Tiberiu Ana
鍋の話 ヨーロッパの諺
ヨーロッパの諺にこんな言葉がある。
見つめる鍋はなかなか煮えない。
まだかまだかと蓋をあければ
煮えきらない肉や魚が顔を出す。
しかしその間、小鉢の一品でも仕込めば
気づいた頃には火が通り、
美味しいおまけもついてくる。
この言葉は、人生にも当てはまりそうだ。
待ち合わせに遅れた相手に苛立ち
何度も時計を見れば、1分が1時間に感じられ、
その間、本でも読みだせば、待ち時間はあっという間だ。
或いは、いいアイデアはないかないかと
焦るほど何も思い浮かばず、
あきらめて散歩でもはじめると、
ふらりと閃きが降りてくることもある。
待つことは、そのことだけに意識を向けること。
それは、時によけいな力みや執着を
生み出してしまうのかもしれない。
鍋はじっくりコトコト放っておくのがいちばん。
その間、別のことに集中しすぎて、煮えすぎには注意したい。