるから今はせんでよろしい
だから本を読みなさい

母がくれた豊かな時間は、
彼女の絵本とともに、新しい世代へと受け継がれている。



おやこの話 やっちゃんの詩

おかあさん、ぼくが生まれてごめんなさい

この詩の作者は、やっちゃんこと山田康文くん。
重い脳性マヒだったやっちゃんは、
話すことも書くこともできなかったけれど。

養護学校の先生があげる言葉と
やっちゃんが表現したいことが一致したら、目をぎゅっと閉じ、
違っていれば舌をだすという方法で詩を完成させ、
その2ヵ月後、やっちゃんは15歳でこの世を去った。

やさしさこそが 大切で

悲しさこそが美しい

そんな 人の生き方を

教えてくれた おかあさん

自分を生み育ててくれた人に、あふれる想いを伝えたい。
時に、全身に汗をためながら言葉を選び、
生涯かけて、お母さんへの感謝を詩に託したやっちゃん。

生きることは、伝えること。
そう、やっちゃんに教えられる。

私はちゃんと、伝えられているだろうか。

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薄景子 12年1月8日放送



表現する男 レオ・レオーニ

芸術家、レオ・レオーニが生んだ初の絵本作品
「Little Blue and Little Yellow」

幼いブルーとイエローの玉が遊んでいるうちに、
グリーンになってしまうというシンプルなストーリーは、
彼が孫たちをあやそうとして
紙と絵具で遊んでいるうちに、偶然生まれたもの。

やがて世界中のロングセラーになった
絵本の元本にはこう記されている。

ピポとアンとその友達に捧げる

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薄景子 11年12月18日放送



男の美学 アルド・チッコリーニ

86歳のピアニスト、アルド・チッコリーニ。

多くのピアニストが
体を揺らしながら弾く大曲を、
チッコリーニは、背を少し曲げ、
楽器とひとつになったかのように静かな表情で弾く。

作曲家を自身の神として、宗教にも属さない。
彼の演奏には、美学がある。

自分の存在を消して、聴衆には
作曲家の表現に集中してもらいたい。

そのなめらかな音色には、
一点のくもりも、エゴもない。


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男の美学 大森一樹

映画監督、大森一樹。
映画の道を思いながら医大にすすんだのは、
漫画家であり医学博士でもあった
手塚治虫への憧れから。

のちに大森は、自らの体験をもとに
医学生を描いた映画「ヒポクラテスたち」を製作。
小児科の教授役を手塚に依頼した。

医者はかぶらないからと
手塚にベレー帽を脱いでもらったとき、
「僕からベレー帽をとったのは、大森くんだけだ」
と憧れの人は笑った。

大森は確認する。

手塚さんは、この年齢で何を描いていたのだろう。

「生命とはなにか」をテーマに据え
ヒューマニズムをモットーとして漫画を描きつづけた手塚治虫。
その手塚に近づきたいと願うことが
大森一樹の美学だったのだろう。

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薄景子 11年10月16日放送



食欲の秋 サン=テグジュペリ

星の王子様の作者であり、
パイロットでもあったサン=テグジュベリの言葉。

たくさんの星があっても、
夜明けに香り高い食事の碗を
用意してくれるのはたったひとつしかない。

さあ、食欲の秋。
料理を味わえる星に生まれた幸せを
ゆっくりかみしめたい。



コラムの秋 山本夏彦

読書の秋というと、小説が主役になりがちだが、
この季節にこそ読みたいコラムがある。

昭和から平成の日々を、ばさりと切り続けた随筆家、
山本夏彦。

馬鹿は百人集まると、百倍馬鹿になる。

痛快で、辛口で、思わずニヤリ。
本質をついた言葉は、いつ読んでも新しい。

その日まで私のすることといえば、
死ぬまでのひまつぶしである。

そう自ら語った山本のコラムには、
一寸の無駄もなく。
研ぎ澄まされた剣そのもの。

同じひまをつぶすなら。
自分のかわりに
世の中をずばずば切りさばいてくれる、
そんな言葉とともに、秋の夜長を楽しみたい。

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薄景子 11年9月4日放送



歌のはなし 槇原敬之

どんなときも どんなときも
僕が僕らしくあるために

自分の人生を、絶対人のせいにはしたくない。
そんなつよい思いで、槇原敬之が、
音楽で生きていくことを宣誓した歌。

後に190万枚のヒットとなった
彼の魂の叫びは、
迷ったとき、勇気がほしいとき、
今日も誰かの
自分への応援歌となっている。

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薄景子 11年9月4日放送



歌のはなし 谷川俊太郎

空をこえて ラララ 星のかなた

日本を代表するアニメ主題歌の作詞が
日本を代表する詩人によるものだということを
ご存じだろうか。

「鉄腕アトム」の歌、作詞、谷川俊太郎。

今年の夏、ブルーノートで行われた
彼の詩の朗読ライブ。

ピアノを演奏していた息子の賢作に
突然リクエストされ、
谷川俊太郎は観客の前で
鉄腕アトムの歌を朗々と歌った。

最初は拒絶していたけれど、
歌い出した瞬間、谷川は
アトムのように未来を向いた少年になった。

心やさしい ラララ 科学の子

ラララという歌詞にこめられた
未来へのメッセージ。
それは、大きな声で歌えば、
きっと誰もがわかるはず。

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薄 景子 11年8月7日放送



「夏」のはなし 糸井重里

 遊んでばかりいる「夏休みの子ども」が、
 人生の理想的な生き方のように思えます。
 その夏の終わりの悲しみの味わいも含めてね。

言葉の天才、糸井重里さんは、
たとえの天才だと思う。
ぼやぼやしていると、
人生も、夏休みのようにあっという間。
さあ、遊ばなきゃです。



「夏」のはなし 茨木のり子

茨木のり子さんの若い時代の作品に、
「くだものたち」という詩がある。

杏、葡萄、長十郎梨、蜜柑など、
季節のくだものを描いた
4行ずつのオムニバス。
中でもプラムの詩が好きだ。

 夏はプラムを沢山買う
 生きているのを確かめるため
 負けいくさの思い出のため 1個のプラムが
 ルビィより貴かった頃のかなしさのため

彼女は19歳の夏、敗戦を経験する。
その1個のプラムにこめた夏の記憶は、
たぶん本物のプラムより、
いつまでたっても、みずみずしい。

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